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ティエスちゃんは中隊長  作者: 永多 真澄
とべとべ! 森域動乱編

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5-74 ティエスちゃんは強襲中②

「ガンズゼロ! 生きてるかぁ!?」


「へ、平気です……!」


 思いのほか元気そうな姫の声を聞けてひとまず胸をなでおろすティエスちゃんだ。

 常人なら容易く三半規管がぶっ壊れるような機動を繰り返しているから心配だったが、賢狼人はなかなか三半規管が強いらしい。姫にトリアゾラム(トリアゾラムではない)を投与するかどうかで葛藤する場面はなさそうで安心したぜ。まぁ安心してる暇なんてないんだけどな!

 オティカが砲台を脅威度の高い順に潰してくれたおかげで密度はずっと低くなったが、未だ対空砲による迎撃は続いている。ペイロードの関係でミサイルはあれ以上積めなかったんだよなぁ。

 高度2,000を切って、地上の様子もよく見える。そびえたつレイフィール城のすそ野に広がる同心円状のの城下町は、青い強化鎧骨格でびっしりだ。どこに降りたって多勢に無勢は必至って感じ。逆に言えばどこに降りてもいいわけで、そう考えれば気楽ではある。


「街が……」


 後ろから姫の独り言が漏れ聞こえるが、聞かなかったことにする。レイフィール市街は完全に要塞化されており、生活感というものがない。市井がそろって『野生の後継者』に与したとは考えにくいから、どこかに隔離されていると思いたいが……。


「オティカ。地上の生体反応をサーチできるか?」


『無理だ。強化鎧骨格の熱源で埋め尽くされていて、人間単位の微弱なものは感知できない』


「まぁ、そうだよなぁ」


 俺は機体をロール回避させながら半笑いになる。人間ミキサーにもだいぶ慣れてきたな。センサーだってそんな上等なもんは積んでないからなぁ。


「ガンズゼロ。レイフィール城に市井の人間全員を収容するキャパはありますか?」


「……おそらく、可能でしょう。賢狼人(われわれ)は国全体でも1000人に満たない小集団ですから」


「爆撃ポイントを決めないといけません。レイフィール城の軍関連施設は、城の南側で間違いありませんね?」


 サブモニタに映る姫の顔が苦みばしる。つまりシェルターは完璧なんだな? という確認なのだが、即答はできないらしい。その間にも時間は過ぎる。もう高度は1,000を切った。


「……当初想定通り、爆撃ポイントの変更はありません。お願いします、ガンズリーダー」


「――了解」


 それでも結論をちゃんと出してくれて助かる。責任の所在の問題がある。ちゃんと言質はとったぞ、録音できてるよな?

 ブースター切り離しポイントまであと五秒しかない。俺はコンソールを叩いて、ブースター切り離しシーケンスを開始した。高度は500メートル。この時点で東京タワーよりまだ高い。


「ブースター、切り離し。着弾点設定そのまま」


『――了解。シーケンス開始。固定ボルトパージ……成功』


 オティカが告げるのと同時に、がくんと今までとは明らかに違う振動がコクピットを揺らす。バックパックとブースターを繋いでいた爆発ボルトが弾け飛び、ひとつだったアマツカゼというオブジェクトが、ブースターと強化鎧骨格の二つに分かれたのだ。

 推進力を失った強化鎧骨格――単体呼称:スーパーアーゼェンレギナは、ボルトパージの衝撃を利用してずれ落ちるようにブースター下にスライドすると、降下角に対して俯角を取るように姿勢を制御する。

 光画盤にブースターの降下軌道とは別に、スーパーアーゼェンレギナの降下軌道が描写された。レイフィール城手前1キロに着弾する軌道だ。慣性の法則によってある程度までは並走するが、推力そのままなブースターはすぐにスーパーアーゼェンレギナの頭上を通り越していく。

 

『ブースター拘束解除……成功。1番から4番までリンク接続良好。誘導開始』


 頭上を行く4本のブースターが、戒めを解かれてばらける。スーパーアーゼェンレギナから伸びる制御ワイヤーによって指令を与えられたブースターたちは、意志を持ったようにそれぞれの航路をとって、最後の輝きとばかりに尾部から火焔を迸らせた。


『誘導終了。ワイヤーパージ』


「露払いは頼んだぜ、ブースターちゃんたち!」


『ドラッグシュート開傘』


「ヴっ!?」


 うっおお、今日一の衝撃きたなコレ。減速のために開いたパラシュートが、空気抵抗を一身に受けて機体を急減速させる。重力加速度ってのは嫌だねホント。

 サブモニタで姫の様子を見る。かなりきつそうだがとりあえず吐いたり気絶したりはしてないようだ。良かった。見た目よりだいぶ鍛えてるなこの姫様。

 現在高度は地上300メートル。減速せずに地面に突っ込めば、いくら強化鎧骨格に乗ってるって言っても中でミンチになることは確定的に明らかだ。とはいえ降下中はマジで無防備なのでどうすっかなコレ。対空砲がこっち狙ってるんだよね。ロックオンアラートが鳴り響く。


『何をしている、回避を――!』


「まぁ見てなって」


 俺が動かないのを見て、オティカが焦った声を出す。いや回避ったって、スーパーアーゼェンレギナは空中移動能力ないからなあ。四肢をばたつかせてAMBACに頼ったって、空で溺れるのがオチだ。

 俺は背部にこれでもかと増設された兵装担架から狙撃銃型の杖をメインアームに保持させると、飛来する対空砲弾を照準して、引き金を弾いた。


「狙い撃つぜ」


 発射されたエネルギー弾が、対空砲弾の真芯をとらえた。運動エネルギー同士が激しく干渉し、砲弾の形状を崩すとともに、その軌道をあちゃらへ弾き飛ばす。完全に破壊できなくても直撃弾じゃ無くせればそれでいいんだよな。チョロいもんすワ。


『対空砲弾を迎撃した……? 意味が分からん。本当に人間か?』


「おいおい、ここは「キャーティエスちゃんサイコ―! 抱いて!!」ってなるところだろ。何ドン引きしてんだ」


『……お前の異常性に驚くのはこれっきりだ。次、直撃弾来るぞ』


「おうおう、狙い撃ちだぜ」


 優雅に晴天を落下傘降下しつつ、向かってくる対空砲弾を撃ち落とす。オティカの早期警戒の精度が高いからなせる業ではあるんだよな。まじでこの人工知能ハイスペすぎなんよ。


『ブースター、弾着確認』


 ドォォン! って感じに空間を揺るがすような爆音とともに火焔が膨れ上がった。うひょー、この世の終わりみたいな光景だぜ。森林火災にならなきゃいいけど。うわっ衝撃波きた。

 爆心地の様子は確認できないが、レイフィール城が傾ぐ様子は見られない。ずいぶん優秀な設計してますねぇ!

 だが、地上に展開している部隊や付帯施設はどうかな?


「じゃ、行きますか。シュートパージ」


『――了解。シュートパージ……成功』


 高度100メートル。これくらいの高さと速度なら、スーパーアーゼェンレギナは十分安全に着地できる。

 ドラッグシュートが切り離され、風にあおられて吹き飛んでいくのが確認できた。ワイヤー類が絡まったら地獄だったな。つくづくオティカさまさまだぜ。


「うひょ~~! アイ・キャン・フラァァイ!」


 枷から解き放たれた巨人が、自由落下を開始した。

五月まで執筆停止中です。再開はしばらくお待ちください。


そして作者のモチベーションアップになりますのでぜひ感想をください……!!

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