忘れ去られたクリスマス
色とりどりのイルミネーション。
中でも一際輝いてるのは、黄色と緑色。
それは半年前、クリスマスイブの夜。
僕と洋次は、近所の公園のベンチに腰掛け、イルミネーションを見ていた。
「なあ、テル……今日ここに来れて、良かったな。」
「そうだね~。」
洋次は純真な笑顔と、真っ直ぐな目をこちらに向けてくる。
そんな洋次を、僕はきちんと見ることができない。
何となく目のやり場に困って、ぼんやりと十時の方向に目をやると、
何組かのカップルが行き交い、この温かなイルミネーションに歓声を挙げて行く。
もちろんそのどれもが……男と、女の、カップルで、
男同士の僕らは場違いな気がして、公園の真ん中から少し離れた場所に居る。
僕は知っている。自分が女を好きになることはできないのだということ。
けれど、洋次は……そうじゃないんだ。
きっと今だって、「自然」な恋をしたいに決まってる。
「カナちゃんの事、良かったの?」
僕は今日の日まで一週間ほど我慢していた事を、つい口にしてしまった。
先日、洋次は元カノのカナちゃんと再会して、復縁しかけたと思えば、
カナちゃんの再告白に対して、洋次はきっぱりと断り、
テルと付き合っている、テルの全部が好きだ、と僕とカナちゃんの前で言った。
「良かったの、って?」
「いや……カナちゃんだって、本気で洋次のこと、また好きになったんだと思うし~。」
……何が言いたいんだ、僕は。
こんなのただの偽善だ。カナちゃんに同情する暇なんて、無かったくせに。
「だとしても、俺が今好きなのはテルだ。それは変わらんだろ!」
自己嫌悪に陥った僕を救い出すかのように、洋次は優しくそう言った。
また、洋次の顔が見られなくなって、僕はうつむく。
洋次の事を信じていいのか、不安になる時がある。
一種の慰めと、同情と……それらが友情の延長線と交差し、
洋次はそれを、「恋愛」だと思い込んでいるのではないかと、怖くなる。
けれど……洋次はこうして時折優しい言葉を掛けてくれて、
それから身体を重ねあわせてくれて……。
洋次の感情が、全て自分に向けられていると感じて、ようやく僕は安心できる。
僕の手を、洋次が掴んでいてくれる限り……
できるだけ長く、僕はこの人と一緒にいたい――。
「テル。」
「なに~?」
声を掛けられて少し横を向くと、洋次が僕の額に、微かに口づけをした。
僕は慌てて辺りを見渡した。ちょうど、誰も見ていないようだった。
赤面した僕の横顔を見つめながら、洋次は意地悪く笑って、こう言うのだ。
「メリークリスマス!」
「……もう~。」
○ ○ ○ ○ ○ ○
イルミネーションを前に、二人で並んで撮った写真には、
いつだって自信満々の洋次と、いつだって自信のない僕が対照的に写っている。
写真フォルダに入っていたそれを、いつの間にかしばらく見ていた僕は、
目から流れ落ちた雫をぬぐい、静かに息を吐いた。
本当に削除しますか?という問いに、YESと答えて、僕は携帯を閉じた。
これで、洋次との思い出とはお別れ。……はやく、忘れなくちゃ。
……さよなら、洋次――。




