017⚫️破壊神の準備が完了する
「いらっしゃいませ。」
バーテンの声は、地下室のように湿っていた。
「店主はいるか。ジュークが来たと伝えろ。」
店員は一瞬だけ顔色を変え、すぐに奥へ消えた。
やがて、慌てた足音とともに戻ってくる。
「どうぞ、お入りください。奥の部屋です。」
ブリッツは、足音もなく部屋に入った。ノックも、挨拶もない。
「おっと、やめてくださいよ。わたしは標的じゃありません。」
店主が両手を挙げる。ブリッツは、構えていたリボルバーを静かに下ろした。
「まだ、リボルバーですね?オートマチックのほうが流行ってますよ。装弾数も多い。」
「オートは信用できない。」
一言だけ返すと、彼は店主の背後に立った。
店主は、ゆっくりとアタッシュケースを開ける。
「ご依頼どおり、仕上がっています。」
ブリッツは背後を離れ、ケースの中身を確認する。
指先で触れ、目で追い、わずかな歪みも見逃さない。
「報酬は、いつものように振り込んでおく。」
それだけ言うと、彼は部屋を出た。足音は、やはり聞こえなかった。
ブリッツへの依頼に、嘘は通らない。
依頼の目的、標的の背景、依頼主の動機。
すべてが明かされなければ、彼は引き金を引かない。
今回の標的は、再び、あの少女。
依頼主は当初の方針を変えている。
誘拐し、いたぶった末に始末するという計画は捨てている。
一撃で仕留めろとブリッツに再度、命じた。
新たな銃は、さらに長距離狙撃に特化している。
プランは整った。あとは、時を待つだけだ。
変装はまだ解かない。
しかし、破壊神は、沈黙の中で、狙撃のための全てを整え終えた。




