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時間を潰す方法




さて、結局今日することは何も決まらずに、時間が少し過ぎた。

そろそろ今日することを話したい。


「それじゃあ、他に今日することってありませんか?」


そう尋ねてみる。反応は予想されるけど、一応ね・・・。



「そうですね・・・。」


「あ!それじゃあ、遊戯ルームを案内するのはどうかな?」


遊戯ルーム??


「そうだな。そこを説明しておくか。」


武田さんの提案に、石川さんは同意し、向井さんも頷いていた。

え、何、この家、まだ部屋があったの?


私が戸惑っている中、三人はソファから立ち上がり、さっさと紅茶のカップを片付けだした。

そして、向井さんが私の前に手を差し伸べる。

様になってるなあ・・・。


「えり、部屋に上着があると思うので、それを着て来てください。」


「えっ上着ですか?」


「はい。ここを一度出なければならないので。」


ここに来て、予想外なことに、この家から出ることになった。

どうやら遊戯ルームとは、この家の中にある所ではないらしい。


いや、私としては、この家にずっと引きこもっていなければならないと思っていたから、外に出られるのはとても嬉しいことなんだけど・・・。

まさかこんなに早い段階で外に出る話が出るとは思わなかった。

あまりにも呆気ない、空との再会になりそうだ。


それにしても・・・。


向井さん、結婚生活で夢見ていた、手を握る行為をあっさりしてしまっているんだけど・・・こちらも思ったよりも呆気なく目標を達成できたのでは・・・。


私の手を支える彼の手をじっと見る、私の視線に気がついたのか、向井さんは少し恥ずかしそうに俯いた。


「あ、あの・・・。これは、手を貸す行為であって、私のしたい手を握る行為とは違いますので・・・。いえ、これもこれでとても名誉なことであり、えりと接することが出来るのはとても嬉しいことなのですが、私の理想とした手を握る行為はこれではないので、それはえりに誤解してもらいたくは・・・。」


彼は一体何を言っているんだ。






それから各々部屋に上着を取りに行って、すぐに玄関に集合した。

外の気温は分からないけど、この前は寝間着のまま外を歩いていても寒くはなかったので、薄い上着で十分だと私は判断したのだけど、三人の様子を見るに、私の予想は当たっていたようだ。

それぞれ薄い上着を羽織って、靴を履き、靴箱から私の履く予定の靴を用意してくれた。


「すみません。まだ靴を購入していませんよね。暫くはこちらを履いて下さい。」


そりゃあこんなに早い段階で外に出ることになるって思わなかったしね。

今日は遊戯ルームを見に行ったら、夕方にでも靴を通販で購入しておこう。

さっそくすることが一つ増えた。


用意してもらった靴は、シンプルなサンダルだった。

ちょっと出かける程度だったら、サンダルでも十分なので問題ない。

サイズも少し大きいくらいだけど、歩きづらいほどでもない。

これは・・・向井さんのかな?出してくれたのが彼だし、多分そうだよね。


「ありがとうございます。」


お礼を言って、ドアをあけてくれた石川さんに続いて、三日ぶりに外に出た。






と言っても、部屋から出ただけで、目の前はエレベーターのみ。マンションの中なので、まだ外は見えない。


「えり、寒かったら言ってね。」


「丁度良いくらいだから、大丈夫。」


そう返事をして、私はきょろりと周囲を見た。

この世界に来たばかりでこのエレベーターの目の前に来た時は、あんまり周囲を見る余裕は無かったけれど、エレベーターの横にはそれぞれの階の案内が掛けられていた。

冷静に判断しようとしていたけれど、やっぱりあの時はあの時で、周りを観察する余裕は無かったようだ。


「どこまで移動するんですか?」


エレベーターの下ボタンを押す石川さんに、そう質問する。

ルームと言っているくらいだから、移動するとしてもすぐ近くの距離にあるんだろうけど、ちょっとでも外に出られるのは嬉しい。

私は少しだけ気持ちが高ぶっていたようだった。


私の表情を見て、石川さんは少しだけ申し訳なさそうな顔をした。


「あー・・・、えり、外に出るわけじゃないんだ。」


私の表情を見て察した石川さんに、いきなりそう断りを入れられた。

私の表情からよく読み取ったな、と驚きたいところだが、それどころではない。



外に出るわけじゃない・・・。



「え、でも、遊戯ルームって・・・。」


「この建物は、一つの階が俺たちの家になっていて、もちろん他の階も居住地になっているんだけど、外に出られない女性のために、いくつかの階は遊戯ルームになっていて、いつでも利用できるようになっているんだ。」


