第46話 最初のメッセージ
王都星花祭のフィナーレから一週間と少し経っていた。
祭りの期間中とその後にも何度か狩りへ出たことで、俺のレベルは48まで上がっている。
俺がLv50を目指している理由は二次転職だけでなく、大きく2つあった。
一つは《灰冠戦役・第七補給隊名簿》に残る未開示記録《第二中継点》の先を開くこと。
もう一つは《世界樹の歌碑》に、今の俺には読み取れない記録が残っているのかを確かめることだ。
リヴィアがLv50になったあのとき、俺にもクエスト情報の一部が共有された。
ただし《世界樹の歌碑》が古い旋律の一部を示したと書かれているだけで、俺には旋律そのものや意味などは分からなかった。
ベルカ村の薬草師マーサは道を戻すには覚えている人も必要で、それは人だけとは限らないと言っていた。それなら、人より長く残り続ける世界樹とその歌碑にも、誰かが残した道の記録が眠っているのかもしれない。
その日、俺はCROへログインし、狩りへ出る準備を始めたところで一通のメッセージが届いた。
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リヴィア:こんばんは、ザンさん。今、少しお時間ありますか?
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送り主を見て少し驚いた。
フィナーレの翌日にフレンド登録をしてから一週間ほど。
リヴィアから連絡が来るのは初めてだった。
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ザン:こんばんは。大丈夫ですよ
リヴィア:少し相談したいことがありまして
リヴィア:世界樹の歌碑まで来てもらうことはできますか?
ザン:分かりました。今から向かいます
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エルフ初期村――シルヴェイル村にある《世界樹の歌碑》。
ちょうど俺も気にしていた場所の名前が出た。
俺は王都の転移門を通り、シルヴェイル村へ向かった。
◇◆◇◆◇
日本サーバーの時刻は現実より4~5時間ほど遅れているらしい。
俺がログインしたとき、現実では夜の九時を過ぎていたが、シルヴェイル村の空にはまだ午後の明るさが残っていた。
白い石畳の間を流れる水路には、世界樹の枝葉から落ちる光が揺れている。
村の上を覆う巨大な枝の下を歩き、世界樹の根元に開いた空洞へ入ると、重なった根が床を作る広い空間にはいくつかの歌碑が並んでいた。
その一番奥にある《世界樹の歌碑》の前に、一人のエルフの女性プレイヤーが立っている。
白に近い金髪と明るい翠緑のローブ。
手にした細い杖には見覚えのある蒼色の小鳥の飾りが小さく揺れていた。
『こんばんは、ザンさん』
リヴィアは静かに頭を下げた。
「こんばんは」
『突然呼んでしまってすみません』
「大丈夫ですよ。それで相談というのは?」
『クエスト《まだ歌われない詩》のことです』
「進まないままなんですか?」
リヴィアがLv50へ到達した後、この場所で始まったサブ職クエスト。
あのとき、次の手掛かりとして出たのは《詩守り》という名前だけだったはずだ。
『はい。あれからも時間があるときに少しずつ探していたのですが……』
「難しそうですね。どこまで探し終わってるんですか?」
『シルヴェイル村の中は一通り全部見ました。この世界樹も調べています』
「世界樹も……?」
『はい。中だけでなく、外側も見て回りました。そのとき、村の子どもたちが根の間から上へ登っていくのを見つけまして』
「え、世界樹って登れるんですか?」
『私も驚きました。子どもたちを見ていなければ、登れるとは思わなかったです』
「そんなところまで作ってあるとは。さすがCROだな……」
『《詩守り》が世界樹の上にいるとは思いませんでしたが、念のため調べてみました』
「リヴィアさんもこの上に登ったんですか?」
返事が少し遅れた。
『……はい、少しだけですが。ただ途中で下を見てしまいまして』
「ああ。それは高いところが苦手だと怖いでしょうね」
地上から見上げるだけでも相当な高さだ。
『友達に降りるのを手伝ってもらいました。その後はその友達が一人で上の枝まで見てくれたのですが、《詩守り》らしい方もクエストに関係しそうなものも見つかりませんでした。……ただ、景色はすごかったらしいです』
「いい友達ですね」
『はい。本当に助かりました』
『それでクエストの進行条件についても調べてみました。確かな情報ではないのですが、CROにはクエストを始めたときにいたパーティーメンバーがいないと進まないものもあるらしくて……』
「なるほど。受けたときに一緒にいた人が条件になるってことですね」
『はい。CROならそういう条件があってもおかしくないと』
「確かにそれはありそうかも……CROらしいというか」
『ただ、まだ正解かどうかは分かっていません。ですが、試してみたい場所を絞りました。まずは私一人で話してみて、その後ザンさんとパーティーを組んで、同じことを試してみてもいいでしょうか』
「了解です。行ってみましょう」
見つからなかった《詩守り》への道が二人なら開くのか。
俺たちは最初の候補へ向かった。




