初めての経験?
金髪美少女と話をしながら森の中を歩く。
遠くの田舎から来て何もわからないこと、途中で盗賊にあい荷物を捨てて、逃げて来た事などを説明してみた。
嘘だけど。
「私、クリストファー!クリスって呼んでね!宜しくね!貴方名前は?」
「マコトです」
「マコちゃんって呼んで良い?」
「うん?まぁ良いですけど」
そういえば隣の家の幼馴染の女の子は僕の事をマコちゃんと呼んでた。
耳慣れた呼び方になんだかホッとしながらクリスに行き先を聞く。
今から向かう先は王都「エミーナ」という所らしい。
ゲームの中の国の名前と同じでビックリした。
その国でクリスは、家族で宿屋を営んでいるそうだ。
クリスは僕と同じ15歳で背は僕より少しだけ高かった、少しだけ.....
僕の盗賊襲われ説を信じてくれて、宿屋のお手伝いをする代わりに泊まらせてくれる事になった。
何でも今、王都は冒険者が多くやって来て、何処も人手が足りないらしい。
森を抜けると巨大な城壁と城門が見えてきた、城門の前には衛兵らしき人と、数人の荷馬車に乗った人たちが見える。
衛兵に目をやりながら、入れるか不安でいると、衛兵の一人がクリスに話しかけてくる。
「クリスお帰り!そっちの可愛らしいお嬢さんは誰だ?」
「森で盗賊にあったそうなの、私が保証人になるから家に連れてくわ」
クリスがそう言うと衛兵は納得したのか、挨拶をして離れていった。
顔馴染みの衛兵だったみたいだ。
無事に中に入れる事に安堵しつつも、衛兵のお嬢さん発言には否定をいれたかったが、此処で面倒ごとになるのも嫌なのでスルーする。
他の衛兵や商人達がチラチラ僕を見ているみたいだったが、クリスは気にせず僕の手を引いて城壁の中に入った。
城壁を抜けると、ゲームの中で見たのと同じ中世の西洋風な、お洒落な街の姿が広がっていた。
遠くにお城の様なものも見える。
リアルな街の姿に感動しながらも門から真っ直ぐに続く大きな通りをクリスに手を引かれ歩いていく、それ程歩く事もなく大通りに面したクリスの宿屋に到着した。
なかなか可愛らしい、看板に『雅』と書いてある二階建ての綺麗なレンガ造りの宿屋だ。
中に入ると一階は広い食堂になっていた。
厨房では中年の男女が夕食の仕込みをしているみたいだ。
「お父さん!」
そう言いながらクリスは厨房の体格のいい男性に走り寄って何やら説明している。
しばらくすると厨房から二人が出てきた、クリスの両親だった。
恰幅のいい母親から話しかけられる。
「大変だったね!手伝って貰うと家は助かるから幾らでも家に居なさい」
「あっ、お世話になります」
「とりあえず濡れた服をどうにかしないとね?クリス!」
クリスは頷いて僕を厨房の奥に連れて行く、奥がクリス家族の生活スペースになっていて
二階が宿泊スペースになっているそうだ、一階にはお風呂もあるらしい。
僕はクリスの部屋に連れて行かれる、女の子らしい可愛らしい部屋だった。
「コレに着替えて食堂に来てね!脱いだ服はそのカゴに入れてて、洗っといてあげる」
そう言って、タオルや着替えの入ったカゴを渡してクリスは部屋から出て行った。
湖に飛び込んで濡れた服が気持ち悪かったので、早速全部脱いでタオルで体を拭く。
そして着替えを出そうと服を拡げて固まった。
「何でよ?!」
広げた服はクリスが着てた様なレストラン制服。
サイズは僕に合いそうだけど。
おまけに一緒に入ってた下着も女もの、ベビードールとタップパンツが。
「もしかしてコレしか着替えが無いのかも、おじさんのだと確実にブカブカだろうし」
そういえば此処は異世界かも知れないし、外国には男性がスカートを履く文化もあった様な、うろ覚えだけど。
取り敢えず、着る物も無いので自分を色々納得させつつ着替える。
恥ずかしい。
着替え終わっておずおずと食堂に顔を出す。
「あのー着替えました」
クリスが一度厨房から顔を出して
「そこの好きなとこに座って待ってて」
そう言われて食堂の端の方のテーブル席に座って、しばらく待つとトレーに二人分の食事を乗せてクリスが厨房から出てきた。
そしてトレーをテーブルに置き、僕の向かいに座った。
「似合ってるね、可愛い!サイズも良いみたい?私のお古だけど」
「あの、スカート、おかしく無いですか?」
一応、女物を着るのがおかしく無いのか尋ねようとしたが。
「なんで?すっごい似合ってるよ!可愛い!一応コレが食堂の制服だから仕事の時はちゃんと着ててね!」
そういう文化みたいだ。
恥ずかしいけど文化が違えばこの格好も仕方がない。
「取り敢えずお腹すいたでしょ?一緒に食べよう!」
お腹は空いてる、朝から何も食べてなかった事を思い出した。
頂きますと言って、出された食事を頂く、メニューは豚肉の生姜焼きっぽいものとサラダ、コンソメスープにバターロールみたいなパンだ、それにオレンジジュース付き。
どれもとても美味しい。
