第31話「ろうそくの灯は消えることを知らない②」
善は怯えていたが、それに対し大悟は冷静だった。
「上空5000メートルでもだって…?
それならおかしいぞ
あいつが生み出したソニックブーム…
志保の次に近くにいたレトインは、なんのダメージも受けていなかった
もしそんな威力に広範囲なものなら、いっぺんに俺達は、一瞬であの世行きだったんじゃねぇか?」
「ははっ!!」
もっともな大悟の発言に、思わず綾音が吹き出して笑った。
「あんたら賢いねぇ~!二人とも!」
(二人って…レトインと大悟のことだよな?
俺じゃ…ないよな…?)
違うと思いながらも、一応、善は確認していたのだった。
「大悟の言う通り、本来のソニックブームは私に生み出すことは不可能さ!!
私の生み出すソニックブームは、威力も弱けりゃ、範囲もとても狭い
それに“メンタル”もかなり消費するし、出したいときにすぐ出せるような技じゃない」
綾音が自分の放つソニックブームを卑下する。
そう思われたが、実はそれは逆だった。
「それでも…やつのソニックブームをくらった志保は…」
善は志保の方に目をやった。
志保は今にも意識を失いそうで、えらくダメージを受けていた様子だった。
「そう!それでもあんたらを倒すには、十分な威力なのさ!!」
本来の威力のソニックブームなんてものは必要ない。
綾音が自信を持つ必殺技。この技に、決して卑下していたわけではなかったのだ。
早くも大技を繰り出した綾音に、大悟がさとった。
(メンタルを多く消費するのに、この技を使ったってことは…
綾音も相当追い込まれていたってことだな
これがこいつの切り札だったわけか!!
べらべらと色々教えてくれたが、確かに俺らに防ぐ術はない…
きっともっとメンタルを使えば、より強力で広範囲のソニックブームを放つことが可能だろうからな…)
どうすることもできない綾音の攻撃に、焦る善はレトインに助けを求める。
「レトイン!!やつのソニックブームを防ぐ手はないのかよ!?
知恵を絞って、何かいい案を出してくれ!!」
それに対し、レトインがうつ向いて静かに答えた。
「いや、その必要性はもうないのかもしれんな」
「えっ…?それってどういう…」
「志保が倒れた今、また振り出しに戻っただけだ」
そうレトインが言うと、綾音は颯爽と笑顔でギターに手をかけ、再び音楽を奏でだした。
「ははは!!おまえらごときを倒すのに、ソニックブームなんて高等技
使う必要はないんだよ!!!」
“怒り”のメロディー
善と大悟は、また綾音の能力の魔術にかかってしまった。
「これで二人で潰しあってればいいんだよ!!
ソニックブームを放てるようになるのに、どれだけの時間を費やしたと思ってるんだ!!
志保相手に使うことになっただけでさえ、こっちとしてはショックを受けてるってのにさ!!」
綾音の怒りのこもった、怒りのメロディーが響き渡る。
「だぁ~!!くそっ!!こればっかりは、どうしようもできねぇ!!」
善は大悟に斬りかかった。
「どうしようもできないなら…
どうすればいい!?善さんよぉ!!」
同じく大悟も、善を斬り倒しにかかる。
そこで口を挟むように綾音が言った。
「あきらめるかい?」
少し沈黙があったあと、善は堂々と答えた。
「いや、信じる」
「信じる…?何を信じるって言うのさ!?」
「志保を レトインを」
「この状況でも、まだ信じるって言うのかい!?
レトインってやつはともかく、志保はもう使い物にならねぇ
それにレトインが知恵を振り絞って策を見つけだしても、肝心のおまえ達がこれじゃあもう…
まるで勝負になってないじゃないか!!
終わりなんだよ!!」
綾音の言葉を書き消すように、バカでかい声を善は出した。
「終わらない!!!
なぁ…大悟…?」
何の根拠もない善の発言だが、大悟もうなずく。
「善がそう言うのなら、そうなのかもな」
「チッ…とんだ甘ちゃん共だね あんたらは
私には、もうその手しかない…って見えるけどね!!」
「………」
綾音がそう分析するも、善は黙った。
無言での善と大悟の二人の斬りあいが続いたが、剣術の腕は大悟のが上。
必然とこうなることだったのだろう。
大悟の攻撃が善の体に見事に入った。
「ぐっ!!!」
「善!!!」
術にかかってはいるが、あまりの事態に一瞬素に戻る大悟。
その隙を大悟が突かれ、今度は善の攻撃が大悟に入る。
「ぐわっ!!」
「はははっ!その調子だよ!!
仲間割れ…見てて実に爽快だよ!!」
嬉しそうに綾音が高笑いして騒ぐ。
“仲間割れ”との言葉に、善がすぐさま反論する。
「仲間割れ…?
いや…これが俺達の“チームワーク”だ!!!」
自信満々にそう答えた。
「チームワーク?笑わせないでよ!どこがよ!
あんたが今誰を斬っているのか分かる?
あんたが仲間と呼んだやつよ!それのどこがチームワークなのかしらね!!」
意味の分からない善の発言に、綾音は善を見下している。
綾音にはとてもじゃないが、理解できなかった。
しかし、その時
ある人物が便乗するように言った。
「そうよ これのどこがチームワークなんだか知りたいわ!!」
「!!!
し、志保…!?」
その声の主は、先程ソニックブームをくらい、瀕死状態になったはずの志保だった。
フラフラになりながらも、志保はまた立ち上がっていた。
「志保…!?あんたはもう動けないはず…」
もう動くことはないと思われた志保の復活に、綾音も驚きを隠せない。
「そうね
以前までの私なら、とっくに倒れてたかも…
でもね、ある男に関わったせいでね、どうやら私、かなりしつこい女になっちゃったみたい」
怒りのメロディーが流れ続ける中で、善は口元を緩ませニヤけた。
「それでこそ、ライジングサンのメンバーだ!!」
志保を心配して、レトインが声をかける。
「大丈夫なのか…?志保…」
「さぁ…無理してでもやるしかないでしょ
あいつらじゃ頼りになんないんだから!!
それより…どうすれば勝てるのよ!?やつに」
心配などはいらなかったようだ。
志保は勝つことだけを考えている。
レトインには十分時間があった。
志保が倒れ、善と大悟が斬りあう中で、虎視眈々と策を練っていた。
そして、レトインは一つの活路を見いだしていた。
「そうだな…まずは発射口を潰すんだ」
「発射口?」
「あぁ やつのすべての攻撃の起点は、あの“ギター”だ
起点となっている、その発射口であるギターを破壊しろ
次の手は、またそこからだ」
「なるほどね…分かったわ!!」
実はこの危機的状況の中、ライジングサンのメンバーは、“信頼”という形で強く結ばれていたのだ。
善は仲間の全員を信じていた。
倒れていても志保は必ず目を覚ます。
レトインが、知恵を絞って突破口を見いだしてくれる。
その間大悟が、術にかかっても、ずっと耐え続けていてくれる。
“信頼”
仲間を信じる思い、一人一人の思いが、今ひとつとなった。
善が火種となり、一本のろうそくに灯した“希望”の炎は
消えかけてもなお、光を放ち続け
ろうそくに宿る炎は、瞬く間に大きくなり、ゆらゆらと揺れ動いている。
第31話 “ろうそくの灯は消えることを知らない” 完




