第93話「立ち上がれ!!②」
レトイン、善が駆けつけていることなどは知るわけもなく
大悟達は、ジョーカー四天王の一人、ゲンジの“幻覚の力”に苦戦し続けていた。
「くそっ…
なんて厄介な力だ…」
「どうだ?暑いだろう?
幻覚の力をみくびるなよ!」
大悟達の目には、どこまでも広がり続ける
砂漠が映し出されていた。
「なんだし…
高速道路の次は、何もない砂漠って…」
エーコの意識も、もうろうとしてきている。
もちろんここが砂漠なはずがない。
戦っている場所は、ライジングサンのアジトだ。
「砂漠はいいけど…
何で本当に暑くて、汗が出てくるのよ…?」
志保の疑問も、すぐさまゲンジが解答する。
「何も感じるのは痛みだけじゃねぇのさ
あまりにリアルすぎる映像に、脳が錯覚を起こすんだ
“暑い”と脳が認識し、暑さを感じ取ってしまう!!」
「くっ…ばかな…
今にも暑くて倒れそうだ…
チッ…何が厄介って…
ゲンジの姿が見えない…どこにいやがるんだ…」
暑さにより、大悟の判断能力もだいぶ鈍りつつある。
ファントム・リミテッドの厄介な点は
幻覚の力を使うことによって
術者の姿は、その幻の中に隠れることが可能なところにある。
「なめた能力だ…!!
出て来い!姿を現せ!!」
「はっはっは!
俺はずっとここにいるぞ…」
大悟の真後ろから、ゲンジの声と思われる笑い声が聞こえた。
その声を大悟が捉えた。
「そこか!!」
大悟は即座に振り返り、大剣で攻撃を仕掛ける。
しかし、背後にいたと思われたゲンジだったが…
振り返った先に待ち構えていた人物は、ゲンジではなく志保だった。
「おっと…!
あぶねぇ!志保だったのか!!」
志保の存在に気づき、大悟はギリギリのところで大剣を止める。
なんとか志保を斬りかかることせずに済んだようだ。
だが…
また別の方向から女の声が聞こえる。
「違う!!そいつは私じゃない!!」
「何!?」
大悟はすぐさまその声の方角を向く。
するとそこには志保の姿が…
志保が二人…?志保は大悟の後ろにいたはずでは…?
「はっはっは!惑わされたな!!
これが俺だ!!」
「!!!
(背後にいたのは志保ではなく…
ゲンジが作りだした“志保の姿をした幻”か!!)」
「バカめ!!」
不意をつかれた大悟は、ゲンジに思いっきり蹴り飛ばされた。
「大悟!!!」
攻撃が終わると、またゲンジは幻の中に姿を消した。
「消えたり姿を現したり…
そんなことも可能なのね!!
大丈夫?大悟?」
正真正銘、本物の志保が大悟の体を心配する。
「あぁ…大丈夫だ…
くそっ…貴様!!真面目に勝負しろ!!」
「はっはっは!これでも真面目にやってるが?
このままおまえらの攻撃など、一度も受けずに倒してやる!!」
自信満々のゲンジ。
それもそのはず、大悟達はまだゲンジに一度も攻撃を仕掛けられていない。
「調子こきやがって…!!
本当に姿が消えてるわけじゃない!
この幻の中に姿を隠してるだけ!必ずどこかにいるんだ!!」
「分かってるし!でもそいつをどうするかが…」
エーコは話してる途中だったが
何も見えないところから、ゲンジの攻撃を受け、エーコの体は吹き飛んだ。
「エーコ!!
なんなのよ!どこにいるかも分からないんて
どうすることもできないじゃない!!」
慌てる一同に、笑いが止まらないゲンジ。
「はははは…
頼みの善にレトインがいなければ
こんなもんかい?ライジングサン!!」
かんに障る一言に、大悟は苛立つ。
「!!!黙れ!!
くそっ…いったいどうすれば…
腹ただしいことに、姿は見えずともヤツの挑発や調子づく声だけはしっかりと聞こえてきやがる…」
今の大悟の何気ない発言に、エーコが閃く。
「声ってことは…
“音”…!!」
ゲンジの攻撃を受けて、横たわっていたエーコが飛び上がるようにして立ち上がった。
普段は滅多に会話などしない相手、志保にエーコが自ら声をかける。
「貸せし…力」
「はぁ…?」
「負けるぐらいなら、あんたと手組んだ方がマシだし!!」
「何よそれ…
何か…思いついたのね?」
志保の問いに、エーコは静かにうなずいた。
「善にレトインがいなくったって、やってやるし!!
なめられるのは大嫌いだし!!」
第93話 “立ちあがれ!!” 完




