第1章 あってはならないシステム
道を渡りながらスマホをいじっていた。今思えば、これはおそらく人生で最悪の判断だったと思う。しかし、その瞬間はスマホの画面に夢中になっていて、一瞬たりとも躊躇しなかった。「天使は悪魔の隣に住んでいる」の新エピソードが配信されたという通知が届いたばかりで、道を渡りながらコメント欄をいくつか読んでいたのだ。
あるコメントが目に留まった。「おい、主人公がついに告白したぞ。最高のラブシーンだ」と書かれていた。これを読んで、私は少し笑ってしまった。あいつは本当にラッキーだ。
一方、私の人生はまったく進展していなかった。恋人もいないし、ロマンチックな瞬間もない。寝坊して朝食を忘れたせいで、トーストを口にくわえて学校へ走っている最中に女の子とぶつかる、あの典型的なアニメのような瞬間さえもなかった。まるで誰か別の人生の背景の小道具に過ぎないような気分だった。
スマホに気を取られ、私は周りを見渡すことさえせずに道路を渡り始めた。そして、その音が聞こえた。
クラクション。とても大きなクラクションだ。私は慌てて顔を上げると、視界全体を照らすヘッドライトが目に入った。トラックだ。あまりにも近すぎるトラック。頭が真っ白になり、私は身動き一つできなかった。なぜか、時間がスローモーションになったように感じられた。
スマホが手から滑り落ち、アスファルトの路上に落ちた。まっすぐ自分に向かってくるトラックのヘッドライトを虚ろな目で凝視しながら立ち尽くしていると、突然、無数の考えが頭の中を駆け巡った。両親のこと、親友のこと、そしていつかやろうと思いながら先延ばしにしてきたことすべてが頭をよぎった。胸に奇妙な重苦しさが押し寄せてきた。
もっと良い息子になれたはずだ。
もっと良い友人になれたはずだ。
「後でやろう」と思っていたこと、「時間はあるだろう」と思っていたことが、あまりにも多すぎた。「後で」という時間は、突然、もう私には訪れないような気がした。そして、恥ずかしい話だが、もう一つの考えが頭の中に忍び込んできた。
彼女ができなかった……
マジかよ?後悔すべきことが山ほどあるのに、脳みそがこれしか思いつかないのか?ヘッドライトの光はますます強くなり、やがて視界のすべてを飲み込んでしまった。一瞬、世界が真っ白になった。そして――
「レン!!!」 ベッドで飛び起きた。
「何――」 母が隣に立っていたが、全く動じていない様子だった。
「また寝言で変なこと呟いてたわよ」
心臓がバクバクしながら、部屋を見回した。散らかった机。目覚まし時計。見慣れた寝室。道路はない。トラックもない。眩しいヘッドライトもない。「……ただの夢だったのか?」
顔をこすり、深く息を吸い込んだ。「うわ……まるで今起きたことみたいだった」
母は諦めたようなため息をついた。「学校に遅れたくないなら、今すぐ起きなさいよ」そう言うと、母は私の寝室から出て行った。
私はしばらくその場に座り込み、高鳴る心臓を落ち着かせようとした。トラックに轢かれる? いったいどんな夢なんだ? 首を振りながら立ち上がり、ベッドから足を伸ばした。その時、目の前がちらついた。
青い画面が、ただそこに浮かんでいた。私の目の真前で。私は凍りついた。
「……え?」 画面が再びちらつき、文字列がゆっくりと現れた。
[システム初期化中
ラブデバッグモード起動
ユーザーを検知]
「……何だよこりゃ――」
さらに文字が現れた。
[役割割り当て完了]
まだ夢を見ているのかと、何度か瞬きをした。一瞬、自分をはたいてみるかとも考えたが、文字通り光るスクリーンが部屋に浮かんでいるという事実を脳が処理するのに精一杯だった。そして、最後の行が表示された。
[背景キャラ#37]
私は数秒間、その文字をじっと見つめた。まだ状況を把握しようとして、少し背もたれに寄りかかった。
「背景キャラ37番?」私は頭をかいた。「うわ…これですら俺を脇役だと思ってるのか。せめて背景キャラ7番くらいにはなれたのに…」画面が再びちらついた。最初の行の下に、もう一行のテキストがゆっくりと現れた。
[物語における重要性:最小限]
私はまばたきをした。「……わかったよ。」そしてまたまばたきをした。「……もういい、これで十分だ。」画面を指差しながら、ようやく頭の中で状況が整理された。
「まず第一に、目の前のどこからともなく突然画面が現れて……その最初の行動が俺を侮辱すること?」私はゆっくりと首を振った。「一体全体、これは何なんだ?」
一瞬、脳が完全に壊れてしまったのではないかと真剣に考えた。「……まだ夢を見ているのか?」光る画面は私の目の前に浮かんだままだった。動かない。無言。まるで私の次の反応を待っているかのように。
そしてなぜか……そのことが、この状況をさらに奇妙なものにしていた。
私はしばらくそれを見つめた後、長い溜息をついた。「……わかったよ。」私は腕を組んで、それを真っ直ぐに見据えた。「で、お前は何者なんだ?」
しばらくの間、何も起こらなかった。すると、スクリーンが再びちらついた。新しい文字がゆっくりと現れた。今度は少し異なる形式で、まるで保存されていたメッセージを表示しているかのようだった。
「……冗談だろう」
こんな形で目の前に光り輝くシステム画面が突然現れるなんて、普段はサイエンス・ファンタジーアニメでしか見られない光景だ。そういうことは、たいてい主人公が死んで異世界へ転送された後に起こるものだ。ところが、私はまだパジャマ姿で自分の寝室に立っていた。
画面は私を無視して、情報を表示し続けた。
[システム情報
作成日:████/██/██
所有者からのメッセージ — 保存記録
「これを読んでいるということは、システムがついにあなたのために起動したということだ。このプログラムは、管理された環境下における恋愛物語の展開を観察し、導き、記録するために作成された。システムによって選ばれたユーザーには役割が割り当てられ、それに応じて物語の中に配置される。あなたが脇役のままでいるか……それともそれ以上の存在になるかは……すべてあなたの行動次第だ。」]
メッセージはそこで途切れた。画面はいつもの青い光に戻った。私はしばらくその場に立ち尽くし、読み終えたばかりのすべてを頭の中で整理しようとした。
「……ああ」私は額をこすった。「こんなこと、絶対に申し込んでないよ」
……こうして、ごく普通の高校生活だった私の日常は、本来なら関わるはずもなかったロマンティック・コメディへと変わり始めた……それとも、そうではなかったのだろうか?
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