第13話 とりあえず潰すの~~
☆☆☆王宮
「父上、会計官から、予算を凍結と言われました!会計官を不敬罪で告発します」
「余の命令だ。まさか、王族が差し押さえを受ける訳にはいかないからな」
「そ、そんな!」
「月銀貨50枚で過ごせ。徐々に減らす。慣れろ」
「少なすぎです」
「平民では上等だ。その銀貨50枚は、余のポケットマネーから出している。おって、臣籍降下になるだろう。騎士を予定しておる」
「陛下!あの商会は、私が始めたものです。妹に奪われました。王命で取り返すように言って下さい!」
「そうです。あれはオリビアのものです」
「ほお、そなた達の記憶は、怪鳥にでも食われたのか?ほんの数ヶ月前の謁見を忘れたか?」
・・・・・
と一週間前の出来事だ。お義姉様から聞いた。
そして、今、メアリー商会に4人が来ている。
☆☆☆メアリー商会
「え、お父様と、お母様と、お姉様だけじゃなく、第三王子がやってきたの~~~」
「はい、その殿下がおりますので、通さないわけには、いきません」
「フ~ン。会うの~~」
「警備、トーマス様仕様!で会いましょう」
「分かったの~~」
☆応接室
「メアリーよ。オリビアの事業が成功した」
「そうよ。提携の話で来たの」
「そーなの~~」
興味ねー!一週間で事業が成功?嫌な予感しかない。しかし、皆、良い服を着ているな。
「メアリー、貴方は、私の事業を引き継いで、それに乗っかっただけよ。私は0から始めたのよ。私だったら、もっと、早く、もっと、大きく事業を展開出来たわよ」
(((ピキッ)))
皆、怒っているな。心の声が聞こえた。
「オリビアはすごいな。さすがだ。メアリーも見習え。親孝行をしているぞ」
「フフフフ、メアリー、働く平民を間近で見て、少しは、成長したかしら」
「皆、優秀なの~~~、成長したの~~」
「とりあえず金貨1万枚用意できるか?増やしてやる」
「しないの~~」
馬鹿だな。しかし、気になる。こいつら、破産間近ではないか?
「この商売は元手がさほど必要はないわ。しかし、お金があれば、あるほど、儲かるのよ。もっとも、貴方では、理解できないから、説明はしないわ。欲しがられても困るからね。クス」
・・・これは、マルチか?いや、もう、ローゼン家の資産はないハズだ。
領地と爵位も取り上げられる。
・・・まさか、ネズミ講?!
「ケリー、このお茶、不味いわ。質を落としたわね。最高級の紅茶、持って来きなさい。王室御用達のケーキも買ってきなさい。さあ、早く」
「オリビア様、今は、メアリー様に仕えています。メアリー様からの命令でなければ、聞きません」
「ケリー、いいの~~、表の井戸から、水でも汲んでくるの~~、お菓子は、メアリーのおやつから、キャンディーを分けてあげるの~~」
「!!!何ですって」
「はい、畏まりました」
「提携は絶対にしないの~~、お姉様の手段は~~、会員に銀貨を上納させて、また、会員を勧誘してとか~」
「金貨よ!」
当たりか。
「オリビア様、お水とおやつをお持ちしました。」
コト、
「!いいわ。後悔しなさい。メアリー商会を、あっという間に超えてやるのだから、そうすれば、陛下の目も覚めるわ!」
・・・・
「「「メアリー様」」」
「とりあえず潰すの~~、協力して欲しいの~~」
「「「はい!!」」
どうやって、潰す?!
