第四章 -加藤 vs アルフレッド- 25 『遭遇』
《岐阜の街》の壁際に 折り重なるように堆積した瓦礫群に身を隠しながら、島田、アゲハ、シャノンの 3人は、戦闘音が聞こえていた方へ歩を進めていた。
「・・・なぁ、シャノン」
そんな中、先頭を行く島田が 徐にシャノンに話しかけてきた。
「んだヨ?」
「別にシャノンは無理に付いてくる必要はないんだぞ」
「ーーーハァ?」
「いや・・・加藤がアルフレッドと戦うハメになったのは、俺とアゲハの所為だし。そうなんだよな、アゲハ」
「うんーーー、アルフレッドの口ぶりと私の勘じゃ、そんな感じだね」
アルフレッドと相対した時の事を思い出すアゲハ。
「・・・確かに アイツは、“兵庫以外の人間に危害を加える事を匂わせたら、決闘を受けた” って言ってたよ。あの時・・・《怪物闘技》の最後の場面、私とマサルは気を失ってたから・・・きっと兵庫は、動けない私たちからアルフレッドの気を逸らすために、奴と戦おうとしたんじゃないかな・・・。それで、決着が付かなかったから、兵庫はアルフレッドに狙われて・・・」
「・・・今に至るって訳か」
「ーーーうん」
「・・・」
アゲハの推察を聞いていたシャノンは、気づかれないように 小さく嘆息を漏らした。
(ーーーだいたい合ってるナ・・・アゲハの《第六感》による超直感カ。マァ、カトウがアルフレッドの《決闘状》を受けたのハ、半分はカトウが挑発に乗せられたからなんだガ・・・こいつらが責任を感じるのも分かるナ・・・だからこソーーー、)
再び、「フゥ」と息を漏らしたシャノンは、ぽつり と呟いた。
「ーーーこいつらを死なせる訳にはいかネェ」
「ん? なんか言ったかシャノン?」
「いんヤ、何でもなイ」
シャノンは、フルフル と頭を振る。
「ーーーシマダの気遣いはありがてぇけド、オネーサンとしてハ、子供らだけに危険な事は させられねぇナ。引率者として付いていくヨ」
「オネーサンって・・・別に俺らと そう歳は変わらないだロ?」
「ふふン。そリャ、ありがとナ」
「・・・?」
実は、付き合いが長い島田であっても、シャノンの年齢は詳しくは知らない。だが、若い島田から “歳が変わらない” と言われて、素直に喜んでいるところから、本当に割と年上なのかもしれない。
(ーーーシャノンって、マジで年齢ナゾだよな・・・櫻井さんの古い友人って事だから、実際は20代前半くらいか? いや でも・・・前に佐伯さんを子供扱いしてるところ見た気がするんだが・・・まさか、40〜50代とか・・・は、あり得ないか。流石に・・・)
ちょっとした疑問に、「うむむ〜っ」と頭を捻らせる島田。
その時だーーー、
「ーーーム!」
シャノンの鋭敏な猫耳が、前方から向かってくる“何か” を捉えた。
「シマダ、アゲハ。前から何か来るゾ。人・・・だナ、これハ」
「! 人・・・加藤か?」
咄嗟に、前方へ目を向けた島田とアゲハだがーーー、
「誰もいないよ?」
瓦礫の山の上では 満足に見通しが効かないため、人の目ではシャノンの獣のごとし耳が捉えた“何か” は見えない。
だがしかし、その“何か” は確実にシャノンたちの元に近づいて来ていた。
「いや居ル。来るゾ」
「!」
「来るって・・・」
シャノンが短く言った瞬間、前方に横たわる建物の瓦礫・・・その影から、1人の男が姿を現した。
日本人離れした白い肌に 美しい金髪・・・そう、アルフレッドが そこに居たのだ。
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「ーーー島田たち、言っちゃったなぁ」
「!」
「そ、そうだね・・・」
四門が《贈命》で創り出した土塊人形に担がれて《岐阜の街》の《蔦壁》を登る中、志摩 海は、ぽつり と呟いた。
「・・・奴らが行きたいって言ったんだから、行かしてやれば いいんじゃない」
「そりゃ、ルアンちゃんの言う通りなんやけど・・・」
「何だよ?」
「これ、私らだけ おもおめと逃げて良かったん? 私らも、ヒョーゴン助けに行った方がよくない?」
「ひょーごん・・・? 加藤のこと言ってんのか?」
「そう。加藤 兵庫だから、ヒョーゴン」
「訳のわからねぇ あだ名 付けてんじゃねぇよ。きららの影響だろ。黙って運ばれてろ、舌噛むぞ」
「むぅ〜・・・ルアンちゃんは淡白やねぇ。まるでタンパク質やで」
「別もんだよ、それ」
「なぁ、しもっちもヒョーゴン助けに行った方が良いと思うやんなぁ」
「ーーー! それは・・・」
海に問われた四門は、応えに困ったように俯いてしまう。
「海、コラァ! 四門は、今 集中してんだよ。変なこと聞いて困らせんじゃねぇよ」
「変なことちゃうよー。しもっちの意見 聞いとるんよ。なぁ、しもっち。しもっちも助けに行った方がエェ思うよな?」
「四門は 争い事が嫌いなんだよ。誰が助けになんて行くか。なぁ、四門」
「ぅ・・・僕は・・・ぃ」
その瞬間だ。
ボンッ と街 ーー今となっては瓦礫の山だがーー の一角で、爆発が巻き起こった。
「っ!? なんだい!?」
「爆発ちゃう? 大きかったで、今の!」
爆発が巻き起こったところには、煌々と炎が燃え盛り、黒々とした煙が立ち昇っている。
その熱量は凄まじい。
爆発が巻き起こった場所と、四門たちが壁を越えようとしているところは、直線距離で100メートル近くある。
それなのに、爆発による炎の熱気が四門たちの元にまで届いているのだ。
ふと、その時だーーー。
「なぁ・・・あの辺って、島田らが向かって行った ところとちゃう?」
「ーーーはぁ!?」
「ぇ!?」
「いや、場所的にそうかなぁー・・・思て・・・間違ってたら、ごめん」
「・・・っ」
確かに 海が行った通り、爆発が巻き起こった場所は、島田たち3人が向かって行った方角と一致する。
と言う事は、あの爆発の場に居るのは・・・。
「・・・僕は・・・僕は・・・」
最悪の想像に頭を悩ませながら、四門は、先ほど海に問われた答えを必死に探していた。