石川さんのかわりに、武田さんが説明してくれた。

って、ええ!?


「いくつかの階が遊戯ルームになってるって・・・どれだけ贅沢な使い方を・・・!」


「外出の自由を奪うんだ。気を紛らわすために、様々な施設は必要だと思うぞ。」


そ、そりゃあそうだけど・・・。

なるほど、この世界の女性はずっと家にいて普段何をして時間を潰すんだろうと思っていたけど、遊戯ルームなる場所があるから、そこで時間を潰したりしているのか・・・。

何もすることがなくてずっと家の中にいるなんて、ストレスが溜まって鬱にでもなりそうなものだし、そうやって育ったなら違和感なく過ごせるのかもとか思っていたけど、さぁ・・・。

外出しないでも良いように時間を潰す施設は用意するっていうのも、勿体ないような・・・どれだけ女性にお金を使うんだよ・・・。


「ちなみに、遊戯ルームはこのマンションの住人が共同で利用するのでしょうか?」


「いいえ、えりと僕たち以外の男性が知り合うのは、あまり良くありませんので・・・ここのマンションは、私達の住んでいる階の一つ下と二つ下の階を遊戯ルームとして使用することになります。」


と、いうことは・・・私たちの家って、所有地って、この階だけじゃなくって、この階とその下二階分を含めた・・・三階分ってこと!?


な、なんて贅沢な・・・。

外に出られないショックよりも、この国が潤沢に女性に使う資産に対する恐怖が勝ってしまった。

これ・・・私、卵子を提供しないって言ったけど、そんな女の人をこうして生かすメリットってあるの・・・?

女神なる者の天罰が怖いからかもしれないけど・・・ここまでしなくても・・・。



言葉が出ない私を置いて、エレベーターが到着したようなので乗り込む。



「他の階にはなるべく行かないようにしてくださいね。他の女性の旦那とえりが遭遇したら、それに対して良く思わない女性もいるかもしれませんので。」


な、なんだかそっちに思考が回らないんだけど、取り敢えず「わかりました。」と何とか返事をした。





一つ下の階は、遊戯ルームと言っても、いろんな部屋があった。

身体を動かすのに使うのか、スポーツジムなんかで見かける機械が揃った部屋もあれば、

四方が鏡で覆われた部屋もあり、

シアタールームなのか、スクリーンで映画なんかを見る部屋もあって、

カラオケルームもある。

他にもいろいろな部屋があるけど、何も入っていない部屋もあった。


「空いている部屋は、妻の要望で好きなものが入れられるようにしているのです。」


「自分の部屋に入らなくなった本を保管する場所にしたり、水槽を買って魚をたくさん飼ったりする女性もいるって聞いたよ。」


なるほど、人によって趣味は様々だもんね。

ここに来て、ようやく心の余裕ができた。

皆の説明を、取り敢えず一つ一つ覚えていく。


皆が仕事をしだしたら、私はここに通うことになりそうだし、どこに何があるのかはある程度知っておきたい。



ある程度説明を受けて、私が満足したところでさらに一つ下の階にも足を運ぶことになった。


「あとの階は、見て貰ったらわかると思うんだけど・・・。今のところは何もないんだよね。」


武田さんのその言葉の意味が分からないままに、エレベーターのドアが開くのを見ると、

目に入った光景には驚かされた。



「何もないというか・・・。むしろ異次元?」




目の前に広がる光景は、人口芝や植木鉢などが置かれた、まるで緑が広がる公園のようだった。




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