幼女が、言っても王宮は意見を聞かないだろう。
義姉様に相談するか。
相談したら、即日、謁見と相成った。
☆☆☆王宮応接室
うわ。マナー講師つけてもらってねえー、王宮の作法はわからない。しまった。
お義姉様と一緒に、陛下と私的な謁見をしてもらうことになった。
「お初に、お目にかかりますの~~、メアリー商会長、メアリーでございますの~~」
「苦しうない。座るが良い。家族と思って話すが良い。余と妃の脇にいるのが、王太子エドモンドと、第2王子マークガレーだ。マークとは8歳差になるのう」
「エドモンドだ。よろしく、嬢ちゃん」
「マークガレーだ」
トランプの王様みたいだ。王妃様は若いな。でも3人の子持ちか。スゲー。
あれ、第2王子、どっかで見たことがある。幼女の記憶量では、従業員と債権者しか覚えられない。
うわ。王妃様は、ジィーと見つめている。
王様と、王妃様が私に相対して、両隣に、第1王子と第2王子だ。お義姉様は、私の隣に、座っている。
ピンク頭なら、目がハートになっているな。言葉足らずだから、お義姉様にお話ししてもらおう。
「陛下・・」
「待て、エリザ、メアリー嬢の会見だぜ。本人の口から、話を聞くべきだ」
お義姉様が、お話ししようとしたら、王太子に遮られた。
「大変なの~~、オリビアお姉様が、悪い商売をしているの~~」
「悪い商売、ほお、人が死ぬのか?」
「いえ、社会が、国が死ぬの~~~」
「「「!!!」」」
皆の目つきが変わった。
「であるか、姉妹ケンカに王宮を巻き込んだら、拷問の上、処刑されることもある。幼女でもな」
ブルブル~~、
何、震えが止らないよ。怖いよ。そうだ。エドモンド王子、暴の中の暴と言われている人だ。お義姉様と同じ匂いがする。
「お姉様は、会員を集めて、お金をもらう商売をしているの~~~」
ネズミ講って、この世界にあるのか?ありそうだけど、地域社会で簡単に弾かれそうだ。
地域コミュニティは狭いからな。
あ、そうか、郵便がなければ、広まらない。私だ、メアリー商会、現金の輸送も始めたのだ。
「例えば、知り合いに、お手紙を書いて、お金を送って下さい。その代わり、次の人から、お金を送ってもらえますと言う感じなの~~」
「わからねえ」
ネズミ講なんて、興味なかった。だから、詳しくは知らない。お姉様は自力で考えたか、頭は良いが馬鹿だろ。
分かった。これは、戦いだ。試されているのだ。強引に、王命で、メアリー商会を没収することも出来る世界だ。
「フヌーーー、少し、待つの~~~!」
ノートに、書いた。ネズミ算だ。図式と計算式を書く。
「おい、おい、陛下を待たせるなんて、お前、何様だ?」
「黙るの~~~~!」
うわ。勢いで言ってしまった。
エドモンドは、肩をふるわせて、クククとか言っている。笑いか?怒りか。今はそれどころじゃない。
3分か。長く感じる。ジィーと見られている。
「フンヌー!陛下、見て下さいなの~~~、危険なの~~~、この国は人口1000万人なの~~、あっという間に、破綻するの~~~」
「二人ずつ、子が増えていけば、27代目で、一億人を超えるの~~~会員を集めお金を上納させる仕組みなの~~」
「はあ、はあ、なの~~~」
「そうか、分かった。余に何を望む?」
「注意喚起なの~~~、民間は、メアリー商会が、現金の輸送はストップするの~~~、貴族は、陛下にお願いするの~~~」
低位貴族でも、メイドくらいはいる。メイドに、ネズミ講のお手紙を届けさせることは出来るだろう。
平民なら、遠方の知り合いには、メアリー商会を使うだろうとの読みだ。
「大丈夫だ。もう、既に、カゲをつけてある。貴族でこの話しに乗るのは、オリビア嬢の取り巻きの貴族ぐらいだ」
何だ。知っていたのか?じゃあ、脅しは何だよ。
「これから、大変革が起きる。庶民も騙されるだろう。マーク、ネズミ講禁止の法案の作成をせよ。リトルアキバで、転生者から聞いているのだろう」
「陛下、確かに、この幼女の言うとおりです。用意してあります。かの世界では、国中で、内乱が起きた例もあるそうです。
市場経済の初期に、多くおきることがあると聞いています」
「そうか、以後、メアリー嬢の連絡係をせよ」
「御意」
「待ちなさい。貴方、家庭教師がつかなかったと聞きました。何故、その数式を知っているのですか?」
「はい、王妃殿下、お姉様の教科書をお借りしましたの~~~」
「質問です。その教科書は綺麗でしたか?」
「とても、綺麗だから、汚さないように注意したの~~」
ニコッ
微笑んだ。
「そう、オリビアの教科書は綺麗だったの。家庭教師に、要点だけをまとめさせていたようね。あの娘、要領だけはいいのよ。貴方、王宮に来なさい。貴族学園入学の準備をしてさしあげます」
「グスン、グスン、貴族学園行かないの~~~」
「あら、王命を出して頂きますわ。ねえ、陛下」
「そうだな」
「時間ないの~~~、メアリーランドも忙しいの~~」
「大丈夫だ。領地の事は、財産管理人をつけるぞ」
・・・・・・
問題は、商会員だ。メアリー商会で騙された奴はいるか?
