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第三章95 『フェーズ』


 闘技場の遥か上空に鎮座する飛空艇。

 ここには、《魔導騎兵(ドラグーン)》が得た情報が集約されてくる。

 今、地上の闘技場で吹き飛ばされた《魔導騎兵(ドラグーン)》が、目の前に立つ《魔人》のデータを飛空艇に転送した。

 その瞬間、飛空艇に乗船している研究員たちが驚きの声をあげる。


「なんだ、、、この数値は!?」

「ありえん! たかだか《魔人》だろう!」

「この血中魔力濃度の上昇率は異常だ!!」

「《魔導騎兵(ドラグーン)》に匹敵するぞ!!」


 ざわざわ と騒めき立つ研究員たちを尻目に、飛空艇の甲板に投影された立体映像(ホログラム)を見ていたアルフレッドとマウロ。


「私の《魔導騎兵(ドラグーン)》が吹き飛ばされるなんて・・・っ!!」

「・・・ない」

「はい!?」

「あり、、えない・・・」


 ぽつぽつ と言葉を漏らすマウロ。


「どうかしましたか、マウロ殿?」

「あり得ないんですよ・・・あの《魔人》の血中魔力濃度が・・・」

「・・・《鑑定眼》の力ですか。確か、目に映っている者のあらゆる情報を数値化できると言う・・・」

「えぇ」

「ですが、先ほどマウロ殿が言った あの《魔人》の血中魔力濃度は、確か1300万程度でしょう。《魔人》としては、高い方ですが標準の範囲内ですよ」

「いえ・・・そうじゃないんです・・・急上昇したんですよ・・・あの《魔人》の血中魔力濃度が」

「はっ!! 魔力濃度の上昇など よくある話でしょう。100万から200万程度 上昇したところでーーー」

「3820万・・・」

「は?」


 マウロは、自身の《鑑定眼》から得た情報をアルフレッドに伝える。


「今の、、、あの《魔人》の血中魔力濃度ですよ・・・3820万。一瞬で3倍に上昇したんです」

「・・・は?」


 アルフレッドは言葉を失う。

 当然だ。

 突如、血中魔力濃度が3倍になるなど あり得ない事なのだ。



 《血中魔力濃度》

 言葉の通り、血液内の魔力の濃度を表す言葉だ。

 基本的に魔法を行使すると減少していくモノだが、稀に、感情の昂りなどで上昇する場合もある。



「ーーーが、血中魔力濃度の上昇率は、高くても せいぜい100〜200万程度・・・それが突如、3倍になるなど あり得ん!!」

「えぇ。それに、3800万など熟練の魔道士と同等レベル。たかだか《魔人》に出せる魔力量では ありませんよ・・・」

「本当に・・・何者だ? あの《魔人》・・・」


 もはや指から血が出るほど、親指の爪を()みながら立体映像(ホログラム)を睨みつけるアルフレッド。

 と そこに、研究員の1人が近づいてきた。


「アルフレッド様・・・」


 おずおず とアルフレッドに話しかけたのは、灰色の口髭を蓄えた初老の研究員だ。

 マウロの記憶が正しければ、この者は《魔導騎兵(ドラグーン)》製造の主任研究員だった男だ。


「今、、、、ご覧になられている《魔人》の血中魔力濃度が・・・3800万を記録しました」

「分かっている。今、マウロ殿から聞いた」

「ぇ、、えぇ・・・それで、その・・・」


 言い辛らそうに言葉を濁す主任研究員。

 それを煩わしく思ったのか、アルフレッドは言葉に棘を持してーーー、


「なんだ?」


 と返す。

 主人の反感を買ったかと思ったのか、深々と頭を下げた主任研究員。そのまま、甲板に話しかけているのか と思えるほど頭を下げた状態で主任研究員はアルフレッドに上申する。


「ぃぇ・・・その、、、ド、《魔導騎兵(ドラグーン)》の血中魔力濃度は、、、5500万です・・・その・・・このままでは・・・《魔導騎兵》が・・・負ける可能性が」

「・・・っ」


 ごくり と生唾を飲み込んだ主任研究員。

 アルフレッドの怒りに触れない言葉を必死に探すが、どうあっても無理そうなので意を決して口を開く。


「そ、、それで・・・て、提案がございまして・・・」

「提案?」

「ド、、ド、《魔導騎兵(ドラグーン)》を、、、フェーズ2にしては・・・」

「ーーーっ!!!」


 次の瞬間、主任研究員の身体が発火した。


「ひっ!!? ご!! ごごががががが!!?」


 瞬く間に、炎は主任研究員を飲み込み その肉体を灰に帰す。


「・・・フェーズ2だと? 《魔人》を相手にするためだけに・・・私の《魔導騎兵(ドラグーン)》をフェーズ2にするなど、、、あって良いわけ無いだろうがっ!!」


 アルフレッドの怒りに当てられて、飛空艇の乗組員は静まり返る。

 ある者は震え、ある者は静かに恐怖の涙を流した。

 それほどまでに、怒りに飲まれたアルフレッドは部下たちの中で恐れられた存在なのだ。


「ふぅ、、、ふぅ、ふぅふぅ・・・」


 短く呼吸を繰り返しながら、怒りを鎮静化するアルフレッド。

 皆、戦々恐々とした面持ちで主人の指示を待っていた。


「ふぅー・・・申し訳ないマウロ殿・・・少し取り乱した」

「いえいえ、お気になさらず」


 マウロは、にっこりと した表情を顔に貼り付けて言葉を返す。


「・・・ルプース」

「っ! はいっ!」


 アルフレッドに呼ばれた1人の研究員。

 紫の髪をした若い女性だ。


「今からお前が主任研究員だ。《魔導騎兵(ドラグーン)》の指揮を取れ」

「はっ! 了解しました!」


 ルプースは敬礼をアルフレッドに返して、《魔導騎兵(ドラグーン)》の陣頭指揮へと向かう。


「研究者 諸君! 《魔導騎兵(ドラグーン)》はフェーズ1を維持。あの刀剣(とうけん)を持った 鬱陶しい《魔人》を優先的に殺すぞ!!」


 ルプースの指揮の元、《魔導騎兵(ドラグーン)》は再び 動き出した。

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