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ネガティブな僕と、中二病っぽい彼。  作者: ホワイト大河
第二章 知らなくたって、いいんだよ
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オベディエント(4)


宇野はまっすぐに私の目を見ていた。

初め、私は宇野が淡白な性格なのかと勘違いしたものだったが、

時折見せる真剣な様子に、驚かされる事も多かった。

私と透様の関係の何が、そこまで彼の興味を引いたのかは知らないが、

決して冗談交じりに聞いている様子では無かった。


「透様とは生まれてからずっとこの関係です。物心がついた頃には、透様に仕えることを命じられていましたし、それが当然だと思っています」

「ふーん。……じゃーちょっと質問を変えようじゃん」


そう言いながら、宇野は横に立つ上川の背中を掴んだ。

日頃しないであろうその行動に驚きつつ、上川は宇野の横顔を見つめる。


「ハッ!何だね宇野君」

「神様もかなりの自信家でナルシストじゃね?」

「ハッ!最近の君は、神に無礼すぎるぞ!」

「でも、渡くんってその上を行くじゃん。正直神様程度でもうっとうしいのに、四六時中そんなんと一緒に居て耐えられんの?」

「ハッ!神様すごい傷ついたわ」

「うのぽんもうやめて下さい!神様のHPはゼロですよ?」


落合や上川が居るおかげで、少し冗談交じりにはなったものの、

私に尋ねてきた問いの本質は恐らく変わっていない。

一緒に居て耐えられるか、という質問の答えだが、

私は耐えられる、としか言いようがない。そうしてずっと生きてきたからだ。

しかしそれでは先ほどと何ら答えが変わらないので、考えあぐねていると、

宇野が少し迷いつつも、核心をついてきた。


「ずっと束縛されたままじゃん。ふつー、自分の時間も必要じゃね?」


そこまで聞いてくるかと、意外な気持ちは抱いたものの、

その答えは割と簡単に、自分の中でまとめることが出来た。

三人の目線が集中する中で、私はゆっくりと答える――。



  ○   ○   ○   ○   ○   ○



佐久馬氷紀は一通りの質問に答えると、食器を持って席を立った。

それからその場に残された三人が、思い思いにつぶやく。


「……やっぱり佐久馬さん、しっかりしてらっしゃいますね……」

「ハッ!あれくらいの男でなければ、渡のお付きは務まらんという事だ。」

「そうですね……それにしても、うのぽんは何であんな事を聞いたんですか?」

「いや別にー。ただちょっと気になっただけじゃん。」

「ハッ!やはり君は優しいな。佐久馬を渡から解放してあげたいのか?」

「そーいうわけじゃないよ。『誰かに従属する自分』ってのも、一つのあり方だと思うし、人のあり方まで干渉する権利は俺にはないじゃん。」


三人の小声での会話が聞こえない距離から、佐久馬が一度頭を下げて、

彼らの横を通り過ぎて、食堂を出ていく。

それと入れ替わるようにして、汗をかいてタオルを首にかけた男が、

慌ただしく食堂に駆け込んできて、佐久馬の座っていた席に座る。


「ごめん!もしかして待たせたかな?」

「あ、慎悟くんお疲れ様ですー……」

「今日もサッカー長引いちゃって……あ、とりあえず食券出してくるわ!」


慌ただしく頭を掻く石川慎悟は、人が変わったように明るい笑顔で、

それを見ている方が笑顔になるほどだった。


「ハッ!石川君は過去を清算して、随分と変わったものだな。」

「個人の自由だけど、慎悟君は絶対『明るい自分』の方が似合うんじゃね?」

「え、何の話?まあいいや、ちょっと行ってくるから!」


石川は荷物を置いて、食堂のカウンターへと向かう。

同じ寮の中でも、寮生それぞれの性格は全然違っていて、

ただそれぞれ違う色ではあるが、色濃く輝いている――。



  ○   ○   ○   ○   ○   ○



恐らく、それぞれの生徒が持つ輝きの中でも、

最も濃い光を発信している集団が、ここに集っている。

私は持参したノートパソコンに、昨日得た情報をまとめつつ、

ここに揃った他五人の生徒たちに、その全てを伝えた。


「だとしたら渡君、人気投票とか、選挙とか、そういう場面で織田君に勝てるんじゃないの?」


声を発した彼女の方を見ると、カーテンの隙間から指した朝日に視界を奪われ、一瞬その光が彼女自身から発せられているのではないかと、私は錯覚した。

小さいころから子役として様々な劇団、ドラマで活躍している、

通称『演劇の女王』、隠岐真奈美(おきまなみ)

