第95話「心無き人形②」
「幻が消えた!!」
「ぐっ…くそっ…
あなどった…
おまえらの間に、チームワークなどないと思っていた…
甘く見た…」
ゲンジの言うとおりだった。
エーコと志保の間に、“信頼”などというものは
まるでないと思われていた。
しかし、2人の仲は、いっこうに良くならずとも
死線を越えるたびに、いつの間にか
お互いの長所を見つけ、認め合っていた。
決して、恥ずかしくて表に出しはしないが
間違いなく2人は、ライジングサンのメンバーであり
“仲間”だった。
もう、とっくにエーコは一人なんかではない。
自分の居場所を、しっかりと見つけていたのだ。
「くそっ…もう同じ手は食わない!!
今度こそ、ブッ殺してやる!!」
ゲンジは気合を入れ直し
もう一度、戦闘態勢に入り、幻を作り出そうとする。
だが、その直後、ゲンジの背後から何者かの声が聞こえた。
「どうやら、お話が違うみたいですね」
「誰だ!?
あんたは……」
ゲンジが慌てて振り返る。
そこには……
四天王・最後の一人。
東條の姿があった。
「東條!!!」
東條は冷めた表情で、蔑むようにしてゲンジを見ている。
「一部始終を拝見させていただきましたよ
ゲンジ…
話が違うのでは?」
「話…?」
ポカンとするゲンジに、淡々と東條は話す。
「確か、あなたこう言ってましたよね?
『一度のダメージを受けずに倒す』
と…
おかしいですね…
どうやら、深手を負ってるみたいですが…」
「いや、東條さん!
これは油断しただけだ!
少々女どもを、甘く見ていた!」
「油断…?
これだから、あなたはいつまでも
四天王のお荷物なんですよ」
大悟は、呆気にとられていた。
(なんだなんだ…?
いきなし東條まで出てきたもんだから、焦ってしまったが…
仲間割れか…?)
東條の発言に、ゲンジは怒りをあらわにする。
「俺がお荷物だって…?
どういう意味だよ東條さん!!」
「所詮貴様の四天王の肩書きなど、不在の黒崎の代わりに繰上げで入っただけの立ち位置だ…
無論、この程度の実力だとは分かってはいたが…」
東條が現れ、加勢するのかと思いきや
突然の仲間割れ。
言われ放題のゲンジは、さすがに東條に頭にきた。
「なんだよ…言わせておけば…
そんなに俺が弱いって言うのか…?
だったら……」
ゲンジは東條に歯向かおうとする…
その反抗を察してか、東條はゲンジを睨み付けた。
東條から放たれる物凄い殺気…
ゲンジは、はっと我にかえり
怖じけずいて、途端に態度を変えた。
「う、うそだよ!東條さん!
今のはほんの冗談だ!
ここは協力して、ライジングサンを倒そうじゃないか!!」
東條は呆れるように、深いため息をついた。
「はぁ……
つまらない男だ…
分からないか…?ゲンジ
“もう終わりにしよう”と言っているんだ…
ジンさんがね…」
「ジンさんが…?終わりにする…?
ど、どういうことだ!!」
話はジョーカーの本拠地で、ゲンジが指令を受け
ライジングサンのもとへと出発した時まで遡る…
ゲンジの姿が見えなくなると、ジョーカーのリーダー・ジンは東條を呼び出し、耳打ちした。
『東條 ちょっと来い』
『はい…どうしました?ジンさん』
『おまえもライジングサンのもとへと直ちに向かえ
そして、ゲンジもろともライジングサンを抹殺しろ!!』
『!!!』
『どうせゲンジはライジングサンに負ける…
そのためのおまえだ
だがな、すぐに殺れとは言わない
俺が“合図”をする
殺るのはその時だ
分かったな?東條』
東條に拒否権はない。
ジンの言われるがままに、静かに東條はこくっと頷いた。
『……はい 分かりました』
そして先程、東條にジンから一本の電話が入った。
東條はその電話の内容を聞いて
その“合図”の意味を察した。
『はっはっは!喜べ!東條!!
すべての舞台は整った!!
とうとう目覚めやがった!橘善がな
殺れ!ゲンジを!!
パーティーの始まりだ!!』




