第三章111 『決戦! 空の上』
『ピピッ、、、ピピピ!』
空を音速で駆ける《魔導騎兵》フェーズ2 は、地上の一角から強力な魔力反応をキャッチした。
複数の魔力を持つ者が より固まっているような反応だ。
その数は、およそ5つ。巨大な魔力が3つに中程度の魔力が1つ。あとは《魔導騎兵》の高精度のセンサーでなければ見落としてしまうほど小さな魔力が1つだ。
『フクスウ ノ マリョク ハンノウ ヲ キャッチ』
《魔導騎兵》フェーズ2 は、より固まった この魔力反応に覚えがあった。
『ーーー ジャイアント オヨビ キケンド A ハンテイ ノ マジン ト オモワレル』
つい先ほど、自分を追い込んだ集団だと認知した《魔導騎兵》フェーズ2 。
不気味な機会音を奏でたと思うと、急に方向転換をする。
向かう先は もちろん、強力な魔力反応をキャッチしたーーー闘技場だ。
『センメツ タイショウ ヲ ヘンコウ シマス。モクヒョウ ーーー ジャイアント オヨビ キケンド A ハンテイ ノ マジン』
フォン! と《魔導騎兵》フェーズ2 の頭部 ーー戦闘機で言うところの搭乗席ーー に、赤く光る瞳が映し出された。
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「来る! 来るよっ!! 猛スピードで こっちに近づいてる!!」
アゲハの《第六感》が音速で迫り来る《魔導騎兵》フェーズ2 を補足した。
「ーーーあと、15秒くらいで この真上を通る!!」
アゲハの言葉に素早く反応したのは巨人だ。
「ぬぅ、娘の《魔人》よ! 合図をくれ!!」
「うん、分かってる!!」
アゲハは空を凝視して、自分の能力に集中する。
いくら勘が鋭くとも、少し先の未来を先読みできるとも、相手は音速で空を駆けてくる化け物だ。動きを読むのは並大抵のことではない。
ぐぅぅ、、、と脳を絞るように意識の集中を促すアゲハ。
その時、不意にアルバートンの言葉がアゲハの脳裏を横切った。
ーーーお前らはモンスターだ。
「ーーーっ!!」
緊急時であるため考えない様にしていた事が、頭の底から湧き出してくる。
まるで夏場の生ごみだ。ゴミ箱に押し込み 固く蓋をしておいたはずなのに、不意に嫌な匂いが漏れ出してくる。
「黙って・・・っ」
口の中で転がすように、アゲハは小さく吐き捨てる。
「誰かを、、、仲間を救えるなら、今はモンスターにだってなるわよ!!」
次の瞬間、過去最高に研ぎ澄まされたアゲハの《第六感》が発動した。
ギュン! と、この場の全ての事象を把握したかのような感覚に包み込まれたアゲハ。
その瞬間、全てを理解する。
いつ、どのタイミング、どの角度で、巨人が加藤を空に投げたら《魔導騎兵》フェーズ2 に最も接近できるのか。
「・・・っ!」
まるで脳内に電流でも流れたかのようだ。
「巨人のオジサン!! カウントダウンする!! それに合わせて兵庫を真上に放り投げて!!」
「むぅ!! 分かった!!」
「、、、3、、、2、、、」
ぐぐぅぅぅ、と巨人は加藤を乗せた左腕に力を込める。
「ーーー1、今!!!」
「ぬぅぅぅーーーらっっっっ!!!」
刹那、ゴウッ!!!! と空間が断裂したかのような、歪な音が加藤の耳を打ちつけた。
まるで足の裏が巨人の掌にへばり付いているような感覚を覚えたと思ったら、内臓すべてが浮き上がったような、何とも言えない浮遊感に身体が包まれる。
「いっーーーーーーーーー!!!!」
自分の声すら置き去りにして、加藤は空高く投げ出された。
「ーーーーーーーーーえっ、、、がっ、、、!!!!」
揺れる視界の中で、みるみる夕日で赤く染まる空が近づいてくるのが分かる。
「ばぁぁぁぁああああああーーーーーーーーーーーー!!!!」
不意に、ツン とした空気が鼻を刺した。
おそらく、雲に突入したのだろう。
地上から見た雲は、形がはっきりしている物だと思っていたが、いざ近くで見てみると 霧というかモヤというか、なんとも不規則な存在だった。
歪な空間と言えばよいだろうか。
この空間を抜ければ、《魔導騎兵》フェーズ2 が居る上空へと辿り着けるはずだ。
「ーーーッ!!!!」
突如、加藤の瞼を一際強い光が刺した。
西の空を赤く彩る陽の光だ。
つまり、《魔導騎兵》フェーズ2 がいるステージだ。
加藤は目を瞬かせながら、必死で《魔導騎兵》フェーズ2 の影を探す。
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『ピピピ、、、』
上空を音速で突き進む《魔導騎兵》フェーズ2 は、地上から高速で迫り来る魔力に反応した。
まるで自分を撃ち落とさんとする程の勢いで飛んでくる魔力反応。
このままでは、あと数秒後に衝突してしまう。
そうシステムが判断した《魔導騎兵》フェーズ2 は、咄嗟に方向を転換する。
『ピピッ、、、ショウトツ ヲ カイヒ セヨ。カイヒ セヨ』
ブォォンッ!!! と空中をアクロバティックに舞い、地上から迫り来る謎の飛翔体から距離をとった《|魔導騎兵》《ドラグーン》フェーズ2 。
『ピピピッ』
次の瞬間、フッ と雲を突き抜けて姿を現した飛翔体。
その正体は、日本刀を手にした1人の少年ーーー加藤 兵庫だ。
『ピピッ、、、キケンド A ハンテイ ノ マジン ト ダンテイ・・・』
「ーーーいたっ!! 《魔導騎兵》!!」
闘技場の遥か上空で、加藤と《魔導騎兵》は、再び 相まみえた。