第三章106 『空爆惨禍』
ゴウッ!! と音速で空を駆るのは、鏃のような機体をした銀白色の戦闘機だ。
『ピ、、ピピッ、、、』
2対のジェットエンジンを吹かせながら、アクロバティックに空を舞う この戦闘機は《魔導騎兵》が変化したものだ。
《魔導騎兵》フェーズ2 。
それが、この戦闘機の名だ。
『ピピピ ーーー チジョウ ニ セイメイ ハンノウ タスウ、、、』
《魔導騎兵》フェーズ2 の頭部 ーー戦闘機で言う所の乗員席にあたる場所ーー にあるセンサーが《大和王国》の王都 大阪に住まう多くの人をロックオンした。
『ーーー センメツ シマス』
次の瞬間、《魔導騎兵》フェーズ2 が通過した空に、数多の魔法陣が展開された。
まるで飛行機雲のように細長く続く魔法陣。
これは言わずもがな、攻撃のモーションだ。
『ピピッ、、、トウカ』
《魔導騎兵》フェーズ2 が合図を送った瞬間、空中に展開された魔法陣から強力なエネルギー弾が発射される。
フォー・・・ンッ という歪は風切り音を奏でながら、地上に向かって落ちてゆくエネルギー弾。
そしてーーー、
『ピピッ、ダンチャク カクニン』
まるで火山噴火のごとき膨大な爆発が、街の至るところで巻き起こった。
大地が揺れて、建物は吹き飛び、黒煙が立ち上る。
そこに居たであろう大勢の人々は、一瞬にして粉々の肉片へと姿を変えた。
『ピ、、ピピピ、、』
再び、アクロバティックな空中旋回で空を駆る《魔導騎兵》フェーズ2 。
またも、その頭部にあるセンサーで街の生命反応をスキャンする。
『ピピッ、、、 セイメイ ハンノウ タスウ』
詳らかにされる街の住人たち。
《魔導騎兵》フェーズ2 のセンサーにかかれば、建物に身を隠そうが、地下に潜もうが関係ない。
生きている限り、エネルギー弾の空爆の餌食となる。
『ーーーセンメツ シマス』
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「何だよありゃ・・・?」
人間、本当に圧倒的な光景を目にすると、自然と口が開くようにできているらしい。
元に、上空から街の様子を見た加藤は、ぽっかり と口が開いて塞がらなかった。
「ぬぅ・・・《魔人》よ。いったい何を見た?」
隣にいた巨人が尋ねてきたが・・・、
「・・・いや、その・・・なんて言えばいいか・・・」
加藤には、今 目にした光景を言語化するのは難しかった。
一言で無理やり表すのならば、“街が燃えている”だろうか?
例えば、特撮映画で見るような大怪獣に襲われている街のような、、、はたまた戦争の悲惨さを伝える資料で見たような光景だろうか・・・。
だが、その どれもが何処か違うように感じる。
悩む加藤。
その上空をーーー、
「ーーーっ!?」
「きゃっ!?」
「ぬぅ?」
爆音を轟かせながら、戦闘機となった《魔導騎兵》フェーズ2 が通り過ぎた。
「うぉぉ・・・」
耳鳴りを何倍にもしたような高い音が加藤たちの耳朶を打つ。
「何だあれ?」
「ぬぅ・・・アレは、もしや先ほどのーーーっ!!?」
次の瞬間、加藤とアゲハを左腕で抱え上げた巨人。
「うわ!!? 何すんだ!!?」
「ちょ、、、!?」
2人の文句も聞かずに、巨人は《空間転移》の魔法陣を構築するシャノンの元へ走り出した。
「ーーーそこの瓦礫に隠れておる《混血種》よ!!」
「ひぃ!? 何なのですか!?」
身を隠していたナノデスは、突如 巨人の どら声で怒鳴られて身を震わした。
だが、構わずに巨人は言葉を続ける。
「今すぐに魔法陣を展開している《獣人種》の元まで走れ!!」
「ひぃー・・・ぃ!!」
ナノデスは声を震わしながらも、巨人の怒号に弾かれるようにしてシャノンの元まで走り出した。
それを確認した巨人は、次にシャノンへ指示を飛ばす。
「《獣人種》よ!! 貴様の周囲に防壁を築くぞ!!」
「ーーーナッ!? どういウ・・・ッ!?」
当初、巨人が言っている事の意味が分からなかったシャノンだが、天を仰いだ瞬間、はっ と気がつく。
「ーーーチィ! そういう事カ!!」
巨人は、シャノンの近くまで来ると 加藤とアゲハを投げ出した。
ずざざッ! と石畳の地面を転がる2人。
アゲハが何やら「女性がどうのこうの」と喚いているが、巨人に聞いている暇はない。
ナノデスがシャノンの元まで辿り着いたのを確認した巨人は、左手で大地を穿った。
ボゴォ、、、ンッ!! という轟音が、地響きを伴なって響く。
「ーーー《魔導騎兵》・・・彼奴は戦争がしたいのか?」
次の瞬間、加藤たちを取り巻くように、辺りの地面が隆起する。
ズゴゴゴゴゴゴゴッ、と瞬く間に、巨大な土塊のドームが出来上がった。
「何を・・・っ!?」
刹那、爆音が世界を支配し、大地を揺るがした。
加藤たちの頭上に巨大なエネルギー弾が落ちてきたのだ。