彼女の好奇心いっぱいの瞳は、隣の図体の大きな男に向けられた。


「ねえ六道君、あなた同じクラスなんでしょ?やっぱり織田君って、避けられてるって本当なの?」

「……そこまででも無いが、少し距離を置かれているのは事実だ。落合や長瀬以外には、話しかける輩も居ない。」


六道斬太郎(ろくどうざんたろう)。竹刀を持たせたら文字通り日本一の、

剣道高校生王者は、確かに相手を戦意喪失させるほどの図体と、

身体中からあふれ出る程の気迫が、少し離れて座る私にまで伝ってきた。


「嫌悪されて当然だろう。奇跡は起きないからこそ奇跡……いつだって歴史は、人間の枠を飛び越えようとした奇跡を、見えないものとして封じた――」


分厚い本をめくる小柄な彼は、文芸雑誌に長期連載作品を持つ、

高校生新鋭小説家、御堂武(みどうたける)

彼ら三人の討論を一通り聞いていた透様が、重たい口を開いた。


「……しかし、織田直樹が負け舞台にのこのこ現れるとは思えないね。だからこそ、自然体の彼を倒す決定打が欲しいが……それはともかくとして、情報を集めてくれて感謝しているよ、氷紀」

「かたじけなく御座います」


ここに揃った五人こそが、「GS(Great Students)」なる特別特待生であり、

全員が一年五組に所属し、他クラスを圧倒して勝者であり続けた。

……二年に進級する際に、私と透様以外は見事バラバラのクラスに所属し、

もはやあの五組は伝説となり、過去の栄冠である事に違いはないのだが。

最も、特別特待生の起用に味を占めた今年度のBL学園は、

大量に特待生を誘致し、特待生クラス一年七組を作ったのは別の話である。


「僕がまだ執行部でも目立った活躍をしていないというのに、これまで通り僕について来てくれることに感謝せざるを得ないよ。真奈美、斬太郎、武、氷紀、それから……総悟も」

「何言ってるの渡君!私たち中学からずっと一緒でしょう!」

「そういえば舞空は今日も姿を見せんが?」

「海外研修と聞く。僕も自由気ままに世界を飛び回りたいものだ――」


名前の挙がった舞空総悟(まいくうそうご)は、特別特待生の枠ではないものの、

我々五人とは中学生活を共にした隔たりの無い仲間であり、

際立った学力を活かして、入試一位の通常特待生としてここに入学している。


六人の結びつきは強い。お互い違う分野ながら、切磋琢磨して成長する。

だからこそ、透様が自分の事を相談できるのはこの五人の前だけなのだ。


「渡君が日本のトップに立つまで、勝ち続けるのを私は見たいの!みんなもそうでしょう?」

「ああ……きっと『イザナギ』もみんなそう思っているぞ」

「今でも思い出す、あの様々に閃く虹の光の強さを――」


「そうだね。『イザナギ』に恥じぬよう……彼らのためにも、僕は織田直樹に、『奇跡の子』に勝たなければならないね」


透様はそう言い切った。『奇跡の子』の話を前から知っていたようだったが、

それはやはり『イザナギ』時代に聞いた情報らしい。

私が詳しく聞こうとしたその時、透様がこちらを見て微笑した。

分かっている、だからこれから話すのだ、と言わんばかりに。


「今だからこそ君たちに話そう。我々がバルガクにやってくる事になったのは、他でもない、『奇跡の子』の存在があったからなんだ」


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