25 強行突破しちゃいませんか
体を包む光が消え、視界に映ったのは芸術的な乱雑さでモノが溢れている部屋だった。
「ここどこ?」
「魔王城の私の部屋……ちょっと散らかってるけど気にしないでね! ゆっくりしていってね!」
「ちょっとかね、これ?」
「ハルっち、そこ崩れそうだから気をつけてねェ!」
小柄なエミルは、獣道のように開いているスペースを難なく進んでいくが、俺やサリーナは本やら素材やらの雪崩が起きそうな中を苦労しながら出口へ向かった。
ドアを開けると、長い螺旋階段になっていた。
「ここって塔の上?」
俺は下を見下ろして、吸い込まれそうな感覚にヒュッとなった。
「そんな感じー、階段気をつけてね」
ひたすら階段を降りていくと、重厚な扉があった。
エミルが手をかざすと、扉は一瞬発光して開いた。ファンタジー味あるぅ!
「塔ってお姫様が閉じ込められているイメージだよな」
「姫! いいね、姫ー」
なぜか盛大に照れるエミル。
あと偏屈な魔導師も篭ってそうだよなとも思ったが、口には出さなかった。サリーナがなぜか俺に頷いて見せた。
広い通路をしばらく進んでいくと、更に大きな扉があった。エミルが獅子の形の金属製ノッカーを鳴らすと、
「お待ちください!」
男の声がして、ギィっと向こう側に扉が開いた。
扉の向こうには兵士のような格好の魔族と獣人がいた。っていうか衛兵だよね。
「大魔王様、どちらにご案内いたしましょうか?」
「ドン・シンテン迷宮の対策本部へ案内せよ」
エミルが少し低い声で話す。
「そちらの御二方は?」
「余の客人である。丁重に扱うように」
「畏まりました!」
エミルが魔王っぽいぞ、逆に違和感があるな。でも大魔王って呼ばれてたよな?
しかしここでエミルの威厳を貶めるようなツッコミは得策ではなさそうだ。
俺とサリーナは真顔で、無言のまま案内される事にした。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「これは大魔王様! わざわざこのような場所まで御足労頂き恐縮です。何か御座いましたか?」
対策本部と書いた紙が掲げられた会議室には、数名の魔族がいた。中でも一番若く見える青年が、エミルに声をかけた。
エミルがうむ、と頷くと、その青年を残し人払いがされた。
「そっちの2人は?」
さっきよりはずっとくだけた様子で青年が尋ねた。
「私の大事な家族だよ。えーっと、普通な感じのがハルで、デカイのがサリーナ。こっちは現在魔王をやってるザギィルだよー」
エミルが簡単に紹介してくれたが、普通な感じっていう形容詞はいかがなものか。
……エミルもザギィルだけの前では、俺たちと変わらない話し方なんだな。少し関係性が気になるところだが……。
「ああ、ババ様のご家族でしたか。お話は聞いています、この人をよろしくお願いしますね」
「こちらこそエミルがお世話になっているようで、よろしくお願いします。……えーっと、ババ様って?」
聞き返したら、なぜかエミルに睨まれた。また頰がぷくっと膨らんでいる。
「まあ、本人に後で聞いてくださいよ。それでどうしました?」
苦笑しながらザギィルが言う。こっちが魔王様なんだよな?魔王領で一番偉い人か。じゃあ大魔王様って更に偉いのかって話なんだけど、どうもご隠居的な感じに見えるぞ。
「ユーリカが大迷宮に行っちゃったんだよね。入り口規制ってされてる? 今どんな状況だろ」
「ユーリカさんが? 規制されててもあの人強行突破しちゃいませんか?」
「うぅ、そかも……」
「現在は冒険者含む精鋭部隊が、魔物の発生源の魔力溜まりを調査しに行っています。合流してくれれば多少安全でしょうが、ユーリカさんがそのクエストを受けたわけではないんですよね?」
「目的違うみたいだから、多分あの子単独行動しちゃうかな……」
エミルはむむむーっと唸っている。
「まだ原因の特定がされていませんし、魔物が減ったという報告もありませんので、危険度に変わりはないかと。追いかけるなら皆さん準備はしっかりして行ってくださいね」
「わかったー」
「わかったわぁ、魔王サマありがとうねェ! ハルっちも行くわよね?」
「俺邪魔にならない?」
「アタシが守るから大丈夫よん! ……と言いたいとこだけど、Sランク相手だとしっかり装備で自分の身を守るので精一杯になるかもぉ?エミル様だのみになるわねぇ」
サリーナよ、エミルには様付けなのな。
「まかせとけーい。守ってやんよ!」
大魔王様ドヤ顔やめろ。でもよろしくお願いします。




