表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネガティブな僕と、中二病っぽい彼。  作者: ホワイト大河
第一章 変わること、変わらないこと
31/155

五年前の衝撃(1)

良い子のみんな、元気か?長瀬達也だ。そして俺はまあまあ元気だ。

色々と言いたいことはあるが、とりあえず、

俺は、この目の前の状況に、結構衝撃を受けている。



「……ハッ!まさか君が慎悟君、だったとはな。」

「え、何か?……そんな風に言われる覚えはないけど……」


俺よりも白くて細い身体に、頼りなさげなその目。

……その男は、『五年前』のシンゴと何も変わっていなかった。

懐かしいシンゴに向かって、俺は問い掛ける。


「どうしたんだよシンゴ?こっちに戻ってくることになったのか?」

「あ、いや……俺、寮から通っててさ……」

「へえ……しかし、驚いたな……」


「ねえたっちゃん。あたし訳分かんなくなってきたんだけど、やっぱり幼なじみって五人セットだったわけ?」


腕を組んだ綿華が聞いてくる。

五人セットなんて話、したか?と思いながら、俺は答えた。


「ああ、俺、リョウスケ、テル、ヨウジ、それからシンゴの五人だ。ただ、シンゴは小六の終わりごろ転校しちまって、会えなくなったんだよな……」

「…………」

「なあシンゴ、お前二年五組に居るんなら、リョウスケと一緒だろ?あいつ、何も言ってなかったぞ……まったく、薄情な奴だぜ。」

「……もしかしたら、気づいてないのかもね。」

「は?」


シンゴは何を見るでもなく、どこか遠くを見ていた。

遠くでは夕陽が沈み始めていた。


「ほら、リョウスケ……寝てること多いし、自己紹介の時もぼんやりしてたみたいだから……」

「いや、いくらなんでも俺がすぐ気づいたんだから、シンゴと仲良かったリョウスケなら、お前の事すぐ気づくだろ。何言ってんだ?」


そんな俺の軽い問いかけに答える事もなく、

またシンゴはどこか遠くを見つめた。……ったく、どうしたんだ?

俺たち二人の世界に痺れを切らした綿華が、

いつの間にか近づいていた俺とシンゴの肩を順番に叩いた。


「お二人さん、盛り上がってるとこ悪いんだけど、そろそろ下校時刻になっちゃうから、さっさと帰りましょ?」

「……ああ、そうだな。」

「……じゃあ僕、ちょっと寄りたいところあるから、先に帰るよ……」


そう言ったと同時に、シンゴは俺たちの制止もきかず走り出した。

か細い身体に、重そうなバッグが大きく揺れている。

……シンゴの様子に違和感を覚えたのは、俺だけではなかったようだ。


「ハッ!……石川君、何かを隠してるようではないか。」

「そうね。何か怪しいわ、彼。」

「……そうだな、そんな奴じゃなかったと思うんだけどな……」


もう小さくなったシンゴの背中を、俺は呆然と見送るしかなかった。

……まあ、よく分からないが、リョウスケにでも聞けば分かるかな?

そう思った瞬間に、神様が肩に手を置いた。今日はよく肩を叩かれる日だ。


「ハッ!まさかとは思うが、脇坂君に何か聞くつもりではあるまいな?」

「え?……もちろん、そのつもりだが。」

「ちょっとたっちゃん。シンゴ君は明らかにワッキー(脇坂)の事、なんか隠してたでしょ?ワッキーの方だってたっちゃんに何も言って来てないんだし、そこは何か意図があるんじゃない?」

「……意図ねえ。」


……リョウスケは俺の知りたいことに何でも答えてくれて、頼りになる奴だ。

そういう隠し事をするような奴だとは思わないけどな……。


「ってか、何で神様や綿華がシンゴの事知ってんだ?クラスも違うだろ?」

「ハッ!……神が偶然、石川君と同じ部屋になったのだよ。あんな様子だから、最初は一年生かと思ったものだ。」

「へ、へえ……」

「ハッ!だから、石川君の事は神らの方が色々と調べるチャンスはあるという訳だ。そういう事で、君はあまり詮索しなくて良いぞ。」

「……え、なんでだよ?幼なじみの事は、幼なじみ同士で……」


俺たちは話しながら歩き始めていたが、

それを言った瞬間に、綿華が足を止めた。


「ねえたっちゃん、そうやってテル君とすーみんの問題に足を突っ込んで、なんか大変な目にあったんでしょ?……今回のも、そういう系だと思うなあ。」

「……クッ、そんな黒歴史もあったな。」

「とりあえずシンゴ君は、明らかに何かあったっぽくて、そしてたっちゃんはそれについて何も知らない。だったら、やれる事はあたし達がこっそりやってみるから、少なくともシンゴ君に何か聞くのはやめときなさい。」

「分かったよ、まったく。」


こいつらが必死に止める様子が気にはなるが、まあ正論だろう。

俺が変にかき乱すのも悪いし、ここは我慢しておくか。

しかし、五年前にシンゴとは泣く泣くお別れして、

それ以来連絡を取ることもほとんど無かったんだから、

普通俺みたいに懐かしがって、幼なじみ誰かしらの話題にはなると思うがな。


校門を出たところで、俺の家と、男子寮・女子寮は逆方向にあるので、

そこで別れることにした。

あっけらかんとした綿華の笑顔が少し気になったが、俺は帰路に着いた――。



  ○   ○   ○   ○   ○   ○



「ねえ、あれで良かったと思う?」


長瀬達也と別れた後、綿華がつぶやく。

上川はそれに対して少し考えた後、口を開いた。


「ハッ!少し過保護すぎる気もするが、あの鈍感な長瀬君の事だ、わけも分からず突っ走っていた事だろう……抑止剤としては十分ではないか?」

「そうよね……明らかに『五年前』に何かがあったみたいだし、たっちゃんは全く気付いてないみたいだけど、多分ワッキーやテル君、すーみんは何かしら知ってる可能性が高いわよね……」

「ハッ!……これに関してはあまり引っ掻きまわさん方が身のためだぞ。君や神といえども、全ての問題が解決できるわけではないのだ。」

「……ま、これに関しては神様の言う通りね……」



  ○   ○   ○   ○   ○   ○



家に着いて早速、携帯をいじってみた。

それからすぐ、電話帳で何となくリョウスケを探してみる。

多分この時間なら、電話すればすぐ出るだろうが、

……綿華の忠告通り、ここはやめておくべきか。


学習机のそばに立てかけたギターを見つめてみる。

明日もいつも通り軽音の朝練で、そこにはテルが居る。

そういえば、テルはシンゴが転校してきてること、知ってるのか……?

いや、俺が知らなかったくらいだから、テルやヨウジも知らないだろうし、

知ってたら俺に何かしら言ってくるはずだろう……。

……はずだよな?ちょっと疑わしく思えて来た。


時々、俺は世界に置いてかれてるんじゃないか、なんて思う事もあって、

テルとヨウジが付き合ってるって分かった時、

当たり前の日常が一変して驚いたものだが、

リョウスケがそんな時「俺も知らなかった」と言ってくれて安心した。

だからこそ俺は今でもリョウスケを信じてるし、

何か悩んでるとしたら、親友の俺を頼ってくれよと思うんだがな……。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