表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/14

第十三話:医と記録と香の果てに

数日後、寧華は正式に拘束された。

 罪状は、香術による殺意と、妃の意識支配、術帳の不正使用。


 凌華は、すべての香術の記録を“医療記録”として公文書化した。


 「香は術でもあるけれど、医でもある。ならば私は、香を診て、香を裁く医者になる」


 その決意に、老医官は目を細めて言った。


 「おまえは父上を越えた。医術だけでなく、“記録と闇”にも切り込んだな」


 凌華は、破られた術香の封じ札を手にしていた。

 そこには、父・凌司雲の筆跡でこう記されていた。


 >《香を診る者が現れれば、闇の香も無力なり》


 父もまた、香の中に医の可能性を見ていたのだ。


 翠道が傍で問いかける。


 「これからは……どうされますか?」


 凌華は迷いなく答えた。


 「私は医者。だけど、香の裏も見られる医になる。後宮が香で沈黙するなら――私が声を取り戻す」


 風が吹き、香包がひとつ揺れた。


 その香はもう、封じの香ではない。

 命を繋ぐ香として、これからの後宮に、淡く香り立っていく。



ここまでお読みいただき、ありがとうございました。


香りが命を支配し、医がその闇を斬る――そんな後宮の物語を描きました。

第一部では、「香」と「記録」と「医術」の三つ巴が交錯する中で、

女医・凌華が自らの信念を見つけるまでを描いています。


もしこの物語が、少しでも“香るような余韻”を残せたなら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