↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/137

No.42 本気になるほど馬鹿馬鹿しい

 目の前に相手がいないのだから、こちらから攻撃しても意味がない?

 はっ! そんな馬鹿な話があってたまるかよ。


 この光の矢がありとあらゆる方向から向かって来るのは、全て『穴』を通してここまで転送されているから。

 要するに、光が飛んで来るこの瞬間。ほんのコンマ一秒にも満たないこの時間だけは、僕と相手のいる空間が一直線に繋がっているんだ。


 でもその一瞬のタイミングを掴むのは至難の業。

 ならどうするかって?


 ……こうするんだよ。


『大気ヨ、風ヨ、遍ク震エ……爆裂セヨ!!』


 ……たった一瞬のうちに起きた事だ。

 周囲が赤く染まっていき、まばゆい赤光が視界の全てを飲み込んだその刹那。

 けたたましい轟音と共に、赤光は白光へと変わり、炸裂した。


 衝撃波が同心円状に広がり、辺りには爆風が吹きすさぶ。

 不幸にも光に巻き込まれた芝や雑草は、塵も残さず消え去った。


「フフフ……アハハハハ!!」


 どうだ! ここまでしたならばただでは済むまい。

 人間なら確定で死、同族相手でも鱗がはげるくらいの威力が……


「……チッ、駄目か」


 またもや『穴』からの攻撃の転送。

 今度は全部上からだ。

 毒か酸の類だろうか? 見るからにヤバい液体が雨のように降り注ぐ。


 むぅ……直接攻撃を仕掛けた訳じゃないからしょうがないとはいえ、流石にこれだけじゃ効かないか。

 でもさっきまでのおちょくるような光の矢で返さないって事は、全く効果が無かったって訳でもなさそうだ。


「ちょっとは認めてくれたって事で良いのかな!?」


 上空に向かって声を張り上げる。

 もちろん返事は無い。その代わり僕の問いかけに応えての事なのか、毒水の雨に電撃が混ざる。


 知ってんだよ!

 どうせこれも結界は無意味なんだろ! 

 本当にたちの悪い避けゲーめ。


『跳ネ返セ、水鏡!』


 ……水の方は水鏡である程度打ち返せる。だけど重力が働くせいで、圧倒的にこっちの方が分が悪い。

 その上この水をつたって来る電撃だ。

 これが一番怖いんだよ。

 水プラス電気はいくらなんでも危険過ぎるだろ!


 毒はともかく、この体にどれだけ電撃耐性があるのか分からないから、これだけは絶対に食らいたくない。


 どうする? このままだと負け確、また逃げてるだけに逆戻りだ。

 安全なところから一方的になぶろうとか、悪趣味なやつめ。


 ……待てよ、悪趣味?


 ……思えばさっきからおかしいじゃないか。

 攻撃は全て当たれば致命傷になるようなものなのに、殺意は一切こもっていない。


 殺す気が無いのなら、本当にただの嫌がらせ?

 それなら、こっちもまともにやり合う必要は無いのではないか?


「ああ……そうか。単純な話じゃないか」


 敵さんよ、僕を弄ぶのは楽しいかい? 

 でも、いつまでもその気分が続くなんて……思うんじゃねぇぞ!!


 「ふふ……弄ばれる側の気持ち、そっくりそのまま味わわせてやる」


『幾千幾万、星ノ軍勢。汝ハ閃光ノ矢ヘト化ス』


 詠唱と共に右腕を天に掲げると、青白い光が僕の右腕を中心に円を描く。


 これで準備はオッケー。あとは発動させるだけ。


 『――疾ク奔レ!!』


 上空を見据えて叫ぶ。

 円は一瞬震えると、大きめの腕輪くらいのサイズから半径二メートルほどにまで拡大。

 円環が整然と並んだ光の矢へと変化し、数多の青白い光の筋が、空に向けて飛んだ。


 最初に僕が受けた攻撃の物量特化バージョン。

 威力は半減するにしろ、数千単位の矢が毒雨を押し返す。


 しかもこの攻撃は、僕が解除しない限り半永久的に続く。

 もうこれ以上の隙を与えてなんかやるもんか!

 ほら、お前が始めに僕をおちょくってたのと同じ攻撃だぞ。

 まさか自分がこれの的にされるとは思ってもみなかったか?


「おい! どこからかは知らないが見えてるんだろ! なら分かるな。これでもまだ続けるか?」


 僕の問いは穴の向こうに消える。反応は何一つとして返ってこない。

 でもさっきまでとは違い、形勢は逆転してこっちの優勢。

 もうさっきまでのようなやる気のない攻撃は僕には当たらない。


「まだやんのかって聞いてんだ!!」


 圧倒的な物量を盾に攻防を続ける。

 すると突然、ピタリと向こうからの攻撃が止まった。


 不審に思って僕も攻撃の手を止める。

 空には一つの裂け目が残り、その奥から何かの気配をほんのわずかにだが感じた。


「……フフ……」


 穴の内側から、小さく笑い声がした。

 人を嘲(あざけ)るような嫌な笑い方だ。


(なんだよ……どこまでも薄気味悪いなぁ)


 そんな思いを込め、ジト目で穴の内側を見つめる。

 もう人の気配は感じなくなっていた。

 ほどなくして穴も消え失せる。


 遠いところから好き勝手やって、逃げる時には、ほんのわずかな痕跡すら残さない。

 まったく、都合のいい能力だな。

 

「……い、さっきの光……から……」


……人の声。まぁあれだけ暴れたら、流石に誰かしら気づくか。

 面倒な事になる前に、さっさとここから離れよう。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「う~ん、流石に遊び程度じゃ無理かぁ。どうにもちょいと怒らせちゃったようだねぇ……」


 某所、としか言いようのないところ。

 女は太い木の枝の上に腰掛け、呟く。


 女はリズミカルに足をバタつかせると、一度大きく伸びをして、枝から地面に飛び降りた。


「まぁ、子供とは言え青竜。手抜きでやりゃぁこうなるもやむなし。せっかく餌に本命が食いついたんだから、急いで逃すのはもったいない。じっくり気楽にいきましょう」


 実に、奔放。

 まさにそんな言葉がふさわしい。

 女は不敵に微笑むと、パチンと指を鳴らし、も(・)う(・)一(・)人(・)の(・)観(・)察(・)対(・)象(・)の元へと『穴』を繋げた。


 穴の向こう側に、少年の姿が覗く。


 表面的には、ただクラスメイトと談笑しているだけのように見える。

 普通の感性を持つ者、とりわけ彼の実情を知らない者の目には、その光景はそう映るだろう。


 だが、彼の心情、本音。その何一つもを知らないという条件は同じなのにも関わらず……


 ……その心の矢印が、その場の誰の方も向いていない事を、なぜだか女は知っていた。

ちなみに余談。この時のエスのムカつき度合いは、例えるなら、痒いところにギリギリ手が届きそうで届かない。そんな感覚です。


ってな訳で(謎)次回、番外編です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。