「メアリー様、我が商会員は、誰も引っかかっておりませんでしたぞ」
「クロウ、調べてくれたの~~」
クロウ、成長して嬉しい。あんたは、引っかかるキャラだと思ったよ。
「やはり、現金輸送増えています。メアリー様の読み通りです」
「ヒロウ、有難うなの~~、明日、王命が出るの~~~」
「しかし、問題は、真面目に現金輸送を利用しているお客様ですな」
「最悪、内乱が起きる恐れがあるの~~、でも、例外規定を協議するの~~~」
「「はい!」」
順調だ。
もう、私がいなくても、十分まわっていく。次の後継者は誰にしようか?
ヒロウが、つなぎで、誰か、新しい人が欲しいな。
「後継者ですか?それは、当然、メアリー様のお子になります」
「フへ」
そうか、株式がないからだ。経営と所有が分かれていない。強いて言えば、パトロンか?
「それじゃ、メアリー、結婚して、子供生まれて、成長するまでは、このままメアリーなの~~」
「「そうです!!」」
「やーなの~~、誰か養子にして、後を継がせるの~~」
「メアリー様は、10歳では?」
「もうすぐ、11歳なの~~~」
「そうだった。メアリー様、生誕祭をしましょう!」
「「「それがいい!」」
や、やぶ蛇だぁ!
☆☆☆1週間後
「おい、メアリー、よくもオリビアの商売を邪魔したな?」
「グスン、グスン、メアリー、貴方は、どこまで、卑怯な」
王宮の前で、4人にあった。
「グスン、グスン、私は、貴方に全てを奪われたわ」
「さあ、嬢ちゃん。行きましょう。王宮の中に入れば、安全です」
「うん。分かったの~~~」
「お前が死ねば、商会はオリビアのものだ。知っているぞ。貴族籍復活したのだな。しかも、当主の予定だ!それもオリビアに返せ」
キラリ!
剣を抜いた!
「お嬢!あっしらが盾になるけえ、フランはお嬢を!」
「わかった!」
フランは、私を抱えて、王宮の中に入ろうとしている。
ポロン~
「あ、ミディちゃん!」
・・・・・・・
☆☆☆260年後、メアリー大学、欲しがり学科
「討論始め!」
「欲しがりの心得とは?!」
「不退転なり!」
「なら、法王様からも欲しがるか?」
「時と場所が合えば、欲しがるなり!欲しがりとは因果律なり!意味のない欲しがりは、オリビアなり!」
我!
女神様に欲しがり。
父母に欲しがり。
魔王に欲しがり。
姉に欲しがり。
・・・・
クワッ!
【我、始祖、大メアリー様からも欲しがらん!】
「なら、大メアリー様は、女神様の元にいる!如何にして、欲しがるか?」
「愚問!大メアリー様とダンスをする!大メアリー様は、ここにいる!」
ポン!ポン!
「胸を叩いたわ」
「大メアリー様は、心の中にいるのね」
パチパチパチ!
