第三章96 『集中砲火』
『ーーーピ・・・ピピッ・・・リョウカイ シマシタ』
飛空艇からの命令を受信した《魔導騎兵》は、再び 目が不敵に光り動き出した。
『ヒョウテキ ケッチュウ マリョクノウド 3800マン ノ マジン ーーー ピピッ、、ピ、、ヒョウテキ ホソク』
《魔導騎兵》のセンサーが眼前に立つ加藤を捕捉する。
次の瞬間、《魔導騎兵》は、背後に巨大な魔法陣を展開。魔法陣から生み出した暴風を利用して、地を滑るように高速で加藤に飛来した。
「ーーーっ!!」
疾風怒濤の勢いで突っ込んできた巨大なロボットに対して、凄まじい圧力を感じる加藤。
だがしかし、幾度となく実戦経験を積んだ加藤にとっては、《魔導騎兵》の攻撃は正直 単調だった。
「ただの体当たりか? 《怪物闘技》に出てた奴らは もうちょい工夫してたぜ?」
加藤は《部分強化》で腕を強化する。そして、手元にあった1メートルほどある巨大な瓦礫を持ち上げた。
加藤は持ち上げた瓦礫をーーー、
「ーーーおらっ!!!」
凄まじい膂力を用いて、《魔導騎兵》に投擲。ガスマスクのような顔面に直撃した。
『ーーーピ、、、ピピッ』
もちろん、その程度で古代超兵器の異名をもつ《魔導騎兵》が倒れる訳がない。
軽々と瓦礫を粉砕して、構わず加藤に突っ込む。
だがーーー、
『ピピッ』
次の瞬間、《魔導騎兵》のセンサーは加藤の姿を見失った。
加藤が投擲した瓦礫は攻撃のためではなく、目眩しのためのモノだったのだ。
加藤たちの目的は《魔導騎兵》を倒すことでは無く、時間を稼ぐことだ。真っ向から向かってくる相手を わざわざ相手にする必要はない。適度に目を眩まして逃げればよいだけだ。
『ピ、、ピピッ、、、ピピピ』
辺りを伺う《魔導騎兵》だが、加藤の影も形も見当たらない。
当然だ。
加藤は現在《魔導騎兵》の遥か頭上に陣取っているのだから。
(・・・ふふふっ。探してる探してる・・・。巨人もそうだったが、デカい奴ってのは自分の頭上を取られるのに慣れてねぇんだな・・・)
ほくそ笑む加藤だがーーー、
(ーーーっ!!? イデェ!! くっそ・・・やっぱ、この足を《部分強化》で強化するのは無理があったか・・・っ!)
すぐさま、鈍痛が走る足を思い出して我に帰った加藤。
巨人との戦いで負傷した足を酷使してしまい、そろそろ痛みを我慢するのも限界に近い。
加藤は、ちらり と青あざがマダラ模様のようになった足に目を向けた。
(うへー・・・本気でヤバいかもしれん・・・。撹乱の役目はアゲハとナノデスに任せて、、、俺は少し後方に下がろうかな・・・)
などと考えていた加藤をーーー、
『ピピッ』
最悪の事態が襲う。
『ピィーーー ジョウクウ ニ コウマリョク ハンノウ ヲ ケンチ・・・ヒョウテキ ノ マジン ト ダンテイ』
次の瞬間、《魔導騎兵》が左手に持った《炎の剣》を真上に向かって振り払った。
刹那、業火を纏った斬撃が上空にいた加藤を襲う。
「ーーーなっ!!!?」
咄嗟に身を捻り、《魔導騎兵》の斬撃をぎりぎりで回避した加藤。
ボコォォオオオォォォォンッ!!! と加藤の真横を巨大な火炎の斬撃が通り過ぎた。
「あっち・・・っ!!!」
ジリジリとした熱風で身体の半身を焼かれる加藤。
一瞬だったから良かったものの、あんな地獄の業火に長時間晒されたら、それだけで身体が燃えてしまいそうだ。
「危ねぇ〜っ! 避けられたのは奇跡だなーーーって、おいっ!!?」
安堵する暇もなく、《魔導騎兵》は追撃を繰り出そうとしている。
右手に持った《氷の剣》の切っ先を加藤に向けているのだ。
「アゲハ!! 奴の気を逸らしてくれ!!」
加藤は《通話》の魔力が付与されたイヤリングでアゲハに助けを求める。
すぐさま、加藤の助けに応じたアゲハ。
「オッケィ!!!!」
アゲハは、無防備な《魔導騎兵》の頭部にしこたま弾丸を撃ち込んだ。
発砲音が幾重にも折り重なり、銃撃を受けた《魔導騎兵》の頭部が白煙をあげる。
『ピピッ』
「よしっ!!」
一瞬、アゲハに意識を向けた《魔導騎兵》だったがーーー、
『ピィーーー メイレイ ヲ ゾッコウ シマス』
「ーーーえっ!?」
すぐに攻撃対象を上空にいる加藤に戻す。
「・・・まじかよ」
自分の今の状況を歯噛みして呪う加藤。
刹那、通信用のイヤリングからアゲハの『ーーー逃げて』という声が聞こえた気がしたが、《魔導騎兵》の攻撃の音で掻き消される。
上空に向けた《氷の剣》の切っ先から、巨大な氷塊が出現。
次の瞬間、氷塊が加藤に向かって高速で飛来する。
「ーーーくそっ!! 南無三!!!」
加藤は《部分強化》を日本刀に《付与》する。
そして、迫り来る氷塊に向かってーーー斬!!! と一閃。
白刃から巨大な斬撃が放たれ、氷塊と真っ向から打つかる。