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第三章53 『地下実験場での戦い・島田 ④』


 ヴァイオリンを奏でて、使役している蜘蛛たちを呼び戻したバンビー。だが蜘蛛たちは、一向に戻ってこない。

 不審に思い振り返った瞬間ーーー、


「ぇ・・・♧」


 特殊警棒を振りかぶった島田と目が合う。

 バチィィ・・・ッ! と振り下ろされた警棒。

 バンビーが咄嗟に身を引いたため、警棒はバンビーには当たらなかった。だが、その代わりに彼女のヴァイオリンを叩き落とす事に成功した。


「ーーーきゃっ☆」


 床に落ちて、完全に壊れたヴァイオリン。


「私の《魔装武具(マギス・レコン)》がーーーっ♤」


 主武装を破壊されたバンビー。そんな彼女に、島田は容赦なく警棒を振りわます。

 だがーーー、


「オラっ!」

「きゃん☆ もうっ♪ なんなのよ、アンタッ♢」


 ブォン、ブォンーーーッ! と虚しく空を斬る島田の特殊警棒。

 流石は元軍人のバンビー。近接格闘の類も習得済みなのか、島田の攻撃を軽く往なす。


「ーーーくそッ・・・」


 上手く奇襲できたとはいえ、島田の体力も限界に近かった。

 それだけでなく、蜘蛛に捕らわれた時に負傷した左腕の感覚が すでに無いのだ。

 これ以上、戦いを長引かせる訳にはいかないのだがーーー、


「もーうっ☆ いい加減にしてっ♪」


 横薙ぎに迫ってきた島田の警棒をスウェーで避けたバンビー。


「ーーーぅ!?」


 空振りをした島田が、がくん とバランスを崩した、と思ったらーーー、


「ゴガッ!!?」


 島田の顎に、強烈な右フックが炸裂した。

 歪む視界が、パチパチと点滅する。

 遅れて、口の中に鉄の味が広がった。


(ーーーづ!! いづ、いっづーーーッ!!)


 必死に痛みに抗う島田。だが、そんな彼を さらなる衝撃が襲う。


「えーいっ☆」

「ーーーっ!!?」


 ボクゥゥ・・・、と島田の鳩尾にバンビーの、今度は左肘がめり込む。

 まるで、上半身と下半身が分離したかのような感覚に陥った島田。遅れて、胸全体に激しい鈍痛を感じた。


「ぐ、、、か、はっ・・・」


 胃の奥から溢れた空気が、意味のない言葉2、3語を伴って口から漏れ出た。

 その後すぐに、がくがくがく・・・っ と無意識に足が震え出して、その場に膝をつく島田。


「ふぅー♡」


 バンビーの甘い嘆息が島田の頭上から聞こえてきた。


「本当に、世話が焼けるお猿さんね☆ アナタ♡」


 ちらり と自分の蜘蛛たちに目を向けたバンビー。

 3匹の巨大蜘蛛たちは、床に突っ伏して微動だにしない。まさか殺されたのか!? と思ったバンビーだが、よく見ると小刻みに揺れている。

 どうやら、寝ているようだ。


「あれ・・・♪ 何をしたのかしら☆ 私の子蜘蛛(ベイビー)ちゃんたち、みんな寝ているみたいだけれど♡」

「ーーー・・・」


 ボソボソと口を動かす島田。激痛で声も発せられないのかと思ったバンビーだったがーーー、


「え♪ 聞こえないわ☆」


 違った。

 バンビーが小さな声を聞き取ろうと、島田に顔を近づけた瞬間、下から特殊警棒が振り上げらた。


「ーーーっ☆」


 そのまま、警棒はバンビーの鼻を打ち上げる。


「づーーー〜〜・・・っ!!!」


 鼻がもげたかと思うほどの激痛に悶えるバンビー。


「はぁ、、、はぁ、、、《居眠り草》のエキスを浴びせたんだよ・・・」


 ふらふら と立ち上がった島田は、先ほどのバンビーの問いに答える。だが、鼻の激痛で会話がままならないのか、バンビーから言葉は返ってこない。

 聞いていないのかと思ったが、島田は構わず説明を続けた。


「《居眠り草》ってのは、食虫植物のモンスターでな、、、主に、虫や小さな動物を獲物にしているんだが、コイツが花弁に溜めているエキスには強力な催眠作用があるんだ・・・」


