第94話「心無き人形①」
言葉を交わすことはほとんどない、エーコと志保。
そんな間柄の二人だが、エーコは自ら志保に声をかけた。
「貸せし…力」
「はぁ…?」
「負けるぐらいなら、あんたと手組んだ方がマシだし!!
「何か思いついたのね!!」
「えぇ…!信じるし…あんたを!!
(トウマさん…
もうあたし、一人なんて嫌だよ…
居場所…見つけられたのかな…?)」
3BECAUSE
第94話
「心無き人形」
エーコと志保。
決して2人の間になど、なかったはずの信頼関係。
その2人が、初めて力を合わせようとしている。
「あたしに考えがある…
でも、ちょっとそれには時間がいるから…
時間を稼いで欲しいし」
いつもと違う立ち振舞いを見せるエーコに
戸惑いながらも大悟が力強く答えた。
「時間稼ぎなら…俺にも任せろ!!」
エーコの目論みは全く分からない。
だが、エーコの作戦に賭けてみるしかない。
更に不安要素のひとつ、メンバーの会話はすべてゲンジに筒抜けだ。
「何をするって!?
まぁいい…
どうあがこうと、俺の姿は見えやしねぇ!
そんな作戦を行われるまえに、全員ブッ殺すまでだ!!」
ゲンジの姿はファントム・リミテッド
幻の中に隠れ、見えずにいる。
今は辺り一面砂にまみれ、砂漠の景色が映し出されていた。
「聞かれようが構いやしない!エーコの策に全力を懸ける!!
確かに貴様の姿は見えないが…
時間を稼ぐぐらいなら、俺たちにもできる!!」
「そうよ!なめてもらっては困るわ!!」
大悟と志保は持ち前のチームワークで結束する。
神経を研ぎ澄まし、気配をいち早く感じ取り
エーコを護ることだけに専念した。
「チッ…!!
しぶといやつらだ!!」
こちらからの攻撃はできなくとも、なんとかゲンジからの大打撃は防いでいる。
ゲンジに苛立ちが見えた頃、エーコが声をあげた。
「ありがとう!2人とも!
あたしの後ろにさがって!!」
エーコの準備は整ったようだ。
「想像通りだ
時間を稼いでもらい、その間、リミテッドの力を溜めていたわけだな…」
エーコは氷の溜め続けていた。
無論、ゲンジにはその予想もできていた。
だが、そんなことはおかいましなしに
エーコは溜めていた力を、地面めがけて解き放った。
「絶対零度を地面めがけて解き放つ…
“アイス・フィールド”!!」
エーコの手から放たれた、氷の力
みるみるうちに、地面が凍っていく。
その光景を目にし、大悟は自分の目を疑った。
「砂漠に氷!?地面が凍っていく…」
驚く大悟に、得意気にエーコが言う。
「なーに 大悟
暑さで頭やられちゃったわけ?
こいつは全部幻なんでしょ?
あたしたちの脳は勘違いして誤魔化されても
普通の地面には変わらないじゃん
暑さもすべて錯覚
辺りの地面も、本当に暑いわけじゃないんだから!!」
エーコが位置する、周囲一帯は一瞬にして氷付けとなった。
しかし、まだまだ力が足りなかったのか……
「フン!何をするのかと言えば、その程度か?
さすがに俺の体ごと、凍っちまうかと焦ったところだぜ…」
ゲンジには、一切のダメージを与えてはいなかった。
「はっはっは!せっかく仲間が時間稼ぎをしてくれたというのに、たったこれだけとは!
バカな話だ!!
もう遊びには付き合ってられん…
おとなしく死ね!!」
ゲンジは笑いながら颯爽とエーコの背後に回り込む。
まずはエーコから仕留めるつもりだ。
がら空きの背中から、攻撃を仕掛けようとした
その瞬間……
「“アクア・ウイップ”」
見えないはずのゲンジの姿を
志保が水のムチの力で、ゲンジの体を締め付けるようにして捕らえた。
「何!!??」
ゲンジの声が響き渡る。
目に写るのは、異様な光景だ。
姿こそは見えないが、志保のムチが巻きついたところに
透明人間でもいるかのような、不思議なシルエットが写る…
即ちそれは、そこにゲンジがいるということを現していた。
「やっぱりね!信じたかいがあったし!
やるじゃん志保!!」
エーコは小さくガッツポーズをする。
全く姿は見えなかったはずなのに、なぜ…?
捕らえられたゲンジは、困惑状態に陥り、現状をうまく飲み込めないでいた。
「な、なぜ俺の居場所が分かった…?」
ゲンジの疑問に、志保が笑みを見せながら答える。
「姿は見えなくてもね…
聞こえたわよ…あなたの“音”は」
「音……?」
志保は地面を指差した。
「えぇ
あんたが走ったときに起きた…
氷を削りながら立てる足音を便りにね!!」
「!!!
くそっ!この足下の氷にも意味があったのか!!」
カラクリも明らかにし、エーコは意気揚々と語った。
「あんたの体まで凍らすにはもっともっと莫大な力が必要だし!
初めから目的は地面を凍らすこと!
今がチャンスだし!!大悟!!
よろしく!!」
「OK!!」
水のムチに捕まったゲンジは、身動きが取れない。
大悟は土の大剣を作り出し、全力でゲンジを斬りさいた。
「ぐわっっ!!」
もろにゲンジはダメージを受ける。
ポタポタとゲンジの体から血が流れ落ちた。
そして、攻撃を受けたと同時にゲンジは姿を現わし
映し出されていた幻は消え、元の景色へと戻った。




