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3BECAUSE  作者: Guru
32/131

第32話「失われた希望①」

綾音の能力に苦戦するが、ライジングサンのメンバーはお互いを“信頼”することで


最後の“希望”に勝機を託し、誰一人あきらめることせず立ち向かっていた。


志保のやるべきことはひとつ。

攻撃の起点である、ギターを破壊する。


まずは発射口を潰す。それこそがレトインが見いだした策だった。






BECAUSEスリービコーズ


第32話

 「失われた希望」






「発射口になってるギターを壊すわけね…

分かったわ!やってみる!」   



善と大悟は、志保に全てをかけるしかなかった。



「頼んだぞ!!志保!!」



「私のギターをですって…?

そんなこと、絶対させないわ!!」



作戦はすべて綾音に筒抜け。


無論、綾音がギターを簡単に壊させてくれるはずがない。

それだけは必ず守ってくる。



「志保なんか…近づかせないようにしてあげる!!」



綾音は、今奏でていた“怒りのメロディー”を、更に激しく引き始めた。



「うっ…!!」



善と大悟が、綾音の魔術に引き込まれていく。



「だぁ~…くそっ!!」



今までは善と大悟が斬り合っていたが、今度は善達は志保とレトインに攻撃を始めた。



「志保!危ねぇ!!」



善が志保にイフリートソードで攻撃を仕掛ける。



「もう!!!」



志保が水のバリアの壁を作り、善の攻撃を食い止めた。



「何やってんのよ!!」



「す、すまねぇ…」



レトインには大悟が攻撃を仕掛ける。


まだ大悟に多少の自我があるのか、攻撃は鈍い。

そのおかげで、レトインもなんとか大悟の攻撃を回避した。



「チッ…バカ野郎共が…


(こんな状況じゃ…作戦もクソもあったもんじゃない…)」



このままでは、こちらが自滅するのも時間の問題。

普段は冷静なレトインにも焦りが見える。


ずっと優位に立ち続ける綾音は笑いが止まらない。



「はははっ!!


例え志保に私の能力が効かなくても、あんたらを倒すことなんて容易いこと!!


作戦なんか立てたって、そんなの無駄よ!!」



大悟は何かを悟るようにして、一言ぼそりと呟いた。



「いや…無駄なんかじゃねぇな」



「!!なんですって!?」



そして、大悟はある一つの覚悟を決めた。


言葉を詰まらせながら、ゆっくりと志保に話しかける。



「もうこんな情けねぇ思いはごめんだ


なぁ志保 おまえの能力は俺達の能力に“相性”がいい…」



志保の持つ水の力は、大悟の土の力はもちろん、善の火の力にも相性は決して悪くはない。


深刻な顔をし、言葉を選びながら話す大悟。 

志保が大悟の異変に気づいた。



「大悟…?


相性がいいなら…それがどうしたのよ…?」



言葉を慎重に選び続けていた大悟が、とうとう思いきってすべてをぶちまけた。



「俺達はもう、使い物にならねぇ…


だからいっそのこと、俺達を倒してくれ!!」



「!!!


な、何言ってんのよ!ふざけたこと言わないで!!」



想像もしなかった大悟の発言に、志保は驚きを隠せない。

しかし、どうやら冗談でもなく、大悟は本気のようだ。


驚いた志保とは違い、大悟が言い放った奇策に、善は笑って答える。



「へへっ!大悟!それは名案だな!!」



「善!!あんたまで何を言ってるの…」



おどおどする志保を前に、今度は善も真剣な眼差しで志保に言う。



「確かに大悟の言う通りだ

俺達がいても、足手まといの何者でもねぇからな…


だったら俺達はかえっていない方がいい


そうすれば、やつとも戦い易くなるだろうよ!!」



「そんな…そんなこと私にはできないよ…


それに…私、あんたたち二人を倒す力なんて…もう…」



どんどん表情が暗くなっていく志保。


そんな志保をじっと見つめるレトインは、大悟の策に対し、冷静に現状を割り出していた。



(もし仮に志保の体力が万全でも…

善と大悟を倒すことは不可能…


ましてや今は、志保はボロボロの状態…

この作戦は…




失敗する




しかし……

この作戦にかけるしかない…!!)



大悟の言った作戦は失敗するであろう。

だが、他に手は見つからない。


頭ではうまくいくはずないと分かっていても、他の選択肢がない。

この作戦に賭けるしかなかったのだ。


話の一部始終を聞いていた綾音は、どこか嬉しそうだ。



「なんだそのバカな作戦は?てかそれって作戦?

単なる自滅じゃん


興味あるね…見てみたいよ!どんな結末になるのかさぁ!!」



綾音は興味津々でギターを激しく弾き始めた。


あえて大悟達の思惑通りになるよう仕向け、

善と大悟が、引き寄せられたかのように志保のもとへと向かっていく。



(く、来る…私にできるの…?


こんなメンタルも体力も残り少ない私が、二人を倒すなんて…


どうすれば…どうすれば…)



志保の頭に不安がよぎる。


思い浮かべるのは最悪の結末だ。



私に二人は倒せるのか?


それどころか、私の方がやられてしまうだけなのではないか…?



嫌なイメージだけがひたすら流れ続け、刻々と“その時”は迫ってくる。


二人が徐々に志保の所に近づいていき、二人はもう目の前だ。



「はははっ!見せてよ…見せてくれよ!!


志保が仲間に殺されるところをさ!!!」



綾音には“先”が見えていた。

志保が二人を倒せるはずがない。


答えは…分かり切っている。



善が叫んだ。



「志保!!俺達のことは気にすんな!!

思いっきし行け!!!」



(違う…そんな心配じゃないの…

私はあなた達を信じてる


大悟や善がそう言うなら、信用して私はついていくよ…


けど…私があなた達を相手にして勝てるかどうか…)



志保の不安は大きくなるばかり。


それでも志保はやるだけのことはやろうと、リミテッドの力を溜め始める。


一切、不安が消えることはなく、ついに“その時”は訪れた。




終わる……




志保の頭には“死”がよぎった。


この時点で、力どうこう以前に、まず気持ちの面からして、志保はすでに“終わっていた”。



善と大悟が、剣を志保に向かって大きく振りかぶる。

そして、二人が一斉に剣を志保に振り降ろす。


剣が志保の体に触れる、その直前のことだった。



大悟が小さな声で志保に言った。



「バカ野郎…おまえが俺に勝てるわけないだろ…

倒せとは言ったけど…



誰が俺に“勝て”って言ったよ!?」



「!!!」



この一言で、志保は瞬時にひらめいた。




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