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ネガティブな僕と、中二病っぽい彼。  作者: ホワイト大河
第一章 変わること、変わらないこと
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五年前の衝撃(2)

ギターを背負って、朝早く家を出る。

……ちょっと前までの俺には考えられねえぜ。まったく。


ギターってのは不思議なもので、弾けば弾くほど俺の指に馴染んでくるし、

練習を重ねれば重ねる程、上手く手と指が動くようになる。

歩きながら、ふとコードを思い出して左手を動かしたりなんかして、

俺も染まってるなーなんて、一人で苦笑した。

……これから、楽しい楽しい朝練だ。



が、まったく集中できない。

シンゴの事、俺の知らない間に何があったんだとか、

他の連中は知ってるのかなとか、色んな事を考えてしまって、

練習に全く身が入らなかった。


テルが買ってきてくれた新しい曲のコード進行を少しずつ覚えていって、

この朝練で音にしてみてチェックする。

そんな簡単な事なのに、それをしなければみんなに追いつけないってのに、

俺の指は雑に弦を押さえ、もう片手はだらしなく動いている。


「あれー、タツヤどうしたー?」


すぐに俺の異変に気付いたタダシが、俺の表情を覗き込んでくる。

意識が飛びかけていた俺は、その声でハッと我に返った。

……頭と体が別々に動くなんてよくあるもんだ。まったく。


「……ちょっとした寝不足でな。別に問題ない。」

「なら良いんだけどさー、無理すんなしー!」


今日が合わせ練じゃなくて本当に良かった。

こんなボーッとした状態でついていけるはずがないわな。

いつも極限まで集中しなければキツいというのに。


ところで、ついこの間から野上の雰囲気が少し変わった。

たまにキョロキョロ全体の様子をうかがう以外は、

基本的に自分の楽器の練習に勤しんでいた奴であったが、

何やらテルに興味を示したらしく、話しかける回数が目に見えて増えた。



「……ねえテル君、普段なにしてるのお?」

「別に何もしてないよ~。」

「お出かけとか、しないのお?」

「そんなにしないかな~。」


……正直、去年の夏までは、テルはふわっとした性格のやつで、

いつものんびり生きてるんだろうなんて勝手に思っていたものだが、

ヨウジとトラブルを起こしていて、それに俺が踏み込みすぎた時には、

その優しい仮面がはがれて、現実的で冷静な本性が垣間見えたっけ……。


だから、テルは今もふんわり応答しているように見えるが、

傍から見てもしつこい野上の追求を、のらりくらりと逃げているのが分かる。

しかしこうなってくると、シンゴの事も俺はちゃんと分かっていないようで、

やっぱり本質の理解無く分かったつもりになる事は迷惑でしかないのだろうと、

改めて思うと同時に、昨日の綿華の言葉が思い出された。

……まああいつらが調べて解決してくれるのを待つとするか。


結局今日の朝練は身が入らないまま、その場で解散となった。

部室を出る時に野上が何かを考えながら早足で出ていったのが気になったが、

それも他人の問題だから首を突っ込むべきじゃないんだろうな、と思いつつ、

悩みとは無縁なナオキと肩を並べて、ホームルームへと戻って行く。




―のがみんの脳内―

さっすがテル君!ガードが堅いって!チッキショー!

いつか必ず、洋次君との淫らな関係を、白日のもとに暴いてやるんだからあ!

ところでのがみんを応援するためにのがみん募金に協力お願いします❤




「タツヤ、何でよく寝れなかったんだ?」


こういう時「奇跡の子」とか何やらは非常に面倒だ。

ナオキは、さっきのタダシとの会話を聞きつけて、

普通なら無視する細かい疑問を、俺に直接ぶつけてきやがる。


「……良いかナオキ。嘘も方便と言ってだな……」

「何で嘘つく必要がある?」

「……いや、あんまり関係ない話をしても困るだろ?」

「そういうものか?」

「そういうもんだ。」


疑問に思った事は全部解決したいんだろう。

しかしこの世には、解決できない疑問もあるんだぜ?

……いや、奇跡の頭脳ならば解決できるかもしれないけどな。


それから俺たちは二年三組の教室に着いて、

何となくそわそわ不安そうにしているコウタの席に近づき、

二人して後ろから声を掛けた。


「ようコウタ。」

「よく眠れた?」

「あ、おはようございます……ね、眠れましたけど、何でナオキ君っていつも眠れたかどうか聞くんですか?」

「それが定番の挨拶だと思うからだ。」


ナオキは自信満々に返した。無駄なイケメンスマイル付きで。

心が分からない、空気が読めないってのは、やっぱり気楽で良さそうだな。


「そ、そうですか……えーっと……」

「コウタこそ、俺に何か質問してきてすぐに言葉に詰まるのは何でだ?」

「えっ!……あ……それはその……僕の頭が悪いからだと……」


……こんな風に、振り回される周りは大変だけどな。


「まあそう言ってやるなナオキ。コウタだって、ってか普通の人間は、咄嗟に次の言葉が浮かばないもんなんだよ。」

「そういうものか。」


納得してイケメンスマイル。だんだんこいつがロボットに思えてきたぞ。

そのままナオキはコウタの前の席に座って、カバンを開け始めた。

恐らくナチュラルに会話から抜けて、自分の時間に入ったと思われるので、

そういうのはあまり追求せずに放っておくことにしている。


俺も最近、自分が鈍感で空気を読めないと気づいたものだが、

やはりナオキのそれは度を超えてると思うぜ……。


「……た、タツヤさん……軽音楽部は順調ですか?」


コウタが目を反らしながら聞いてきた。

……ひょんなことから俺は知ってしまったのだが、

どうやらコウタは俺に気があるらしく、俺に話すときは緊張するようだ。

だからと言って俺たちの関係が大きく変わるって事は無いがな。

……ツヨシ(うのぽん)に言われた言葉をそのまま借りた。


まあ密かに嫌われてるより、ずいぶんマシだと思おうぜ?

俺の行動に合わせて一喜一憂するコウタ、結構面白いんだぜ?

恒太が一生懸命絞り出した質問に答えておいてやろうじゃないか。


「まあな。だが、昨日ちょっと色々あったせいでな、あまり練習に集中できなかったわけだ……」

「……えーっと……シンゴさんの事ですよね……」

「ん?何でコウタが知って……神様から聞いたのか。」

「あはは……その通りです。僕も最近石川君と少し話す機会があったので、彼が同級生で、しかもタツヤさんの幼なじみだって聞いて驚きました……。」


寮生であるシンゴは、いつの間にかコウタとも接点があったらしい。

そして、コウタの反応を見るに、やはり客観的に見ても、

シンゴの態度にはどこか不自然なものが感じ取れるようだ。

……昔はそんな奴じゃなかったと思うんだがな。


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