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第三章85 『殲滅開始』


 ボゴォーーー・・・ン!!! と爆音を(とどろ)かせて、闘技場の下から這い出して来たのは銀白色(ぎんはくしょく)の機体を輝かせた巨大な人型ロボットだ。

 その大きさは14〜15メートル。(ゆう)に巨人の2倍はある。


「なんだ、、、あれ!!?」


 突如、姿を現した巨大ロボットに腰を抜かして驚く加藤。

 自分が今の今まで戦っていた足元から、ロボットが突然出て来たのだから当然だ。

 そんな加藤の元にーーー、


「カトウ!!」

「ーーーっ!?」


 シャノンが駆け寄ってくる。


「えっと・・・?」


 見知らぬ銀髪猫耳の美少女に駆け寄られて、加藤は少しばかり困惑する。

 そんな加藤の様子を見て、「アー・・・」と言いながら頭を掻いたシャノン。


「そう言えば面識なかったナ。オイラがシャノン ダ。こんな時だが よろしくナ」


 そう言って、加藤に手を差し出すシャノン。加藤は黙って、その手を取る。

 そのまま、ぐいっ とシャノンに引き上げられて加藤は立ち上がった。


「・・・」


 立ち上がった加藤は、じっ とシャノンの頭にある三角耳を見つめる。

 そんな加藤の視線を、バツが悪そうに見つめ返すシャノン。


「ーーーんだヨ。今は非常時だからオイラの見た目について詳しく説明する暇はないゾ」


 恥ずかしそうにシャノンは手で猫耳を隠した。

 加藤は、そんなシャノンに対してーーー、


「・・・《怪物闘技(モンスターファイト)》って、そんなグッズも販売してんだな」


 非常に的外れな感想を述べた。


「・・・悪いガ、、、この耳ハ、オイラの自前(じまえ)ダ」


 シャノンの猫耳を、完全にテーマパークで販売されている獣耳カチューシャの(たぐい)だと勘違いした加藤。


「えっ!? それ本物の耳なの!? すげっ、触っていい!?」

「金払うんなラ、触っていいゾ」


 そう言って、シャノンは頭に伸びる加藤の手を払いのける。


「ーーーッテ!! そんな事はどうでもいイ!! カトウ、アレはなんダ!!?」


 突如、闘技場に姿を現した巨大ロボットを指差したシャノン。

 だが、そんな事を聞かれても、加藤にロボットの正体など分かるはずがない。

 無言で首を横に振る加藤に対してーーー、


「ーーーチィ!」


 舌打ちを返すシャノン。


「舌打ちしたぁ!? えっ!? なんでそんな酷いことすんの!? 俺たち初めまして でも仲間だよね!?」

「うるセー。たクッ、あんな得体の知れないモンが出て来たってのニ、マサルもアゲハも、いったいどこで何やってんダ!?」

「えっ!?」


 シャノンの言葉に加藤は驚く。


「島田たちと一緒じゃないのか!?」

「ン? あァ、、、ちっと二手(ふたて)に別れてナ。今、一緒にいるのハーーー、」


 シャノンは背後に目を向ける。

 その視線の先からーーー、


「ヒョーゴォォオオオォォオオオォォオ!!!」


 奥ゆかしいメイド衣装に身を包んだ緑髪の美少女ーーーナノデスが加藤に向かって突進して来た。


「うごっ!!?」


 盛大にタックルされて吹き飛んだ加藤。ズザァァァー・・・と、石畳に背中を削られる。


「・・・ごほ・・・効いたぁ、、、」


 美少女が胸に飛び込んで来てくれるなど、これまでモテない人生を歩んできた加藤にとっては僥倖(ぎょうこう)この上ない経験だった。

 だが、今の加藤にナノデスを受け止めきれる甲斐性はない。


「ちょ、、ナノデス先輩・・・俺 今、本当に余裕ないから、、、どいて・・・」


 胸の上に乗っかってくるナノデスを必死に退かそうとするがーーー、


「あの、、、ナノデス先輩・・・ほんと、身体中 痛いから、、ちょ、どいて・・・あの、ちょ、、どい・・・(かたく)なっ、こいつ!!!」


 ナノデスは、一向に加藤の胸から退こうとはしない。

 加藤の体操服に顔を埋めながら「うぅぅ・・・」と唸っている。


「・・・どうしたんだよナノデス先輩? どっか痛いのか?」

「・・・よかったのです」

「はぁ?」

「ヒョーゴが死ななくて、、、よかったのですぅ!!!!」


 がばっ と身体を上げたナノデスの顔は、涙で ぐしゃぐしゃに崩れていた。


