まぁ、ね。鱗を嬉々として剥ぐのを見てドン引きしても良いよね。
何なんだ………………。
「チィッ! 」
このおかしい魔力流れは。こいつは……受付のやつだな、さっき会った。だけど全然様子がちがう。こいつじゃない。操られている、みたいな……。
「ほいほい! っと! よっしゃあ、復活したよ! 僕の腕! 」
結城の出した魔法陣が消え、代わりに元通りになった腕を掲げる。その腕にさっき結城が出した氷の剣がある。これを天にかざしているようだが何をするつもりなんだろうか。意味ありげに目配せされても…………あ!
俺が出した方の剣を掲げろっていうのか? そんなことをしなくても、そいつを捕まえるなり、倒すなりできるのにな。
「ほい」
とりあえず掲げてみた。結城は剣を上げた俺を見て…………苦笑しやがった。
「うん、あってるけどね…………啓太もずいぶんと厨二病が侵食してるなぁ」
「悪かったな! お前のスペックの方が厨二だけどなぁ! 」
「そうだったね、はっはっは……、はは……。」
「俺が悪かった、悪かったよ結城」
若干涙目になった結城に謝りつつも剣を眺める。
淡く輝きだしたそれは魔力? とかなんとか言いそうな力に満ち溢れている。これは感じがする、とかいう微妙な感じではなく、実感を持って分かることだ。
「大人しくやられておけばいいものを……俺の力で早く屈しろ! 」
「はいはい残念ですねー。操られているエリアスくんはとってもかわいそうなのでその体返してあげてくださいねーー」
うん、技の発動まだかな。腕がしびれてきたんだが。
「バケモノ、メ……」
「化物で結構。じゃあ帰れ」
剣からまばゆい光が飛び出して、エリアスとかいう少年を包み込んだ。
「マオウサマ、ワタシハ……」
「残念無念、君の任務は失敗だよ。じゃあね。
で、こんにちは、エリアスくん」
・・・・
・・・
・・
・
「…………なる程。僕は何者かに操られ、そしてあなたがたを襲った、と……。」
「まぁ僕は無傷だけどね。」
我に返ったエリアスくんは随分と大人しいものだね。あんなに力があるならもうちょい胸を張っても良さそうなものだけどね……。あの毒は凄かった。 何が凄いって、あの毒で僕の腕を上げれなかったこと。守りの硬さは人間並みだけど毒とかの耐性はドラゴンぐらいだった。なのにあんなに重傷を負ったんだもの。すごいよね。
「ちなみにエリアスくん。君を操ってたのは魔王みたいだよ。洗脳っぽいのを解く寸前に君自身が言ってたし」
「魔王とか厨二病全開だよな。魔王って勇者に狙われるわ、人間に嫌われるわ、場合によっては仲間に裏切られるわ、散々だよな」
厨二具合なら僕の方が上! 邪神ってなんだよ邪神って!
………………悲しくなるから考えるの止めよう。中学二年生が厨二病でなにが悪いんだ! ……銀髪だ、格好いいだろ……………………はぁ。
「ま、魔王ですか?! そんな恐ろしい者に……よく無事でしたね…………」
「うん、まぁ対処は出来たし。
ドラゴンは倒したからギルドに戻ろうか。」
言いながらドラゴンの角や牙、逆さになっている鱗、硬い部分の皮や心臓を切り取る。勿論さっきの氷剣で。血がすごく飛ぶけど【結界】で何とかする。
…………啓太が炎剣の炎を消して鱗を剥ぎだした…………1秒前まで僕の行動にドン引きだったのに! 若いっていいね、適応能力ありすぎ! むしろ嬉々として鱗を剥かないで、ドラゴンの目を抉らないで! スプラッタ! スプラッタ!
・・・・
・・・
・・
・
「ふ、ふぅ。証拠品は充分だよね、こ、これで。じゃあギルドに帰ろうか。」
「そうですね……ケイタさんも飽きたようです。」
「鱗、売れると思うか? 」
あぁキラキライケメンスマイルが眩しい! あぁ妬ましい嫉ましい! そのイケメンスマイルが嫉ましい! 爆発しろっ、爆発だよば・く・は・つ。一度あの顔ボコってみたい。
「さぁね。売れないなら記念品だよ。
『勇者の剣』ギルドに『転移』」
おかーさん、おとーさん。僕はあのイケメンと親友でいいのか一瞬考えました。いいですね、おとーさん。イケメンで! 爆発しろっ!