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第三章16 『隠し通路』


 シャノンが西側エリアの6階VIP席にいた頃、島田とアゲハは闘技場ドームの地下1階駐車場にいた。


「んー・・・」


 周囲を見渡すアゲハ。

 地下駐車場は閑散としていた。

 そもそも、地下駐車場と言っておきながら車が全く無いのだ。

 代わりに置いてあるのは《怪物闘技(モンスターファイト)》に出場しているモンスターが入れられていたであろう巨大な檻や餌などが入ったコンテナなど。

 地下駐車場と言うより、地下倉庫といった方が正しいのかも知れない。


「特に変わった様子はないね」


 何度か《怪物闘技》のスタッフらしき数人見かけたが、特に怪しい素振りなども見せなかった。

 と言うより、闘技の観戦もせずに地下駐車場を彷徨いている島田とアゲハの方が怪しい。

 何度かスタッフに声をかけられそうになり逃げたくらいだ。


「あまり悪目立ちするのも良く無いし、そろそろ切り上げる?」


 島田は、アゲハの提案に首を横に振る。


「いや、シャノンが怪しいと言ったからには何かある。もう少し調べよう」


 と言っても、モンスターの檻や餌などが入ったコンテナの中まで つぶさに調べるには時間が全く足りないし、スタッフの目もある。

 下手に怪しい動きを見せて捕まるのは避けたい。

 その為、広々とした鉄筋コンクリートの空間を見て回るだけになる。

 壁伝いに駐車場を歩く島田とアゲハ。次第に、少し奥まった所まで来た2人。

 と その時ーーー、


「ん!」


 アゲハの《第六感(シックスセンス)》が何かに反応した。

 振り返り、今通り過ぎた壁に目を向ける。


「どうしたアゲハ?」

「いや・・・今なんか変な感じがして・・・」


 そう言って《第六感》が反応した辺りの床や壁を触ったり、叩いたりして調べるアゲハ。

 だがーーー、


「何も無いわね・・・」


 何も見つからなかった。


「本当に《第六感》が反応したのか?」

「うん。今もこの辺りで何かあるって反応してるんだけど・・・」


 そう言いながら、アゲハが不意に近場の壁に触れた瞬間ーーー壁が、フォン・・・と耳心地よい機械音が奏でて光りだした。


「えっ!?」

「なんだ!?」


 次の瞬間、鉄筋コンクリートの壁が、礫を投げ込まれた水面のように波打つ。ゆらゆらと揺れる壁は次第に開けていき・・・瞬く間に隠し通路が出現した。


「・・・?」

「か、くし通路?」


 突然の出来事に唖然とする島田とアゲハ。

 2人は、数秒ほど出てきた通路の先を眺めたのち、顔を見合わせる。


「ど、うする?」


 島田の問いにアゲハは一瞬 逡巡するがーーー、


「そりゃ、調べた方がいいんじゃない?」


 そう決断する。


「けど、危険じゃ無いか?」


 シャノンが怪しいと疑った地下駐車場に、突如 姿を現した隠し通路。

 危険な匂いがプンプンする。島田が危機感を覚えるのも無理はない。


「まぁ、確かにそうかも・・・」


 アゲハも、目の前に現れた得体の知れない通路に物怖じしているようだ。


「一旦、イヤリングでシャノンに聞いたほうがいいかも・・・」

「確かに。それがいいな」


 アゲハに言われて、島田は《通話(コミュニケーション)》の魔法がかけられたイヤリングでシャノンに通信する。だが、何度呼びかけても反応がない。

 ずっと、フォン・・・フォン・・・というコール音が聞こえてくるだけだ。


「おかしいな出ないぞ」

「もしかしたら、出られる状況じゃないのかーーーっ!?」


 と その時、2人の背後から声が聞こえてきた。

 おそらく、《怪物闘技》のスタッフがこちらに向かってきているのだろう。

 顔を見合わせる2人。

 もしスタッフに見つかったら、今の状況をどう説明すれば良いのか・・・。

 適当に地下駐車場を探検していたら、怪しい隠し通路を見つけましたー、などと言えば良いのか。

 それでスタッフが理解してくれれば良いが、まず無理そうだ。

 最悪、島田とアゲハが怪しい人物として事務所とかに連れていかれるかもしれない。


「どうする?」

「え? 知んないよ! 逃げる?」


 と言っているうちに、バタバタッとスタッフの足音が近づいてくる。

 このままでは、今の怪しい姿を見られてしまう。

 2人は、偶然 隠し通路を見つけただけだが、こそこそしていた罪悪感から何だか悪い事をしている感覚に陥ってしまう。

 だからか、逃げ道のように開けられた隠し通路に2人して飛び込んでしまった。


 島田とアゲハが隠し通路に足を踏み入れた瞬間、再び波紋が広がる水面のように波打った壁。

 瞬く間に、隠し通路の入り口は何の変哲もない壁に戻ってしまった。

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