086●近代装備 vs 伝統的戦闘技術
砲撃部隊からの通信が途絶したことを受け、スミスは第2陣の攻撃を命じた。
1個中隊、200人規模だ。半島の先端部近くに待機していた彼ら彼女らは、
突撃銃や障害物を除くための爆薬などを装備し、軽快に突入を開始する。
有刺鉄線も地雷もない。部隊は易々と建物に近づく。
何の防御もない。ただの民間施設だ。保養所のような佇まい。
これなら堂々と正面から侵入できてしまう。
指揮官が無防備さを、逆に警戒する。
月明りの中、最新式の暗視スコープには敵影はない。
だが、ベテランの彼の本能が、明確な危機を告げていた。
改めて周囲を見渡す。後方で兵が倒れていくのが見えた。
「敵襲だ!」
彼は叫んだ。
アキラは例によって俊敏に行動しながら、考えている。
ナオトさんが来ている。スミスを追いかけているスティーブもいる。
つまり、ここには、満月期の人狼が2人、サイボーグが2人、
メカロイドが1人、何でも治癒できる日の巫女が1人、
風変わりな科学者が1人、総勢7人が待ち構えているのだ。
ロールプレイング・ゲームで言えば、
武闘家と戦士、神官と魔法使いが揃っていることになる。
ジンは科学という術を使う魔法使いでいいが、
ココアの位置づけは武闘家か戦士か微妙だな。
エイミーも銃器が苦手だから、戦士というより武闘家か?
やっぱり俺は勇者役がいいよな。
そんなことを考えながら、中隊規模の連中を一人ずつ、昏倒させていく。
撃て!指揮官の声で発砲が始まる。
戦闘のプロである傭兵たちだ。しかし、射撃目標の移動速度についていけない。
相当数がバタバタと倒れていく。
相手からの発砲音はない。
消音銃でも音はするはずだ。
指揮官は理解できない。
かなりの遠距離からの狙撃か?
いや、こっちの銃弾が、何発かは敵に当たっているはずだ。
銃は効かないのか?
それなら、と手榴弾を投げつける。が、相手は平然と動き続ける。
いや、続けているような感じだが、
どこにいるのか、どこからくるのか、追い切れていない。
彼は密集隊形をとるよう命令を発した。
アキラ、ナオト、スティーブ、エイミーは打突で急所を狙う。
鳩尾や首筋を打たれた歴戦の強者たちが、次々と倒されていく。
ココアは拳に電撃を走らせている。
ジンは指弾を放ち続ける。
近代装備の兵団を、
接近戦での格闘技術を使う者たちが制圧しつつあった。