「よかったのですぅぅぅ・・・ご主人様がヒョーゴの《烙印(スティグマ)》を発動させた時は、、、もうヒョーゴが死んじゃったかと思ったのですぅぅ・・・」

「えっ? 俺の《烙印(スティグマ)》って発動したの?」


 不思議に思いながら、自分の首元を探る加藤。

 正直、触っただけでは違いが分からないが、ナノデスの言葉を信じるならば、加藤の首に刻まれた《烙印(スティグマ)》は、すでに発動済みという事だ。

 呪文を唱えた瞬間、その呪文を刻まれた者が即死する契約魔法ーーー《烙印》。

 それが発動したというのならばーーー、


「えっ?? 俺死んだの?」


 つまり、加藤はこの世にいないという訳だ。


「アホカ」


 などと、つまらない事を考えていた加藤の頭に、シャノンのツッコミが ペシンッ と炸裂する。


「お前は生きてるヨ、カトウ。いろいろあったが お前の《烙印(スティグマ)》は不発で終わったんダ」

「へー・・・つぅか、不発で終わったって事は、発動はしたのかよ! もしかして、俺 むちゃくちゃ危なかったんじゃねぇの!!?」

「マァ、その辺りの詳しい事ハ、あとで落ち着いたら話すヨ。いろいろとお前には伝えておきたい事もあるしナ」


 言いながら、シャノンは ちらり と加藤の胸の上にいたナノデスに目を向ける。


「・・・」


 その瞬間、バツが悪そうにナノデスは俯いた。


「・・・?」

「とマァ、積もる話はあとにしテ・・・今はここから脱出しねぇとナ」


 シャノンは前方に突如 現れた巨大なロボットーーー《魔導騎兵(ドラグーン)》を、縦に裂けた瞳孔で睨みつけて言った。

 一方、《魔導騎兵》は、同じ闘技場の中にいる加藤やシャノンには目もくれず、ガスマスクのような頭部で闘技場の観客席を見回している。


『ーーー・・・ピ。ピピッーー・・・ピーーー・・』

「ム!? なんダ!?」


 機械音がしたと思ったらーーー、


『シュウイニ、タスウノ セイメイハンノウ アリ・・・センメツ ヲ カイシ シマス』


 まるで合成音声のような機械的な声を発した。

 と 同時に、前傾姿勢をとった《魔導騎兵(ドラグーン)》。

 次の瞬間、バシュ、バシュバシュバシュ!!! と《魔導騎兵》の背中から“何か”が打ち上がる。

 観客席がある3〜4階ほどの高さまで打ち上がった筒状の“何か”。


「なんだあれ?」


 加藤が目を凝らした その瞬間ーーー、パァン と筒状の“何か”が破裂。

 ズドドドドドドドドドドドドドドドッ!!! と、半透明な(やじり)が全方位に向かって発射された。

 突如 放たれた半透明の鏃に、今の今まで安全圏内から観戦していた観客たちが次々と貫かれる。


「んなっ!? なんだありゃ!!?」

「・・・ばかナ・・・あれは《魔法弾(マジック・ブラスト)》カ!? なんで数ダ!!?」


 一瞬にして闘技場ドームの観客席が血に染まり、各所から叫び声や泣き声がフィールドに降り注いだ。


「おいっ! ちょっと待て!! あいつ またやる気だぞ」

「ーーーッ!!」


 再び、《魔導騎兵(ドラグーン)》が前傾姿勢を取る。

 観客たちは逃げる暇もなく、放たれる《魔法弾(マジック・ブラスト)》に その命を狙われた。





***************





 ズズ・・・ン と地上での振動に揺れる地下実験場。

 そこに1人取り残されて、実験場スタッフの撤退指揮を任された久留本(くるもと) 美優(みゆ)は、小さく ため息を溢すようにーーー、


「始まった・・・」


 と呟いた。


「ーーー《魔導騎兵(ドラグーン)》が起動した以上、この地にいる全ての生命体を殺し尽くすまで止まる事はない・・・止められるとするならば・・・」


 美優は、じっ と地上の方を見上げる。

 しばらくの間、地上を見つめた美優は小さく嘆息を吐いた。

 そこでようやく、彼女は術を解き、足元に横たわる2人に声をかける。


「・・・いつまで寝ているの? 起きて。アルフレッドは もう居ないわ」

「・・・」

「・・・」


 しばらくの間、足元の2人は無言を貫いていた。

 だが、そんな事は無駄であると悟ったのか、2人は ムクリ と起き出す。

 起き上がって顔を見合わせた島田とアゲハ。


「・・・あれ? 生きてる?」

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