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友達なのに、一緒にいると疲れる

相談者は、二十代後半の女性だった。


椅子に座るなり、ため息をつく。


「……友達を、切ったんです」


「喧嘩か?」


「いえ」


首を横に振る。


「喧嘩もしてないです」


「ただ……もう無理だなって思って」


少し間を置く。


「会うたびに愚痴で」

「電話も夜中に来て」

「でも、私の話は聞いてくれなくて」


指先をぎゅっと握る。


「一緒にいると、毎回疲れて」


「それで?」


「連絡、返さなくなりました」


沈黙。


「でも」


顔を上げる。


「悪いことした気がして」


「なんでだと思う?」


女性は考え込む。


「……友達、だから?」


俺は首を振る。


「違うな」


「え?」


「いい人でいたかっただけだ」


言葉が止まる。


「切った理由は分かってるだろ」


「……疲れたから」


「ああ」


机に指を置く。


「一緒にいると消耗する相手は」

「友達じゃなくて仕事だ」


女性が小さく笑う。


「確かに……」


「聞くけど」


少し身を乗り出す。


「向こうは、お前に気を使ってたか?」


沈黙。


やがて、首を横に振る。


「……たぶん、全然」


「なら対等じゃない」


「対等?」


「ああ」


「どっちかが我慢してる関係は」

「長く続かない」


女性は、ゆっくり息を吐く。


「でも……一方的に切った気がして」


「壊れる前に離れただけだ」


短く言う。


「それでいい」


しばらく黙っていた彼女は、小さくうなずいた。


「……少し、楽になりました」


立ち上がる頃には、来たときより肩の力が抜けていた。


ドアが閉まる。


静かな事務所で、相棒が言う。


「私は友達だったら、いちいち離れる離れないとか考えないな」


コーヒーを飲む。


「一緒にいて疲れる相手を、無理に友達にしとく必要はない」


相棒は少し考えてから言う。


「友達って、楽な人のことだよね」


「ああ」


窓の外を見る。


友達だから我慢するんじゃない。


一緒にいて楽だから、

友達でいられる。


だから――


もう、証拠はいらない。

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