「参りました」
「クララベル様の勝ちです」
「負けました」
「フ、君の負けではない。おかげで、心を再確認出来た。しかし、勝利と受け止めさせてもらおう。さあ、教授、勝った。メアリー様、大革新の前の旅事件の全容を教えてくれたまえ。約束だ」
「メアリー財閥の三姉妹、末妹、クララベルよ。いや、この教室にいる全員に話そう」
☆☆☆
大メアリー様は、第三王子の凶刃から、王宮に避難するときに、ヌイグルミを落とされたのだ。
護衛は、誰も、拾わなかった。
そうだ。大メアリー様のお命の方が大事だ。
しかし、違ったのだ。大メアリー様は、ヌイグルミを、心の友にされていたのだ。
第三王子は、腹いせに、ヌイグルミに攻撃をしたのだ。
小人だが、人の嫌がることは本能で見抜く能力はあったようだ。
グサッ!グサッ!
『アハハハハ、メアリーよ。ヌイグルミが友とは、寂しい人生だな~~』
【ミディちゃん!ウワワワワワワワワ~~~~~~ン!】
事態を察した。護衛が、王子を、
殴りだしたのだ。
『おい、俺たちは、嬢ちゃんの心知らなかったぜ』
『不敬罪上等だ。ヌイグルミを助けるけ』
ボカ!ガキ!ボカ!
『おい、何をする!我アーーー王子だ!!』
無言で、数十発殴ったそうだ。
・・・・・
「教授、それで、どうなったの?」
「公式記録によると」
☆☆☆王宮
その日、ゴロツキ二人と、顔をボールのように腫らした男が現れたそうだ。
『父上!この者に、殴られました!不敬罪で逮捕して下さい!私が、拷問をします!』
すると、国王は、おとぼけになられた。
『そなた、誰じゃ、顔を腫らして、誰だが分からん。余の子息に、剣を持っているのに、素手の者に、負ける者はいない。そうだな。エドモンドよ』
『おう、ニセ王子、帰れ。そして、もし、第三王子にあったら、たった今、廃嫡になったと伝えてくれ!お前ら、ゴロツキも帰れ、王子をボコったと嘘を言ったら承知しないぞ。王族がお前らに負ける道理がねえ』
『そんなーーー』
『『ヘイ・・』』
・・・・・
「どうだね。まるで、大メアリー様は、か弱い女の子みたいだと、このエピソードは、教科書から、弾かれているのだ。幻滅したか?」
「ククククッ、いいね。メッキを剥がしたら、オリハルコンだった感じだ。いいよ。いいね」
「そうね。何か。ジグソーパスルのピースがはまったような感じです」
「大革新の前の旅・・・そうでもなければ説明つきません」
「この後、現在では、グループ会社になったエレガント観光の前身、エレガント駅馬車を再興してしまうのだから、全く、たいした方だよ」
☆☆☆メアリー生誕祭当日
「ケリー内勤長、あれから、メアリー様は、自室にこもっています」
「ご飯も召し上がりません」
「お針子を手配しましたが、拒否されています」
「生誕祭は、中止にしましょう」
「そうね・・・」
「グスン、グスン、私が、ヌイグルミを拾わなかったから」
「「俺たちもだ」」
「いいえ。誰も気がつかなかったわ。メアリー様は幼女だったのよ。それを皆の期待を一身に受け止めて、家族からないがしろにされた寂しさを、ミディちゃんに慰めてもらっていたのね」
「大変です!商会長がいません!あの、ミディちゃんもいません!」
「「「何だって!」」」
・・・この日、私は失踪した。ミディちゃんの手術をしてもらうために、ミディちゃんの故郷に向かうのだ。
ああ、きいたよ。自分でも知らずのうちに、ミディちゃんに助けられていたのだ。
「さあ、帰るの~~~手術してもらうの~~」
ヒュ~~~~、逃避行には、北風が似合うぜ!
最後までお読み頂き有難うございました。




