ファノンの処遇について話し合うようですよ?
エリンの杖は鍛冶屋では売ってないので、魔具屋に行き、Bランクのパーティーにいる魔法使いが扱うような性能の杖を小金貨3枚で買った。
杖は使用者の魔力を魔法に適した形にする媒体であり、微量ながら杖の素材などによって属性補正がつく。
エリンの買った杖は、水と風の魔法の威力を上げる補正効果がついている。
魔法は大きく分けて、『火』『水』『風』『土』の4つの属性に分かれる。
属性には適性があり、適性がない限りその属性の魔法を行使することは難しい。
出来なくはないが、並みの努力では実用レベルにすることはできないらしい。
細かく言えば、適性を持っていないと使えない属性として『光』『闇』『癒』がある。
『癒』は珍しいわけではないのだが、『光』『闇』は魔法を使える人の中の一万人に一人くらいの確率でしかいない。
基本的に適性は一つしかもっていない魔法使いがほとんどで、二つも適性を持っていたら、国中の貴族がこぞって雇いに来るほどだ。
しかし、どこの世でも例外はあるようでエリンは『水』『風』『土』の適性を持っていたりする。
そのうえ、水と風の属性を混ぜた複合属性の『雷』まで使える。
ちなみにウィズも『火』『水』『風』の三属性持ちだったりするため、エリンはSランク冒険者になれる才能はあると言えるだろう。
そんな才能あるエリンは安く杖を買えたことに喜び、先に武器を買ったリンとエチカとともにルンルン気分で俺の部屋でくつろいでいたりする。
ファノンの処遇について話し合うため、リンたちは自室に戻っていいと伝えたのだが、俺の部屋から出ることを断固として拒否された。
言い分としては、「ファノンちゃんと二人きりにして間違いがないように」だそうだ。
そんなことするつもりはないと伝えたら、「なら居ても大丈夫ですね」と怖い笑顔を浮かべながら三人が迫って来たので了承せざるを得なかった。
俺の信用がなさ過ぎてちょっと泣きそうだ。
「…あの、それで私はどうしたら許してもらえるのですか?…ちょっと恥ずかしいですけど私の体程度で許してもらえるのなら精いっぱい頑張るので――――」
「いや、そういうのはいいから!そういうのじゃないから!」
ファノンの言葉に俺はリンたちのいる方から悪寒を感じたため、急いでファノンの考えを訂正する。
「ファノンがしたことは生きるためにしょうがなかったとはいえ、一般的に悪いことだし、本来、衛兵に突き出して罰を受けなくてはならないんだが、見逃そうとは思っている」
俺の言葉に、それまで心配そうにうつむいていたファノンは、顔をあげ、驚いたような表情をする。
「だが、俺からとったお金が全額戻ってきたわけじゃないし、その分を物でもらおうとしてもファノンは何も持ってないだろ?」
「……やっぱり、体…ですか?」
「そうじゃないんだが、まぁ、そうとも言える。俺の身の回りの世話という形で働かないか?もちろん、そういうのは無しでな」
その言葉が意外だったのだろうか、ファノンは硬直している。
「まぁ、やることは基本は掃除、洗濯くらいか?後は少し遠出するときの料理くらいか。受けてくれるなら最低限の衣食住とファノン自身の保護は約束する。内容は話し合いで詰めるとして……どうだ?」
やっと話を呑み込めたのか硬直から抜け出したファノンは顔をゆがませ、その頬に熱いものが伝う。
その小さなコブシは血が滲みそうなほど強く握られている。
「本当にそんな条件でいいんですか…?私、家事なんてやったことないですし、そもそも衣食住も揃えてくれて、保護もしてくれるならそっちの利益なんてないじゃないですか」
「利益ならあるよ。荷物の整理とか大変だし洗濯だって面倒だ。それに…外の依頼から帰って来て疲れているとき、誰かが迎えてくれると嬉しいかなって」
十五歳の時、冒険者になり、そろそろ三年ほど経つがこれはずっと思っていたことだ。
仲間がいることで寂しさは緩和されるが、仲間は苦楽を分け合う存在であった。
そのため、誰かが自分の帰りを待っててくれるなら、それはとてもうれしいことだと思う。
「わかりました。これからよろしくお願いします!」
目に涙を浮かべながら、こちらに笑いかけるファノンは、どんな芸術作品にも負けないほど美しかった。




