【29】 博之は後ろから奈美を包むように
奈美「ゴメン、なんかケーブルカー酔いしたみたい」
下を向いて、額を押さえた。
博之「大丈夫ですか?」
奈美「大丈夫じゃない。私を抱えてくれる?」
博之「はい」脇を抱えた。
隣から、
順子「その手を使うか。熱い、熱い、」
洋次「仲が良いことで」
話しているうちに、ケーブルカーは終点に着いた。4人はケーブルカーを降り、しばらく歩くとNソウルタワーのふもとに着いた。
順子「着いたわね」
洋次「着いた、着いた」
4人は、Nソウルタワーの展望台に行くエレベーターの切符を買った。奈美の財布から先ほどの源泉徴収票が顔を覗かせていた。4人はエレベーターに乗った。エレベーターは秒速4mの速さで昇っていく。
エレベーターがNソウルタワーのデジタル展望台に着いた。海抜479mの高さである。
順子「わーっ、すごい眺めね」
洋次「ソウルの町並みが丸見えだよ」
順子「ロッテワールドも見える?」
洋次「見えるんだろうけど、よくわからないな」
順子と洋次が仲良くしていた。一方で奈美と博之も、奈美が高倍率で景色が見えるデジタル望遠鏡を覗き込むと、博之は後ろから奈美を包むように立ち、デジタル望遠鏡を覗き込んだ。
奈美「ねぇ日本に戻ったら確定申告してもらってもいい」
博之「多少アドバイスは出来ますが、基本的には奈美さんに記入してもらいます」
奈美「さっぱりわからないけれど、記入できるかしら?」
博之「4万円をあきらめますか?」
奈美「とんでもない! 私にとって4万円は大きいわ」
博之「じゃぁ頑張りましょう!」
奈美「はい」
それが奈美と博之の出会いであり、二人は日本に帰ってきて会う立派な理由が出来たのだった。




