【10】 突然、奈美がキレる!
奈美が救急室から出てきた。
由夏「どうでしたか?」
奈美「検査の結果はすべて異常なしとのことでした」
由夏「良かった!」
大輔「良かった。ふーっ」
由夏「お子様は帰れそうですか?」
奈美「はい、会計が済んだら帰っていいそうです」
由夏「良かったわ」
大輔「それは、良かった」
奈美「そこで、お願いなのですが、」
由夏「はい、なんですか?」
大輔「なんでも言ってください」
奈美「実は、」
由夏「はい」
奈美「厚かましくて恐縮なのですが」
由夏「遠慮せずにおっしゃってください」
大輔「なんでも言ってください」
奈美「私と息子を自宅まで車で送っていただけますでしょうか?」
由夏「もちろんです。いいわよね、坂口さん」
大輔「当たり前です。私共のせいでここまで来ていただいているのですから」
由夏「と、言っておりますので」
3人は、会計の待合所へと移動した。
待っている間に、奈美は医師から言われた内容を、一言一句漏らさずそのまま由夏と大輔に伝えた。
由夏「少し、ほっととしましたね」
奈美「はい」
由夏「一週間もすれば、また元気な海斗君が見られるんですね」
奈美「だと良いのですが」
大輔「大丈夫ですよ。お医者さんがそう言っているのですから」
奈美「はい」
大輔「お母様には、本当にご心配をかけてすみませんでした」頭を下げた。
奈美「はい、電話を聞いたときは、私、心臓が止まるぐらい心配しました」
由夏「まぁ、そんなに?」
奈美「本当に気が動転して、今までにないほど動揺しました」
由夏「それだけ海斗君を愛しているのですね」
奈美「それもありますけれど、今朝見たニュースが影響して、」
大輔「あっ、私もそのニュースを見ました。柔道の、ですよね」
奈美「はい」
由夏「なんのニュース?」
大輔「私も海斗君が市役所で倒れたときは、気が気ではありませんでした。まさか! と思いましたよ」
奈美「やっぱり! そうですよね」
由夏「どんなニュースなんですか?」
大輔「あっ、すみません。係長は見てなかったですよね?」
由夏「ええ、見てないわ」
大輔「『中学校で、柔道の練習中に女子生徒が後頭部を強く打って死亡した』というニュースです」
由夏「えっ、そんなニュースがあったのですか?」
奈美「はい。それが頭に浮かんで、この病院に来るまで、生きた心地がしませんでした」
由夏「それじゃぁそうですよね」
大輔「本当にすみませんでした」
大輔がまた頭を下げた。
由夏「いえ、あなたが悪いわけではないし、いいんですよ。マスコット人形が海斗君を蹴飛ばしたのがいけないので、」
大輔「それが、その」
奈美「着ぐるみの中の人が、周りを見ていなかったんでしょう。それで思いっきり海斗を蹴飛ばしたんじゃないですか?」
由夏「そう、聞いているんですか?」
奈美「学校の方がそう言ってました」
由夏「いいえ、着ぐるみが悪いのではなくて、」
奈美「では、うちの子が?!」
突然、奈美がムキになった。




