表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/11

無力

「……やめろって言ってるだろ!!」


路地裏に響いた声に、俺達は足を止めた。


その後、間髪を入れず短い悲鳴が聞こえる。


嫌な予感がして、全員で顔を見合わせた。


「今の声……あいつじゃね?」


誰かがそう呟いた瞬間、俺達は走り出していた。


曲がり角を抜けて、路地裏を覗く。


そこにいたのは——仲間のあいつだった。


地面に倒され、何度も蹴られている。


5人の不良に囲まれて、抵抗もできずに。


「ガキが。調子乗ってんじゃねぇよ。」


鈍い音が響くたびに、胸の奥が締めつけられる。


「……やめろ!!」


誰かが言った。


「あぁん?」


不良の一人がその言葉に気がつき、こちらをギロリと睨む。


誰かが「ひっ」と情けない声を発した。


足の震えが止まらない。


相手はたかが高校生。


だがそれは中坊なりたての俺達の目には強大に、そして凶悪に見えた。


「てめぇらも同じ目にあいてぇのか?」


金属バットを地面に叩き付けながら、俺達にそう問いかけてくる。


「っ……。」


全員、分かってる。


ここで飛び込めば、ただじゃ済まない。


それでも、目の前で仲間がやられてる。


助けなきゃ、そう強く思う。


なのに——足は動かない、動けない。


「仲間がやられてるのに見て見ぬふりか?情けねぇ。」


馬鹿にしたような笑い声が響く。


「なら黙って見てろ。」


不良の手のバットが仲間に振り下ろされる。


「うっ…!」


「っ……!」


その苦しそうな呻き声に、誰かが歯を食いしばる音がした。


でも、結局——何もできなかった。


やがて、不良達は去っていく。


静かになった路地裏に、重たい空気だけが残る。


俺たちはゆっくり近づいた。


「……大丈夫か?」


返事は無い。


ただ、微かに息をしているだけだった。


誰も、目を合わせなかった。


分かってるからだ。


自分達が、逃げたということを。


「俺達、何やってんだよ…。」


ぽつりと、誰かが言った。


その一言が、胸に刺さる。


悔しい。


情けない。


でも、それ以上に——腹が立つ。


こんな理不尽な世界に。


そして、何もできなかった自分達に。


沈黙の中で、俺は口を開いた。


「……変えねぇか。」


全員の視線が集まる。


「こんなのおかしいだろ。当たり前みたく人を殴るやつがいていいはずねぇだろ。」


拳を握る。


「不良のいない世界、俺達で作ろうぜ。」


少しの沈黙。


でも——


「……やるしかねぇだろ。」


「もう二度と、こんな思いしたくねぇ」


一人、また一人と、声が重なる。


その瞬間、全員の中の何かが変わった気がした。


弱い俺達は、まだ何もできない。


でも——


ここから、始める。


全員で、この腐った世界をぶっ壊す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