ええっ!? 内緒にしていたけど、俺達付き合ってます 4
部活に戻った私を先輩は待ってくれていた。ただ、いつもと違って、先輩は楽器を置いてずっと窓の外を見ていた。やがて、私が戻って来たことに気付いた先輩は、振り返った。
「おそかったね。」
「すみません。」
ただ、謝るしかなかったんだけど、先輩は、笑顔で迎えてくれた。
「とりあえず、はじめようか。」
「はい。」
こうして、少し気まずい雰囲気はあったんだけど、なんとかこの日の練習は無事に終了した。そして、帰り支度をしている時だった。先輩が私に話しかけてきたのは、墨田先輩が帰って二人になったときだった。
「香・・どうして言ってくれなかったんだ」
「ごめんなさい。麟太郎にきつく言われていて」
私は麟太郎と打合せた通り話をすると先輩は納得してくれた。しかし、先輩の最後の一言に頭が真っ白になった。
「けど、残念だったな。日曜日、香と一緒に行けると思っていたんだけど」
けど・・
「ま・・相手が麟太郎だからな」
その一言で我に戻ることが出来た。
ようやく練習が終った二人だったが、やはり、なんとなく気まずい。淳也にしてみても、さっき、思いもよらない一言を言ってしまったと後悔をしていた。やがて、帰り支度を済ませた香が目の前で頭を下げた。
「お疲れ様でした。」
「ああ・・お疲れさん」
そう言って、彼女の後姿を見送っていた。
なぜ?あんなことを言ってしまったのだろう?校門を曲がって消えてしまった彼女の姿を目で追っていた。その消えた存在を確認した淳也は、俯いていた。そこへ理恵がやって来た。
「淳也さん。帰りましょう?」
「あっ・・ああ・・」
「どうしたの?」
「別に・・・」
ぼちぼちと帰っている最中、理恵との話を適当に聞いているとやがて、理恵とも別れ、独りになった。そして、いつもならまっすぐ帰るところを。家の近くにある小高い公園へむかった。そして、徐々に暗くなる町並みを見ていた。そして、淳也は家に帰っていった。
家に帰った理恵は、いつも通り淳也に連絡をしたが、取れなかった。今までこんな日は幾度となくあり、多分、機嫌が悪いんだそう思った理恵は携帯を置いて一人ベットにもぐり込んだ。そして、今日のことを思い出していた。
麟太郎の奴・・・何時から香と付き合っていたの?そんな疑問が脳裏をかすめていた。そう彼女は知っていた麟太郎が自分に好意を寄せていたことを、しかし、彼女は自分を優先した。だから、その疑問の答えは、ま・・いいか・・・だった。それより、麟太郎のあの行動によって、彼女の不安は一掃されていた。そう、淳也が香の彼氏役をしなくなたことだった。
さっきまでなっていた携帯、それを見ていた淳也だったが、あえて取らなかった。それは理恵からだと分かっていたことと、なんとなく一人になりたいこと、そのことが彼の心を支配していた。そして、香が部活に入って来たときのことを思い出していた。
4月の新入部員の中に彼女はいた。実は、無双高校のブラバンは、有名で毎年入部希望者が多く、ブラバンだけで1軍と2軍に分かれていた。ただ、普通だと新入生はみんな2軍スタートになるのだが、ここの部は、まずテストをして、振り分けを決める。特に淳也の楽器は、彼自身の人気から女子が殺到していた。全く演奏できない娘からかなりの腕前まで、しかし、今回のテストは、2軍からのを含めても、淳也にとっては不服なものだった。そんな中で、テストに遅れて飛び込んできたのが香だった。正確には、麟太郎から場所を間違えた間抜けな奴がいるって連絡が入ってきたから、少々の遅れは認めたのだが、多分、不合格だろう。そう淳也は思っていた。大体、場所を間違えて、しかも、ギリギリにきて、いい演奏が出来るわけがない。そう高をくくっていたのだった。
しかし、香演奏は淳也の心を捕らえた。
「遅れて、申し訳ございませんでした!!」
そう言った彼女は、大きく息を吸ったかと思うと演奏を始めた。淳也も先生達と2軍のめぼしい人間の相談をしつつ、彼女の演奏を聞いていた。途中、ふとした瞬間から彼女の演奏をじっと聞き入っている自分に気が付いた。そして、淳也は、香を1軍に入れることにした。しかし、いざ練習に入るとただ楽譜通りに全くきっちり演奏するだけの彼女にしばらく腹を立てていた。それがある日、その演奏ががらりと変わった。
多分・・あの時、だろう・・・付き合い始めたのは・・・
一方、家に帰った香は、ベットに寝そべっていた。たった数日間の彼氏・・・か・・・しかも、誰にもいえない・・そして、麟太郎がやってくれた行為は、私だけでなく、みんなに対してだった。それがなんとなく嫌な自分がそこにいた。そう言えば、あの時も麟太郎に助けられたっけ、なんとなく麟太郎とのことを思い出していた。
一番最初は、ブラバンの入部の時だった、どんくさい私は、何故かブラバンがテストを行う教室を間違えていた。と言うより後でわかったんだけとこれも知代が仕組んだことだった。それは、入部希望者用の案内を取ってきてくれたのが知代、そして、彼女は、教室の所をわざと摩り替えていたのだった。
そこに描かれた通りの教室へ行くと、そこはなぜか美術室って?慌てていた私に私に声をかけてくれたのが、麟太郎だった。
「お前、何してるんだ?」
「えっ?あ・・・桜川君、ブラバンが集まる場所知ってる?」
そんな焦っている私を見て、麟太郎は誰かに電話を始めた。そして、私の手を引っ張って、その教室まで連れて行ってくれた。
「あ・・・ありがとう」
「がんばれよ・・・じゃぁ・・」
こうして、私はテストを受けることが出来たんだけど、このことがブラバンであとあとしこりが残っているとは気付かなかった。そして、何故か1軍に合格、そして、先輩と練習が出来ることになったんだけど、結局実力のない私は、毎日先輩に怒られてばかりだった。毎日が地獄の日々、やめたい・・そう思えるようになった頃、再び麟太郎が私の前に現れたんだ。そして、あのアドバイスをしてくれた。あの時から麟太郎は、私をおちょくるようになった。
そして、今回も麟太郎に助けられた・・・けど・・・なんとなく・・・あることを思い出した。麟太郎と理恵が付き合っていないと言う事実を・・・みんなはあの二人がお似合いのカップルだと思っていたけど・・・・私が膝を抱え顔をうずめていると――――って!!!横においていた急に携帯が鳴り出した。しかも、相手は麟太郎・・・
「あの二人には口止めしておいたから」
「うん・・」
「それとこのことは口外するなよ」
「うん・・・わかってるって」
「じゃぁ・・」
「あ・・待って」
「なんだ・・」
「今日は、ありがとう」
「あ・・」
「じゃ・・切るね・・」
「ああ・・」
―――ああ~びっくりした・・・・タイミング良すぎっ・・・とりあえず、あのことは私達4人だけの秘密、後は、打合せ通りに・・・・か・・
こうして向かえた週末、時々、理恵からの視線は感じたものの、何とか乗り切ったみたい。けど、違うのは、先輩とのやり取りがなんとなく違和感があること、そして、もう一つ、麟太郎と放課後、打合せと言うことで数分話をするようになったことだった。そして、明日は、運命の日・・・そう日曜日、




