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35 記憶を失うまで殴る

 日本語のメモ?


「ユーリカ宛てのメッセージだよな」


 普通は日本語を読めないはずだし、読める奴がいても暗黒詩集って書いてあるノートの中身がダンジョンにあるって言われたって、どうでもいいよな?


「他の人にはわたしが書いたなんてわからないだろうけど、でも中身が見つかったら絶対解読しようとするもの。深夜のハイテンション詩集を、アーティファクトありがたやー、素敵なことが書いてるはず!って解読されちゃうんだよお!わたしがそれを知っている以上放っておけるわけが無いのに、中身をわざわざ別の場所に置くなんて嫌がらせでしょう!?」


 ユーリカが地団駄踏んでいる。落ち着け、気持ちはちょっとはわかる。



「大迷宮って呼ばれる場所、大陸に何箇所かあるわよねぇ?」


 サリーナの問いにも、


「ここが一番近かっただけ、見つからなかったら全部周る!」


 即答した。鬼気迫るものがあるな。


 魔王領のあるこの大陸は結構広いはずだが、転移する方法があるならサクサクいけるのかね?困難だとしても行きそうな勢いだが。


「ここのやつがノートの中身でも、絶対見ないでね。見たら記憶を失うまで殴る」


 今度はマジ脅しだ。Sクラスの秘密を漏らすよりも重要な事らしい。


 サリーナがよしよし、心配しないでねとユーリカの頭を撫でている。俺よりサリーナの方が保護者っぽいな。


「わかったわかった、俺にはここには何も無いように見えるがどうするんだ?」


「隠微されてるだけだから、解除するよ。《隠してもムダムダ、出てきなさい。そこに居るのはお見通し!》」


 ユーリカが俺には分からない言葉を言った。すごく魔法っぽい!辺りにふわっと細かな粒子が広がり、途端、魔力溜まりに赤いリボンのかかった白い箱が現れた。


「何このプレゼント風な箱!」


 キーキーしながらユーリカが箱に手を伸ばした。


「大丈夫なのか?触って」


 いきなり爆発するとか。


「うん、罠がないか鑑定したから大丈夫だよ」


 事もなげにユーリカが答えた。


 鑑定!俺のスキル返して!いや、俺のじゃなかった。羨ましい、ギリギリ(ハンカチを噛む音)。無双とか最強とかできそうな響きがあるよな。

 いや、鑑定だけじゃダメか、俺にそれを使いこなせる素養があるとは思えない。なにせ一般人レベルとお墨付きだもの。これから修行したらいいんだろうか?



「開けるから向こう向いてて!」


 着替えるから後ろ向いてて!という女子よりも切羽詰まっているな、ユーリカさんよ。


 くるりと背を向ける俺とサリーナ。エミルは寝てるのか起きてるのか見えない。



 しゅる、ゴソゴソ、


「あ…………。」


 シンとした空間に小さく音だけが聞こえる。気になる!



「どうした?」


「うぬああああああ!もおおお!むっかつくぅ!」


 ダンダンダン!害虫を踏み殺す時の、村のオバちゃん達以上の力強さで足を踏みならしている。


「ど、どうした!」


「見てよコレーーー」


 泣きそうな声だが、見てもいいのか。俺たちは振り返った。



 ユーリカの右手には、ごちゃごちゃ文字の入った赤い革の首輪。左手には、グシャっと握られた紙がある。


「あ、れ?その首輪」


「アタシの首輪だわ!ご主人たちが作ってくれた、アタシの首輪!」


 俺が見覚えがある、と言う前にサリーナが飛びついた。

 喜んでいるのか、興奮して首輪を抱え上げてクネクネしているが、毛がゴワッゴワなので尻尾を振る度当たったら痛そうな音がしている。


「やっぱり、ちび太の首輪だよね」


「そうだな、記憶より新しい感じになってはいるが、間違いなさそうだ。あれがアーティファクトなのか?」


「ん」


 ユーリカが、左手に握りしめていた手紙を差し出してきた。


「エミルおんぶしてるし、読んでくれよ」


「はぁー、仕方ないなぁ」


 ユーリカは嫌そうに読み始めた。


「おめでとう、アーティファクトその1です。他の3つは見つかりましたか?皆さんが心残りにしていたものをいい感じにチョイスしてあります。設置したら勝手に魔物が湧いちゃいましたが、まあサプライズなんで少しドキドキがあるくらいでいいですよね?良い人生を!」


「…………。このサプライズを用意したやつの心当たりが、一人しかない」


「うん。わたしも」


「むにゃ、トイレのキュぽん…………」

 エミルはどんだけラバーカップが気になってるんだよ!


「つまり、思い出のあるモノなんかを、勝手にこっちに持ってきてアーティファクトにされちゃったという事か?」


「思い出とか可愛いもんじゃないんですけど!?むしろ、死後は焼却しといてねレベルだったんだけど!────あっ」


 ユーリカが急に、表情の抜けた顔になった。


「なんだ、どうした?大丈夫か」


「わたし…………あいつに、異世界転生するにあたって、日本のモノは処分するけど、特に残しておかないで欲しいものはありますか?って」


 ユーリカがブルブルと震え始めた。


「き、聞かれて、間違いなく残さないで処分して欲しいって意味で、暗黒詩集って言った、の」


 ユーリカが燃え尽きた灰になりそうだ。


「1、日本には残さず転生先に持ち込みたいものがありますかって意味で聞いた。 2、残さず消して欲しいって意味をわかりながら嫌がらせで持ってきた。 3、そもそも質問に意味はなく、気分で持ってきた」


 どれも慰めにはならないが、クソ上司セラフィのやりそうな事を挙げておいた。


「3だと思うけど、もし2だったら、世界の深淵の果て(ワールズエンド)まで追い詰めて、封じられし魔王の力(パンドラズチェイン)再起不能(ロストオブゴッド)にしてやるわー!」

 うん、暗黒詩集もそんな感じなんだろうな。

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