表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/71

No.50 その目に映るのは……

「ああ、なるほどなぁ。この間の芝生消失は、お前の仕業だったと」

「そ、そうではあるんですけどね、あれは不可抗力ですよ、不可抗力」


 ガイウス先生に協力を仰いでから一日。僕は彼をまず真っ先に、先日『ちょっとだけ本気』を出した時の爆心地へと案内した。


 先生は額に手をあて、大きく溜め息をつく。

 呆れたように首を横に振る先生を見て、僕はなんとか誤魔化すように言い訳した。


「殺されかけて、ついカッとなっただけですよ。全力で抑えてはいたし、むしろ被害がこの程度済んで、ラッキーなくらいです」


 円状に芝生が失われ、土が茶色く顔を出す地面。

 生命力の強い雑草が、まばらに芽を出すのみで、ついこの前まで青々と茂っていた芝草の面影は、もうどこにも無い。


 でも、これでも威力を抑えていたってのは事実だ。本当の本気だったら、今頃この辺り一帯、荒地になっていた事だろう。


「まぁとにかく! サイラス・グラウリス捜索、さっそく始めていきましょう!」


 無理矢理テンションを上げ、話を本筋に戻す。目的を見失ってはいけない。


 本来ならアイツを助けるような義理は無いが、今回の件は十中八九僕のせいだ。

 つまり、もしサイラスが見つからなければ……


  ……僕のメンタルが罪悪感で死ぬっ!


 僕の心の安寧の為に、何としてでも迅速に解決せねば……


「あぁ~、はいはい。とんだ面倒事だな、全く……それで? 俺は何をすれば良いんだぁ?」


 地面にしゃがみ込み、引っこ抜いた雑草の芽を眺める先生。相変わらず気だるげな様子ではあるが、わりかし乗り気のようだ。


「先生には、まずこの辺り一帯の魔力を見てほしいんです」


 ちらっと、この前『穴』のあいていた、今は何も無い空間に目を向ける。


 それくらい自分でやれば良いじゃないか、と言われるであろう事は分かる。でも実際、そう上手くはいかないものだ。


 確かに僕だって、魔力を”見る”事は出来る。ただ”見る”くらいなら、さほど難しい事では無い。

 でもそれは、何度も言っている通り、『魔力探知』の応用。正確に言えば、”見て”いるのでは無く、”感じて”いるのだ。


 それがどうした? と思われるかもしれないが、実のところ、この違いはかなり大きい。


 分かりやすく言うなら、これはモノクロの写真を見ている時の感覚と近い。

 白と黒だけで構成された映像でも、陰影で大体の色は想像出来るだろう?

 でも、言ってしまえばそれまでだ。本当の色までは分からない。


 これが”感じる”と言う事。


 今度はカラー写真だ。

 そこに写っているものは、どんな色をしている?

 そんなの、見りゃぁすぐに分かるだろう?


 これが”見る”と言う事。


 ほら、全然違う。


 僕は前者、ガイウス先生は後者。

 ありのままが、見えるか見えないか。

 似たようなものでも、精度は段違い。


 まぁ、なんだ……


 要するに、先生は僕が見落とすような細かい痕跡も拾えるって訳だね。


「何だこりゃぁ、酷いな……ああ、ちゃんと見えてる。お前が知りたいのは何だ?」


 先生は虚空に向かって目を凝らす。

 ところでなんだが……


 ……酷い、って何が? よもや僕の事じゃないよな……?

 いやいや、そんな訳……


「そりゃもちろん、昨日話した空中の『穴』についてですよ。何か痕跡は残ってませんかね?」


 ……『穴』の事を言ってるんだよな? うん。きっとそうだ。間違い無い。 


「空中……ったく、とんだ視界不良だなぁこりゃぁ。ちょっと待っとけぇ、お前の魔力が充満してるから、時間かかるぞぉ」


 ……ああ、やっぱり僕のせいなのね。

 もういいよ、この流れ。何回目だよ?


 ……いや、僕のせいなんだけどさぁ!?


「ああ……はいはい、すみませんね。状況が悪かったとは言え、確かにやりすぎましたよ」

「すみませんって、絶対思ってないだろそれ。いや、別に謝る必要は無いんだが……」


 投げやりな態度で、うわべだけ謝る。

 もちろん後ろめたさなんか、微塵も感じていない。


 先生も、そんな事は承知の上だ。

 僕の適当な謝罪は、さらっと流された。


 そして待つ事数分……


「よぅし、あらかた見終わったぞ」


 じっくりと周囲を観察していたガイウス先生が振り向く。

 思ったより早かったな。


「……ん? 何やってんだ、お前?」


 先生の目線が、僕の手元へ向かう。


「え? これですか?」


 手のひらの上の空間が僅かに歪み、パチンと弾けて元に戻った。

 ……クソッ、また失敗か。


「ちょっとした実験ですよ。『穴』を自分でも再現出来ないかなぁ、と思って。でもやっぱり……駄目ですね」


 敵の技とは言え、実用化すれば便利そうだから色々試してはみたけれど……そう上手くはいかないかぁ。

 やり方が間違ってるのか、考え方が間違ってるのか。

 出来そうな気はしなくも無いんだけど、どうにもこうにも……


「まぁ、特別今必要な事では無いです。本当にただの実験なんで。それより……」


 顔を上げる。『穴』の作り方なんて、今はどうでも良い。

 最優先すべきは、サイラスを捜す事。

 そして、今一番知るべきなのは……


「何か分かった事はありますか?」


 ——この現場を見て、先生の目に”何”が映ったのか、だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