ラノベとかだと異世界料理は美味しくなかったりするのに、パンはとてもフワフワで、ジュースも冷蔵庫から出したみたいに冷えてる。
食事をいただいてからは、お手伝いの内容を聞く、要は食堂のホールスタッフ、メニューも見せてもらったが、チキンステーキやハンバーグ、飲み物はビールや炭酸飲料、ファミレスメニューだ。
普通にパンの他にライスもあった。
メニューを覚えたり、宿屋のルールを聞いたりしてるといつのまにか夕方に、もうしばらくすると宿泊の冒険者達が戻って来るらしい。
ボーとしていると中年の冒険者らしき三人組が入って来た。
「おかえりなさい!」
クリスはそう言って三人組に寄っていく。
「すぐ食事にするんでしょう?」
そう言ってテーブルに三人を案内して僕の所にやって来た。
三人はしばらく前から宿泊している常連さんで『銀狼』と言う冒険者パーティらしい。
クリスと話してたのが、リーダーのダームさん、他にバズさん、トレジさん、三人とも身体は大きく厳つい顔をしてる。
クリスは僕に注文を取る様に言って厨房に入って行った。
僕は引き篭もりでバイトなんてした事も無いので、ドキドキしながら注文を取る。
「ご注文は決まりましたか?」
ダームさんは三人分のビールとツマミになりそうな料理をいくつか注文した後、メモを取る僕を見て話しかけてきた。
「アンタ新人さんか?」
「はい!今日から働かせて貰ってます!マコトと言います!」
僕がそう言って頭を下げると、ダームさんはニカッと笑いながら
「マコトか、がんばりな!」
と言って僕のお尻を軽く叩いた。
「ヒャッ、ひゃい!」
突然のことに僕は、声が裏返り、変な返事を返してしまった。
その後も次々と冒険者らしき客が次々と入ってきて、注文を取ったり、料理や飲み物を運んだり忙しく働いていた。
客は男性ばかりだが、若い客の中には僕の事をジーと見てる人や、チラ見してる風の人もいる。
なんだか顔が赤い様にも見えるけどもう酔っ払ってるのかも。
僕の格好がおかしいのかとも思ったが、単に見慣れない従業員がいる事を不思議に思ったのかも知れない。
スルーして料理を運んでいると、女性二人組が入って来た。
二人とも水着、と言うくらいの露出の激しい格好にそれぞれ白と黒のローブを羽織っている。
出るとこ出て、引っ込む所は引っ込んで、モデル並の美人さんだ。
目のやり場に困る。
そういえば、ゲームの中でも魔法使いが、こんな格好してた。
もしかして魔法使いなのだろうか。
取り敢えず注文を取りに行く。
「ご注文は以上で宜しいでしょうか?」
頷く二人、白いローブのお姉さんはニコリと微笑んで。
「貴方可愛いわね!新人さん?」
黒いローブの方のお姉さんは、ウンウン頷きながらジッと此方を見つめている。
可愛いと言われたけどお姉さん達からすると年下の男の子は可愛いのだろうか、可愛いの言葉はスルーして聞いてみる。
「今日から働いているマコトと言います!あの?お姉さん達は魔法使いさんですか?」
「そうよ、魔法に興味あるの?貴方だったら可愛いから教えてあげても良いわよ」
白い方のお姉さんは、トウコさん、黒い方はアサギさん、トウコさんは、フランクな感じでよく喋るの対してアサギさんは、寡黙な感じ、時々相槌をうつぐらい。
「ところでマコトちゃん?マコちゃんで良いかしら?魔力持ち?」
「魔力持ち?」
魔法が使えない人もいるのだろうか、ゲームの中ではみんな普通に使ってた。
僕自身も湖の前でファイヤーボールを使った。
魔力はあるはずだ。
「魔力?あると思います!ファイヤーボールぐらいなら出来ますし」
「ファイヤーボールぐらい?」
お姉さん達は首を傾げながら。
「そうなんだ?なんでこんな所で働いてるの?」
「ん?お金がないからですよ」
「そっそう?」
お姉さん達は納得のいかない様な表情をしてたがスルーして厨房にオーダーを通しに行く事にした。
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「疲れたー」
テーブルに突っ伏して、はあーと息を吐く、客は引いて賄いをいただいた後、皿洗いに後片付けも終わって、やっと一息つけた所だ。
「お疲れー!」
クリスはそう言いながら淹れたてのコーヒーを僕の前に差し出した。
「今日の仕事も終わったし、お風呂入っておいでよ」
少しゆったりとコーヒーを飲んだ後、勧められたお風呂場に行く。
お風呂は有料の時間貸しになっていて男女別にはなっていなかった。
お客さんの入浴時間はもう終わっている。
脱衣所で服を脱いで浴室に行く、労働で汗をかいた体を洗い終わり、浴槽に行こうと立ち上がった時。
「私も一緒にはいるよー!」
突然浴室の扉が開いてクリスが飛び込んで来た。
「「......................」」
素っ裸のお互いの身体を見合って固まる、そして。
「「キャー!!!!!」」
二人の悲鳴が宿屋中に響き渡る。
悲鳴を聞いて冒険者達が風呂場に雪崩れ込んできた。
「「ぎゃーー!!!!!」」