表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/71

No.43 心配すべきは……

「緊急事態だ二人共」


 色々あったその日の夜、僕はメルトを部屋に招いて、いつもの三人で緊急会議を開いた。議題はもちろん、『サイラス失踪事件について』だ。

 ベッドに腰掛け前のめりになり、手を組んで、いかにも深刻そうな声色で口を開く。


 半分は本気、もう半分はただのカッコつけ。いや〜、一度こう言うのやってみたかったんだよね〜。胸の奥底にある厨二な衝動が疼いて、なんと言うかすごく楽しい!


 そしてもちろん! 僕の頭の上には……


 ——ハトォォォォ!!


 いぃや締まんねぇぇぇぇ!!


 ……ふぅ〜、一旦落ち着け……

 ……まさか僕が作ったこのシリアスな雰囲気が、たかがハト一羽でこんな馬鹿馬鹿しい構図になるなんて……フッ、悲しい。


 それはそうとハトめぇ、あの時は早々にどっか飛んで行ったくせに、全部終わった瞬間あーっという間に帰って来て……よくも僕を置いて一羽(ひとり)で逃げたな、裏切り者め。


「おい、緊急事態ってんなら早く話してくれ」

「おぉっと、そうだったそうだった」


 ……フム、また思考が脱線したな。元に戻さなければ。


「サイラスのバ、ん゛っん゛ん。サイラスがいなくなってからまだ一日。だが! たった一日ながら、この件に関する重大な事実が発覚した」

「君、今サイラス君の事馬鹿って言おうとして……」

「言ってない。気のせい。サイラスクンハバカジャナイヨ」

「もうアイツの事は馬鹿で良いから。それで? 何が分かったんだ?」


 ……メルト、辛辣だねぇ。まぁだ昨日の朝の事根に持ってるのかな?


 っと、ひとまずふざけるのはこれくらいにして。


 緊急事態なのは本当なんだ。んな事やってる場合じゃない。


「……驚かないで聞いてくれよ。昨日、僕が挙げたサイラス失踪についての仮説は覚えてるだろ? ほら、『サイラスは何者かに誘拐された』ってやつ」

「うん。覚えてるよ」

「ああ、そりゃもちろん記憶に新しいからな。それがどうしたってんだ?」

「どうもあれは正しかったらしい」

「……は?」


 ……うんうん、やっぱそうなるよな。あんな馬鹿げた話、『こうなのかもしれない』の段階だったならまだ良いけど、『それが現実だぁ!』って急に言われても、まぁ普通は信じられんわな。


 実際僕だったら信じないだろうし。


「だからさぁ、どうやらあの仮説が正しかったっぽいんだよね」

「……あの馬鹿が誘拐されたって?」

「そうだよ」

「……」


 メルトは頭を抱え、大きく息を吐き出す。

 よっぽど衝撃だったのか、もしくは呆れているのか。その表情には、何とも言えない苦々しさが滲んでいる。


「……メルト、大丈夫?」

「……大丈夫だ。続けてくれ」


 ラーファルの問いかけに、メルトはうつむき加減にそう答えた。でも……大丈夫ったって、僕にはとてもそんな風には……


「……ねぇ、メルト、怒ってる?」


 僕と同じ事を感じたのか、ラーファルは心配そうにメルトの顔を覗き込む。


「いや、そんな事……」

「ほんとに……?」

「……少し」


 あ、認めた。


「別に……俺が何を思っていようがどうだって良いだろ。誘拐が真実だってんなら、証拠はあるのか?」


 ……今度はごまかしたな。サイラスが心配なら正直にそう言えば良いのに……


「……ツンデレかよ」

「あ? 何か言ったか?」

「いや、別にぃ~。ところで証拠ね。証拠なら……無いよ」

「は?」


 あ、やべ。今の『は?』はキレてる時のやつだ。……でも、『誘拐されたのは事実だけど、証拠は無いよ』なんて言われちゃぁな……こっちとしては大真面目なんだけれども。


「まあまあ、落ち着けっての。確かに証拠は無い。だけど目撃者ならいた。サイラスが攫われる一部始終を見ていた、って人がね」

「目撃者? 信用出来るの?」


 ……信用、ね。ごもっともなご指摘だ。はっきりとした証拠が無い以上、どんな情報も鵜呑みには出来ないからね。


 もっとも、人一人いなくなってるんだし。それで嘘の目撃情報を言う人なんて、普通ならいないだろうけど……まあ、世の中にはいろんな人がいるから。


「うん。誰から聞いたか……はちょっと訳あって言えないんだけど、とりあえず信用は出来る人だよ。それに……」

「それに?」


 ラーファルは訝しげに首をかしげる。……さて、一体どう説明したものか。


「あー、いやね……えっと、なんて言うか……」

「おい、もったいぶらずに教えてくれ」


 あ~も~、分かってるよ!


「……あのー……僕、会ったんだよね。その……誘拐犯に。……間接的にだけど」

「「……はぁぁあああ!?」」


 うおっと、近い近い! 気持ちはわかるけどさぁ。


「会ったの!? 誘拐犯に!? なんだってそんな事に!?」

「展開が早ぇ。会ったって何だ? 説明しろ」

「いやだから、間接的にだって。それを今から説明するんだっつの」


 僕に迫る二人をぐいと押し戻し、話を続ける。


「つっても、まず本当に会ったって事を証明しなきゃいけないんだよな。こんなん後からどうとでも言えるから、本来は証拠にすらならないんだけど……まあ無いよりマシか。二人共、これを見てくれ」


 サイドに垂れる髪をかき上げ、昼間に負った傷を二人に見せる。流石にもう血は止まっているが、肌に残る赤い直線が生々しい。


「ちょっ、どうしたのそれ!?」

「昼間にやられた。そこまで深い傷じゃないし、この程度なら特に心配する事は無いけど」

「いや、心配するしないの話じゃないだろ! なんでそれをもっと早く言わなかったんだ!?」


 二人は再び僕に詰め寄る。


 なんでって、そんな事言われましても……


「だって……こんなのちょっと痛いだけで、実害は無いし……」

「痛いんなら実害あるだろ!!」


 ん゛んー、それ、は……否定できないかも。いや、でもこんなのかすり傷……


「エス、君ね……もうちょっと自分の事大事にした方が良いよ」


 うぇ……? 僕としてはもう十分大事にしてるつもりなんだけど……


 ……え、これもしかして僕がおかしいのかなぁ!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
久しぶりに読みに来たのですが、まだ鳩が頭に陣取っていたw サイラス事件からまだ日も浅いので、スピード解決が望まれますね〜。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