表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネガティブな僕と、中二病っぽい彼。  作者: ホワイト大河
第一章 変わること、変わらないこと
44/155

俺の嫌いなお節介野郎(4)

泳ぎ切って、着替えの最中に携帯を見ると、達也から着信があった。

そういえば久しぶりだな。しばらく電話はしてない気がした。

すっかり暗くなって、家に帰ってから、俺は達也にかけ直した。


『よう良助。水泳の途中だったっけか?』

「さっき終わった。もう大丈夫だ。」

『そうか……』

「それで、用は何だ。」


達也が電話してくるのは用がある時だ。

あまり雑談というものをわざわざ電話ではしないから、

冷たい言い方かもしれないが、俺は率直に要件を聞いた。


『ああ、昼に言ってた事が気になったもんでな……』


だいたい予想はついていた。

達也の前で、洋次との仲の事なんて口にしたことは無かった。

仲良しこよしが続いていると思っていた達也は、きっと驚いただろう。

正直、達也には純粋なままでいて欲しかった自分も居るが、

慎悟の件も知ったようだし、隠し事をするのはやめにするか。


『慎悟も言ってたんだが、やっぱり洋次と……仲悪いのか?』

「まあな。幼なじみと言えども、五人も居れば合わない奴も居るだろ。」


達也は知らないだろうが、テルだって達也の事は苦手に思っているようだ。

みんな仲良しで居られない事なんて、何ら特別な事じゃない。


『そうか……やっぱり、慎悟の件が関係してるのか?』

「元々、みんなのリーダーを気取っていた時から気には食わなかったがな。」

『……まあ、でも洋次は洋次だからな。』


「その洋次が嫌いなんだ。あいつのやってる事はただの自己満足だろ。」



達也は「そうか」と言って、しばらく絶句してしまったので、

言い過ぎたか?と少し反省した。

洋次の事が憎いことなんて、達也に気軽に言うべき話題では無いよな。


何でもできるって思い込んで、慎悟のクラスに無理矢理乗り込んで、

クラス全員から白い目を浴びてなお、引かなかったあいつは、

慎悟へのイジメが加速して、慎悟が登校拒否になってからも、

「慎悟を救う」だの言って、単純に心配してた俺と一緒になって、

慎悟の家に何度も押しかけようとしたわけだ。


最後には、慎悟の母さんから怒られる始末だ。

俺は泣く泣く諦めた一方で、あいつは食い下がらなかったし、

慎悟の転校が決まって、俺たちから完全に離れてしまっても、

洋次はその性格を変えなかった。

慎悟が転校したのも、洋次が慎悟の家に行き続けたからだとさえ思う。

落ち込んでる俺の前で、相変わらずヘラヘラしていた洋次。

……許せるわけ、無いだろ。


「そんな奴に、慎悟の大事な問題を相談しようと思った自分にも腹が立つよ。俺の中だけでしまっておけば、傷つくのは俺一人で済んだかもしれないな。」

『……クラス全体でのイジメなんて、一人で解決できるような問題じゃないぜ。慎悟が良助に相談したのも、良助が洋次に相談したのも、間違ってなかったと思うけどな……俺は何も出来なかったけどよ、まったく。』


俺たちの電話にしては珍しく、お互いに自分の思いを語った。

それにしても空気の読めなかった達也が、慎悟の異変を感じ取って、

過去の問題にまで気が付いて、俺たちを再び繋いだことには驚かされた。

……多少やり方が強引だったのは、達也らしいといえば達也らしいがな。

達也だからこそ、こんな風に言い出すのも驚きはなかった。


『洋次ともちゃんと話し合ったらどうだ?……慎悟が帰ってきた今なら、もしかしたら分かり合えるかも』

「それはない。悪いが俺から見た洋次は、話の通じる相手じゃないんだ。」


俺はそう言い切った。そこに迷いはなかった。

話したとしても、あいつの決めた正義に、全てが押しつぶされるだけだ。


『そうか……ま、無理にとは言わないが……』

「悪いな。慎悟とは仲良くやるよ。それで勘弁してくれ。」


達也は納得はいってないようだが、いくら達也の頼みでも、

俺が最も憎むお節介野郎と会ってやるほどの義理はない。

洋次の手の届く範囲から逃げた俺が、今さら戻りたくもない。

少し間を置いて、達也が言った。


『じゃあ……話は変わるが、俺とテルが軽音に入ってるのは知ってるよな?』

「そうだったな。それがどうした。」

『ゴールデンウィークの……えーっと土曜に、ライブに出ることになったもんでな……ま、恥をさらすだけなんだが。』

「そうか。」

『テルも出る事だし、よかったら良助も見に来ないか?もちろん、慎悟も誘ってくれて構わんぞ。』


……話が変わっていないぞ、達也。

テルが出るライブに、洋次が顔を出さないわけがない。

また強引に、俺と洋次を近づける作戦でも立てているのか?

達也のこういう所を見ると、やはり純粋で、変わってないと思い知る。

だが、それは別として、軽音の活動は見てみたいな。


「分かった。慎悟も誘って、行くわ。」

『おし、分かった。……まあ色々話したが、俺は色々と上手く行くことを願ってるよ。』

「そうか。まあ出来る限り努力はするよ。」

『それでこそ良助だな……お前そろそろ夕飯だろ?じゃ、またな。』


時計の短針が九時に近づいている。脇坂家の遅めの夕食だ。

達也がそれを察して、携帯を切った。

何だか珍しく、長時間話していたような気がする。

ふうと一息ついてから、ベッドから立とうとした時、また携帯が光った。

どうやら着信のようで、今度はテルからの電話だった。


『やっと出た~。誰かと話してたの~?』


さっきの達也の真面目な様子とうってかわって、

テルの、いつも通りなのんきな声が電話越しに聞こえてきた。


「ああ、達也と電話していてな。」

『そうなんだ~。』

「また洋次と転校生の鈴木が仲良くしてた悩みか。」

『……まあそんなとこ~。』


これから夕飯なんだがな。


『土曜は洋次と一緒になったんだけどね~。なんか鈴木さんの事、聞けなかったし、洋次も何も言わなかったよ~。』

「そうだろうな。自分から言う話でもないだろ。」

『そうなんだけどさ~。』

「悪いがそろそろ夕飯なんだ。切り上げても良いか。」

『あ、ごめんね~。……ところで良助さ~。』


切り上げるって言ったんだがな。

テルはこういう奴だから、今さら何とも思わないが。


『なんか、決着をつけなければならないとか言ってたけど、解決したの~?』



……そういえば、思わずテルにそんな事を口走った記憶はあった。

そうだな。慎悟、達也、洋次。それぞれの顔を思い浮かべながら俺は答える。


「俺は解決したと思いたいが、そうでもないらしいな。」

『何それ~?』

「いや、大した話じゃない。とりあえず、またな。」


俺は半ば強引に電話を切った。

とぼけたテルはどうやら慎悟の存在に気づいていないらしい。

元々慎悟に対して興味のない奴だから、このままでいいと思うし、

むしろ知られたら、結果的に洋次にまで知られるわけであって、

できれば洋次には慎悟に近づいてもらいたくないという、

わがままで、どうしようもない気持ちが俺にはあった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