第四章 -共闘- 4 『それぞれの役目と覚悟』
「ーーーなっ!?」
突如、《岐阜の街》の中央で巻き起こった大爆発を、建物の影から目にした加藤は、咄嗟に身構える。
それも当然の反応だ。
地響きが伴うほどの爆音と衝撃波を撒き散らしながら、粉塵を数十メートル以上巻き上げた大爆発だ。恐怖で身構えない人間などいないだろう。
「ーーーおい! 大丈夫なのか!?」
当然、大爆発の原因が アルフレッドだと察しが付いている加藤は、常時 通信状態にしてあった、斑鳩の《受信と送信》で、島田に状況の確認を行う。
だがしかしーーー、
「ーーーっ!?」
巻き上がった粉塵で 通信が乱れているのか、島田の声は聞こえて来ず、ザーッ、ビーッ といったノイズ音が加藤の頭の中で響き渡る。
「・・・くそっ! おい、島田! 応答しろ! おい!!」
頭の中で鳴り響くノイズ音が、さらに加藤を不安にさせる。
確か、島田が立てた作戦では、今、アゲハと志摩 海がアルフレッドに接近しているはずなのだが・・・。
と、その時だーーー。
『わ、、る・・・かて・・・ッ』
「ーーーっ!?」
頭の中で響くノイズ音に紛れて、聞き覚えがある声が聞こえてきた。
「島田か!? 大丈夫か、お前!?」
『ーーーあぁ、、だい・・、だ。・・・通信が乱れて悪かったな』
「いや、それはいいんだが・・・、他のみんなは!? 確か、今はアゲハと海がアルフレッドに近づいている時くらいだよな!?」
『あぁ。作戦通り進行しているよ。アゲハと海も大丈夫だ。さっき、斑鳩さんの《受信と送信》で通信を図ったら、ちゃんと応答していた。生きているよ』
「・・・っ。そうか・・・よかった・・・」
島田の言葉を聞いた加藤は、身体の力が抜けるくらいの安堵の息を「ふぅ〜っ」吐いた。
だが直ぐにーーー、
「ーーーと、それじゃ、俺の出番は もう直ぐだよな!?」
『そうだな。多分、すぐに合図が入るから準備しておいてくれ』
「分かった・・・了解!」
ここで、島田との通信が一度切れる。
だが、直ぐに再び通信が入るはずだ。その時が、加藤の攻撃の時になる。
その事を理解している加藤は、再び「ふぅーっ」と息を吐いて、腰に挿していた日本刀を抜刀する。そして、《部分強化》の能力を発動して、日本刀の白刃を最大限まで強化した。
「・・・」
見た目では分からないが、最大の斬れ味と最長の剣域、そして強力な魔力耐性を白刃は帯びる。
そんな白刃に目を落とした加藤はーーー、
「一撃だ。全身全霊を込めた、この一撃で決める」
ぽつりと、そう呟いた。
***************
「ーーーウミちゃん、大丈夫!?」
密かに、アルフレッドへの攻撃を狙って身を隠しているアゲハは、少し離れた位置に、同じように身を隠している志摩 海に通信を図る。
アゲハの通信から数秒ほど時間が空いた後ーーー、
『だぁーいじょーぶ! 全然、ダメージ来てへんわー!』
海の能天気かつ快活な声が、アゲハの脳内に響き渡ってきた。
「そう・・・よかった。ウミちゃんは、私よりアルフレッドの近くにいたから」
『あはは! 確かに、今、アルフレッドの 1番近くに居んのは私やからねー。心配すんのも無理ないわー。けど・・・ホンマに心配する事なんて無いで。絶好調やわ。ほいじゃ、ちょっと自分の仕事に集中するから、一旦切るでー』
「!」
と、ここで海との通信が切れたアゲハ。
その瞬間、作戦の最終段階に入ったようだと、アゲハは《第六感》で感じ取る。
同時にーーー、
「ーーー私の役目も、直ぐだってことね・・・」
自分の役目が近いことを察して、持っていた銃のグリップを強く握り込んだ。
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「ーーーチッ」
本日、何度目か分からない苦々しい舌打ちを繰り出したアルフレッド。
だが、それも仕方ない事だ。
今、アルフレッドの目の前では、2メートル弱ある土塊人形が猛烈なラッシュを彼に向けて放ってきているのだから。
「この泥人形・・・こんな形をして、先ほどの巨大な泥人形の倍以上の魔力を内に秘めてやがる」
先ほど、四門がアルフレッドに嗾けた、1年の寿命を《贈命》した30メートル超の土塊巨人。
今、アルフレッドの目の前にいる土塊人形は、その巨人の10分の1以下の大きさにも関わらず、倍以上の強さを持っているのだ。
これには、アルフレッドも最大級の警戒を見せる。
「一撃でも喰らったら、大ダメージ必死だな。それに、さっきより小柄なせいかーーー、っ!?」
瞬間、顎を狙って打ち出された拳を、アルフレッドはギリギリで躱す。
「ーーー攻撃が鋭い!!」
近距離戦は不利だと判断したアルフレッドは、トトンッ と軽いステップで背後に飛ぶとーーー、
「ーーー《流星闘技》」
シュィィィィ!! と軽やかな音を上げて、身体から光を発する。
刹那、夜空を駆る流れ星のように、高速で空に飛び上がったアルフレッド。
「わざわざ肉弾戦に付き合ってやる必要はない。上空から空爆して、簡単に再生できないほどの粉微塵にしてやるーーー《七星のやいーーーっ!?」
だが次の瞬間、空に陣取ったアルフレッドの頭上から、いくつもの《火球》が降りそそいできた。
「ーーーチッ。《獣人種》の《曲がる火球》か!?」
もちろん、基礎攻撃魔法ていどでは、アルフレッドにダメージを与えるほどの効果はない。
だがしかし、幾分か意識を削ぐ効果はある。
「邪魔くさい・・・っ」
降りそそぐ《火球》に意識を削がれたアルフレッドは、発動中だった魔法を中断してしまう。
この隙が、2年もの寿命を《贈命》された、四門の土塊人形の前では致命的だった。
「ーーー!?」
刹那、地上ーーー、土塊人形が居た場所で 小規模な爆発が巻き起こった。
と思ったら、上空に陣取ったアルフレッドの目の前に、先ほどの土塊人形が姿を現す。
そしてーーー、
「ーーーなっ!?」
困惑するアルフレッドの顔面めがけて、その強力無比な拳を打ち出した。




