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ネガティブな僕と、中二病っぽい彼。  作者: ホワイト大河
第一章 変わること、変わらないこと
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俺の嫌いなお節介野郎(1)

静まり返った、夜の公園。

僕は、あのブランコに乗ってみた。

よく洋次や達也は、これに乗って話してたんだっけ。

それから、ジャングルジムに上った。

少し体も大きくなったから、すぐに上までたどり着いたよ。

あの頃、隣に居たのは良助。……今は隣に、良助は居ない。


僕はイジメられていた事、一生懸命隠したんだけど、

やっぱり良助には、すぐに見抜かれてしまった。



「お前、イジメられてんだろ。」

「……え……」

「隠さなくても良い。無理してんの、分かってる。」


その頃はまだ小突く程度のイジメだったんだ。

それでも、良助はこの事を深刻にとらえていた。

僕の前ではそれを隠して、優しく肩を掴んで言ったっけ。


「ずっと笑ってろよ。イジメなんて下らない事、はね返しちまえよ。」

「……うん……良助、いつもありがとね。」


そう言って、無理に作り笑顔をした僕の肩を、

良助は優しくなでてくれたんだよね?

今はその温もりを忘れてしまったけど、嬉しかったよ――。



  ○   ○   ○   ○   ○   ○



寮に帰った僕は、部屋に上川が戻って来てない事を確認してから、

机の奥の宝箱を取り出して、古い携帯を手に取った。

充電してるから、電源はつく。僕が中学生まで、使っていた携帯電話なんだ。


もうメールのやり取りは出来ないんだけど、メールBOXを開いて、

中学の少ない友達からのメールではなくて、大切なフォルダを開けた。


そこには、たくさん……あの事件の日、そして転校が決まってからも、

ずっと良助が送り続けてくれていた、メールが保存してあった。


「話がしたい 返事をくれ」

「今日は達也と遊んだ 大したことはしてないけど」

「中学校は楽しいか?」

「洋次の野郎が気に入らん」

「水泳部に入ったんだが、スイミングスクールの方がきつかったぜ」

「俺たちは四人全員 BL学園(バルガク)に通う事になった 腐れ縁だな」


最初はほとんど毎日。

それから徐々に減っていって、一番最後は中三の終わり。

だから僕は、幼なじみたちと離れていながら、すぐ近くに居るような、

そんな気持ちを、ずっと感じることが出来たんだよ。


だけど、僕は……一度も、返事を書けなかった。

今さら僕が、どんな顔をして書けばいいかなんて分からなかった。

だって迷惑をかけたのは僕なんだよ?

それこそ、良助のメールから痛いほど気持ちが伝わって来て、

……何にも、書けなかったんだ。


そして、高校に入ってからは、メールは一通も来なくなった。

きっと良助も諦めたんだと思う。

ずっと返事が来ない相手になんて、書く必要ないよね?

それから僕は、幼なじみたちとの距離を、急に感じるようになったんだ。


高校の友達と話していても、表面的な話しか出来ないし、

あの時ほど仲の良い友達を作ることは出来なかった。

結局、両親の目が厳しかったから、自由に遊べなかったし、

「家で一人でいる事」を命令されていたから、一人で遊ぶしかなかった。


……だから、高一の終わりに、初めて両親と戦った。


「僕、転校する」なんて言った時の、二人の顔は忘れられない。

すごい剣幕で止められたんだよ?もちろん、分かってたけどね。

だから、両親と仲の悪い、お婆ちゃんに協力してもらった。

僕は家を飛び出して、十キロ以上離れたお婆ちゃんちに自転車で行って、

大人になったらお金を返す事を約束して、学費を払ってもらった。


見覚えのある場所に、こうして戻ってこれたのは、お婆ちゃんのおかげだし、

……良助の、おかげでもあるんだ。

久しぶりに立ったこの場所に、あんまり違和感を感じなかった。

すごく嬉しかった。あの家に居る時より、ずっとずっと。


だけど、そう簡単に問題は上手くいかなかった。

良助、洋次、達也にテル。彼らに合わす顔が無いじゃないか。

飛び出してきた事に後悔は無かったよ?

でも、勢いで出てきたって事に言い訳は出来ないんだ。


バルガクに二年生で入って、驚いたのは良助と同じクラスだった事だね。

背が高くて、大人っぽい所も、全然変わってなかったんだけど、

一度も声は掛けられなかったし、向こうからも掛けてこなかった。

……せっかく会えたのに、平行線って辛いよね?

だけど、それを変える方法を、僕は知らなかったんだよ。



そうしてぼんやりしている内に、上川が部屋に戻って来たから、

僕は身辺整理をするふりして、こっそり携帯を机の奥底に隠した。

それから、またベッドに横になる。

……今日は、楽しかったあの頃の夢が見れるのかな?


「ハッ!……石川君、消すぞ。」


上川の呼び掛けには背を向けて、僕が目を閉じていると、

部屋も真っ暗になって、体中が闇に包まれた。

何も見えない暗闇の中で、みんなの笑顔が浮かび、

その先頭で、良助は僕に手を差し伸べてくれる――。


現実は、そんなに甘くはないんだよ?

そんな事くらい、分かってる。

誰も悪くないのに、どうしたらいいか分からないなんてさ。



  ○   ○   ○   ○   ○   ○



授業が終わって昼休み。良助はまだ寝てるみたいだ。

僕はまた一人、さっき買ったパンの袋を開ける。

今日は水曜日。もう少ししたらゴールデンウィークだ。

寮に一人でこもってるのも面倒だし、どこか遠くへ行ってみようかな?



「よう慎悟。元気か?」


教室の入り口から、そんな声がした。そこには達也が立っていた。

達也と会うのは、この前二人で話した時以来だ。

……そういえば、感情に任せてひどい事を言ってしまった気がする。

また一人、親友を失ったかもしれないと、怖かったんだけどね。


僕が言葉を選んでいると、達也はずかずかと教室に入って来て、

僕の席を素通りして、一番奥まで走って行った。

ちょっと待ってよ……何をするつもりなの?


達也が、寝ていた「彼」を叩き置きして、引っ張って来る。

今すぐに立ち上がれば逃げられる。でも足が動かない。

いや、逃げちゃダメなんだ。何ですぐ逃げようとするんだろう?

いつかこの日が来るかもしれないと思ってた。

だけど、来ないかもしれなかったし、今日だとは思ってなかった。


――達也は「彼」を……良助を、僕の横に連れて来た。

良助は無言で、少し慌てているように見えた。

僕は何も言わなかった。言えなかった。心臓の鼓動が早まるばかりだ。

すると、達也が満面の笑みで、こう言ったんだ。


「よし、三人で昼飯食うぞ。」


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