 島田は、ペットボトルを加工した筒をバンビーに見せる。中は空っぽだが、内側にとろみが付いた透明な液体が少し付着していた。


「それを、蜘蛛どもの目の前の床にぶち撒けた。やっぱり昆虫を誘い込むエキスなだけあるよ。俺には目もくれず、エキスに喰らい付きやがった・・・」


 島田は、「まぁ、喰らいつくかどうかは賭けだったんだが、、、」と付け足した後、バンビーの前に空のペットボトルを投げ捨てた。


「《覚醒者》にも有効なエキスだ。蜘蛛モンスターにも効くと踏んでたよ」

「・・・っ」


 島田の説明を、苦虫を噛み潰したような顔で聞いていたバンビー。

 ようやく鼻の痛みも治ってきたのか、ゆらり、、、と立ち上がった。


「ふ、、、ふふっ、、、」


 バンビーは不気味な笑みを溢した。そこには、先ほどまでの胃がもたれる様な色っぽさも妖艶な雰囲気もない。

 ただただ、開き直った怒りの様なモノを沸々と感じる。

 島田が警戒して距離を取ろうとした瞬間ーーー、


「じゅえぇぇぇぇええぇぇぇぇえぇぇぇぇぇっ!!!!」

「ーーーひっ!」


 バンビーは、奇声をあげて島田に掴みかかってきた。


「ーーーテメ、テメェ!!! よくも私のプリティーオブザビューティ小顔に傷つけてくれやがったなァァァァアアアァァァアアアア!!!」

「ぐわっ!」


 島田の胸ぐらを掴み、何度も顔を殴打してくるバンビー。


「テメェのツラも、ボコボコのぐちゃぐちゃにしてやるぅぅぅ!!」

「ぐっ、、、がっ、、イテ・・・っ!」


 島田は殴られながらも、バンビーの腹部に足を掛ける。そして、脚力を利用して、掴みかかってきたバンビーを引き剥がした。


「イッテェーーーって!!」

「ゲボっ、、、」


 瞬間的に距離を空けた島田とバンビー。


「お前、自分の蜘蛛を殺された時よりキレてんじゃねぇか!!」

「うるせぇーーーっ!!! 私の鼻が折れたのよっ!! 私の、、、このビューティフルフェイスがくずれたのよぉーーーっ!! その苦しみが、テメェみてえなガキにわかんのかよぉーーー!!!」

「・・・うるせぇのはお前だ」


 島田は、先ほどの取っ組み合いの時に、密かに足元に落としておいた低威力の手榴弾を蹴飛ばす。

 カン、、、カン、カン、コロロ・・・ とバンビーの股座を抜けて背後まで転がっていった手榴弾。


「・・・?」

「鼻だの顔だのと大騒ぎしやがって」


 次の瞬間、バンビーの背後で手榴弾が爆発。彼女の身体を掬い上げるように前に押し出した。


「きゃ、、、っ!!?」


 無論、バンビーの目の前には特殊警棒を構えた島田が立ちはだかっている。


「ーーーこっちは命かけてんだぁ!!!」


 爆風で吹き飛んできた無防備なバンビーの顔面に、、、ゴシャッ!!! と特殊警棒を打ち込んだ島田。

 スタイルのよいバンビーの身体は、海老反りで綺麗な円を描いたのちーーードザァ、、、と地に付した。


「ハァ、、、ハァ、、、悪いな」


 島田は、バンビーが気を失っている事を確認したのち、アゲハの元に向かう。

 だが、その瞬間ーーー、


「、、、あれ?」


 ぐらり と視界が歪み、島田もバンビー同様その場に身体を横たえた。

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