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第一章 転生したら、試験に遅刻しそうだった件

これは、ある男の嘘の話だ。


嘘をついた理由は、単純ではない。恐怖からでも、打算からでも、悪意からでもない。強いて言うなら——少し、面倒くさかっただけだ。


もし「本当の力を見せればよかったのでは」と思うなら、それはもっともな意見だ。俺もそう思う。ただ、一度ついた嘘というのは、雪だるまに似ている。最初は小さい。気づいた時には、転がすのをやめられなくなっている。


この物語には、鋭い目を持つ少女が出てくる。面倒見のよい先生が出てくる。やけに人懐こい金髪の先輩も出てくる。彼らは全員、俺のことを最初から「おかしい」と思っていた。正しい直感だと思う。


俺は確かに、おかしい。


別の世界から来て、途方もない力を持ち、それを三だと言い張っている。どう考えてもおかしい。


ただ——おかしいなりに、この世界は悪くなかった。


空は青かった。飯は美味かった。隣の席の少女は、不器用で、真面目で、時々意地悪で、それでいて——思ったより、ずっと真剣に俺のことを見ていた。


それだけで、十分だったかもしれない。


では、始めよう。


王国最弱の魔法使いの、嘘だらけの学院生活を。


— 神崎蓮、記す

死ぬ瞬間、俺が最後に考えたのは——「あ、録画セットし忘れた」だった。


我ながら情けない。二十六年間生きてきて、走馬灯に浮かぶのがドラマの最終回とは。でもまあ、仕方ない。トラックに轢かれながら「ああ、充実した人生だった」と思えるような人間に、俺はなれなかった。


そして気づいたら——草原にいた。


「……は?」


一面の青空。風に揺れる草。遠くには白い城。そして耳に届く、聞き覚えのない言語で話す子どもたちの声。


(これ、ひょっとしてアレか。いわゆる、転生ってやつか)

俺——神崎蓮かんざきれん、元・社畜、現・困惑中——はゆっくりと自分の手を見た。小さい。細い。子どもの手だ。


周囲を見渡すと、同じくらいの年頃の子どもたちが広場に集まっていた。全員が手に魔法の杖を持ち、ローブを着ている。そして中央には、金色の巻き毛をした大人の女性が立っていた。


「これより、王立魔法学院の入学試験を開始します」と彼女は朗々と告げた。「各自、持てる魔力を全力で放出してください」


試験。魔法。学院。


(転生して五分で試験かよ。前世でもそんな理不尽なことなかったぞ)


だが問題は——俺には魔力が丸見えだった。全員の。この女性教師の魔力量は凄まじく、隣の少年は平均より少し上、あそこの赤毛の少女はとんでもない才能を秘めている。そして俺は……


試験官が俺の前に来て、水晶球を差し出した。「では、あなたも測定を」


俺はそっと指先を触れた。水晶球はかすかに光った——ほんの一瞬、まるで蛍のように。


試験官は表情を崩さなかったが、帳簿に何かを書き込むその手が、微妙に哀れみを帯びていた。「……魔力値、三。記録しました」


周囲でくすくすと笑いが起きた。


(よし。完璧だ)

俺は内心でガッツポーズした。

実際の俺の魔力値は——計測器が吹き飛ぶため、正確には測れない。


* * *

入学式の翌朝、俺は「Eクラス」——通称「落第予備軍クラス」——の一番後ろの席に座っていた。


隣の席の少女が、ぷいと顔をそらした。赤毛で、目が鋭い。さっきの試験でとんでもない魔力を見せた子だ。


「あなた、三だったわね」と彼女は言った。声には棘があった。「魔力が三しかない人間が、なんでこの学院に来たの? 自覚がないの?」


「いやあ」と俺は頭を掻いた。「景色がきれいだと聞きまして」


少女は目を細めた。「……バカにしてる?」


「いえ、本心です」


これは嘘じゃない。ただ、景色を楽しむために来た、というのが理由の百分の一でしかないというだけで——残りの九十九は、まあ、追々明らかになるだろう。


少女は鼻を鳴らして窓の外を見た。その横顔に、俺は思った。


(彼女の魔力、昨日より伸びてる。面白い子だな)

そして黒板の前に先生が現れ、最初の授業が始まった。


王国最弱の魔法使い——神崎蓮の、退屈じゃない学院生活が、今日から始まる。

読んでくださって、ありがとうございます。


第一章を書き終えて、まず思ったのは——「レンはつくづく面倒くさいやつだな」ということです。別の世界に来て、草原に倒れて、五分も経たないうちに試験を受けて、そして全力で弱いふりをする。普通の人間なら、もう少し慌てると思うのですが、彼はそうじゃない。どこか飄々としていて、状況を楽しんでいるふしすらある。


書いていて一番楽しかったのは、水晶球の場面です。あそこで「よし。完璧だ」と思えるのは、レンにしかできない。普通の主人公なら「どうしよう」となる場面で、彼は内心でガッツポーズをしている。そのずれが、この話の核にあると思っています。


エリナについても少し。


彼女は最初、読んでいる方には冷たく映るかもしれません。棘があって、上から目線で、名前の呼び方一つにもうるさい。ただ、彼女がレンに声をかけた時——「魔力が三しかない人間が、なんでこの学院に来たの」と言った時——あれは侮蔑ではなく、本当に不思議に思っていたのだと、俺は思っています。彼女なりの、関心の示し方です。


うまく伝わっていたら、嬉しいです。


第二章では、エリナの名前問題と、ハイネ先生の登場があります。先生については、書きながら俺自身も「この人、ただ者じゃないな」と感じました。彼がこれからどう動くか——楽しみにしていてください。


では、また次の章で。


— 作者より

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