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ネガティブな僕と、中二病っぽい彼。  作者: ホワイト大河
第一章 変わること、変わらないこと
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俺の嫌いなお節介野郎(5)

それは偶然から起こった出来事だった。

あの時、達也との再会を果たしたのと同様に、

帰り際、僕が廊下を曲がった時、ある男と再会を果たしたんだ。


「うおっ!悪い!」

「あ、すみません……え……」


思わず僕は固まってしまった。

体格も良くなって、精悍な顔つきになってはいたけど、

見間違いようもない、見覚えのある顔。忘れるわけないよね?

そしてぶつかった相手もすぐ、気が付いた。


「……慎悟?おい、慎悟なのか?」

「……うん……洋次だよね。久しぶり……」


洋次はすぐに僕を上から下まで観察した。

どうやらバルガクの制服を着ている僕が、まだ信じられないみたいだ。


「やっぱり慎悟か!いや、何でここに?ってか言ってくれよ!」

「ごめんね、なかなか探す機会がなくて……今月、転校して来たんだ。」

「へえ、そうなのか!いやー驚いたわ。」


まだ春なのに、少し汗をかいている洋次。

汗をぬぐう姿は、昔を思い出す。やっぱり洋次も、変わっていなかった。


「そういや、『新入生歓迎会』で見たと思うけど、テルと達也がバンドやってるの知ってるよな?」

「……ああ、うん……今度ライブ行くよ。」


目まぐるしく話題が変わって、ついて行くのにちょっと必死だった。

だけど、ライブの話は良助からもう聞いていたから分かった。

……今日は良助が先に帰っていて良かったとちょっと思う。

そうだよね?もしもここに居たら、洋次と鉢合わせになっていたのだから。


「そうか!俺も行くから、じゃあまた明後日の土曜日にな!」

「……あ、そうだね……」


汗をかいている様子からも、どうやら急いでいるらしく、

そのまま洋次は僕の横を通り過ぎて、多分教室の方へ向かった。

だけど、僕も歩き出そうとしたその瞬間に、洋次の足音が止まった。

何かと思って振り返ると、少し変な笑い方をしながら僕を見ていた。


「なあ、良助にはもう会ったのか?」

「うん……同じクラスだし、話すようになったよ……」

「……そうか。すまん、何でもないわ。またな!」


洋次は質問の意味を説明する事もなく、階段を上がっていった。

だけど、僕にはその意味がよく分かっていた。

僕と良助が、「過去の清算」なく会話できるはずもない事を、

僕らのことを良く知っている洋次ならば少し考えれば分かることだ。

……洋次が少し見せた意味深な表情が、質問の意味を物語っていたんだ。


僕は前を向いて歩き出した。例のライブは明後日だ。

そこに、達也とテルが出演して、洋次と良助、それから僕がそれを見る。

……全員が初めて一堂に会する。

何も起こらないはず、ないよね――?



  ○   ○   ○   ○   ○   ○



金曜日、祝日の昼。僕は寮の食堂が混むのを避けて、少し遅めに行った。

生徒は少なかったが、その中に落合の姿があって、

目が合ったので、僕はその隣に座る事にした。


「……どうも……慎悟くん、昼ご飯少し遅いですね。」

「いや……まあ……落合こそ遅いよ?」

「ああ、僕は午前中部活だったもので……」

「あれ……何部だったっけ……?」

「一応、野球部のベンチを温める役をやっています★」

「……うん、なんか大変そうだね……」


落合は満面の笑みだけど、悲痛な様子を感じる。

それから落合に続いて、僕もカレーライスを食べ始めた。

野球をやっている落合は大盛りで、僕は少なめにしてもらった。


「あの、聞いていいのか分からないんですが……慎悟君は、部活には入らないんですか?」

「ああ……まだ学校に慣れてないしね。仮入部期間は過ぎちゃったけど、ちょっと色々と気にはなるかな……」

「運動部ですか?文化部ですか?あ、色々根掘り葉掘り聞いてすみません……」

「大丈夫だよ……運動部かな……活躍できる気がしないけど……」

「そうなんですか。それはそれで体格良くないと辛くないですよね……脇坂君とかなら、体格も良いし水泳部でバリバリ活躍されてますが……」


平均身長に少し届かないくらいの落合は、ガッチリした体つきではないから、

一般的な野球部の男子には確かに劣ってしまうかもしれない。


「そういえば洋次君も、陸上部で引き締まった筋肉をされてるみたいですね……、あ、変な意味ないですよ!観察してるとかじゃなくて……」

「……確かにあの二人が運動部で、達也とテルが文化部なのは納得かな……」

「あ、でも……身体に自信なくても、神様みたいに卓球部とかなら良いかも。」

「うーん……その辺は、もう少し考えてみるよ……」


今すぐ部活を決める必要なんてないし、何なら帰宅部だって良い。

僕はカレーをゆっくり食べながら、色々と考えてみた。

すると落合が、少し迷った後でこう言った。


「あの……色々大変ですよね。なんか慎悟君の幼なじみって……何というか皆さん奇抜と言いますか……」

「……そうかな?今の僕には、まだよく分からないけど……」

「いや、言葉にするのが難しいですけど……やっぱり独特ですよね。」


落合は、達也の影響かは分からないが、他の三人とも接点があったらしく、

上川や宇野と比べても、よく幼なじみたちの事を見ているようだった。

幼なじみという輪の外から見た僕たちが、

客観的にどんな風に見えているのか、ちょっと気にはなった。

落合は僕の知らない幼なじみの顔を知ってるのかもしれないし、

僕と違った目線で見た幼なじみは、全く異なる人物なのかもしれない。


だけど……達也と相談して。良助と話して。洋次とも再会して。

まだテルには会ってないけど、予想はつくよね?


「独特かどうかは分からない……けど、変わってないよ。みんなあの頃のまま、体が大人に近づいても、心は子供のまま……。」

「……慎悟くん?」

「それは、僕が変わってないからなのかもね……」


変わってない。それは良い事であり、悪い事でもあった。

僕は食べ終わったカレーの食器を手に立ち上がり、

落合の視線を浴びながら、食器を片づけて食堂を出た――。




部屋に上川が居なかったので、またあの宝箱を取り出した。

電池が切れかかっている古い携帯の、メールボックス。

返信マークが一つもついていない、良助からのたくさんのメール。

……僕はこれに一度でも返信すれば、変われたのかな?


達也は変わったと思う。

前は、人の変化に気づける人間では無かった。

僕の複雑な過去に、気を遣いながら話せる人間では無かった。

転校生が作ったと噂の軽音楽部に入るような人間では無かった。

でもそれは、「成長」ともいえるべき変化だと思うんだ。


僕はまだ足を踏み出せない。

良助が話しかけてくれる事に、甘えているだけなんだ。

そんな僕を見て、洋次は何を思ったのだろう。

みんなのリーダー洋次。僕の味方をしてくれた良助。

二人がぶつかったら、それが「成長」につながっていくのかな――?


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