それでも信じない
今までのパターンなら、向井さんと武田さんがちょっと挙動不審になっても、石川さんが抑えてなだめてくれていたんだけど、今回はその彼も全くフォローに回る気配がなく、私の目の前でひたすら私に対する感想をぶちまけてくれた。
どうしてこうなった。
「やっぱり、えりは本当に素敵ですよ・・・!ただ、これほどまでに可愛らしい方だとは思っていませんでした!顔が少し赤くなっているところなんて、本当に可愛らしい!」
「お嫁さんってこんなに可愛いものなの?俺生きていけるかな・・・!」
「いや、こんなに可愛いのはまずない。俺も初めて知ったわ。びっくりした、すごい破壊力。耐えるのに苦労する。」
三人に全力で可愛いと言われてでれでれと言葉で愛でられて、耐えられるか。否。
さっさとその口を閉じてくれ!希少動物になった気分だわ。ちょっとした行動で「可愛い」と褒めちぎられると居心地悪いんだよ!パンダになった気分なんだけど!!
「う、うるさい!もうそれ以上言わないで!聞かされてる方の身になってよ!」
耐えられなくなり、そう怒ったら、三人ともハッとしたように口を閉じてくれた。
でも表情が"可愛いもの"を見るような顔をしてるんだけど。その顔もうるさいんだってば!
「私は希少動物じゃないんだから、そんなに可愛いとか言われても嬉しくないし。」
いくら女の人が少ないからって、「お嫁さんってこんなに可愛いものなの?」なんて「犬ってこんなに可愛い生き物なの?」って言ってるみたいに珍しがられても反応に困る。
私が予想していた悪い反応をされるよりもストレスは少ないけれど、これもどうなんだ。
まったく嬉しくないんだけど。
「そんな!希少動物なんて、そんなつもりじゃありませんよ!」
「だって、そんな反応だったよ!」
「動物だなんて・・・えりのことが可愛くて可愛くて仕方がなかっただけで、女性として、妻として愛おしく思っただけですよ!」
だからそんな小っ恥ずかしいことをサラッと言わないでってば!!
「俺たちの反応が悪かったな。いや、本当に、免疫がないからって言ったら言い訳になるが、思わず取り乱してしまった。ごめんな。」
そうまじめに謝られたら、勢いが削がれるんだけど。
「でも、もの珍しくて可愛いって言ってたわけじゃないんだよ。本当に、えりが魅力的だから・・・
「分かった、分かったから!」
また恥ずかしいことを言おうとする武田さんを止めた。そんなことを言われても、信じられるわけないだろう。私の機嫌を損ねないようにしてたりとか、どうせ嫁って存在に対する愛着だとかでしょう。こんなにベタ褒めされたら悪い方に想像しちゃう。
まず、大げさすぎるしあり得ないよ。
「いや、分かってないだろう。」
武田さんが引き下がって安心したところで、近くに座っていた石川さんが、ぐいっと距離を詰めてきた。
「珍しいから可愛いって言ってるんじゃないぞ。えりだから、だ。・・・それは、ちゃんと理解しておいてくれ。」
それだけ言うと、石川さんは離れていった。
「じゃあ、今日は重要な用事があるわけじゃないし、えりも十分眠れてないだろ。ちょっとだけ寝ないか?」
「そうですね。えりを悲しませていなかったと分かりましたし。洗濯物をどうするかは、また後で話し合って・・・。今はえりも身体を休めてくださいね。6時間しか寝ていないのではないですか?」
「えり、目が覚めたら一人で朝ご飯作らないでね。誰か起こしてよ?一緒に作ろうね。」
さあ、と立ち上がるように促され、そのまま私も皆も、自室に戻った。
いや、あのさ。
何アレ・・・!!!
至近距離まで近づく必要ってある!?
あんな、女の子の扱いに慣れてるみたいな!
これだからイケメンは苦手なんだ!!
ああやって顔を近づけてまじめな顔をしたら、コロッと女の子が落ちると思ってるんだ。
あのテクニックで女の子をたくさん落としてきたに違いない。
正しイケメンに限る、な行動をイケメンがしたら、そりゃ女の子は落ちるよね!もういっそ俳優とかモデルになればいいんだ!そしたら、可愛い女の子も侍らせて、私にあんなことを言う必要性も無くなるんだから・・・!
・・・女の子がいる世界だったら、の話だけどさ。
女の子とほとんど接することがない世界で、よくあんな台詞をサラッと吐けたよね。
最早才能?感服するわ。
相手の女の子がもっと可愛げのある子だったら、良かったのにね。
ごめんなさいね、こんな可愛げの欠片もない女で。
えりだから、って言われても、俺たちの嫁だからってことだろうし。
うん、あの台詞はそういうことだ。
そういうことなんだよ、絶対。
そうじゃなきゃあり得ない。
「独身貴族目指してたんでしょ私・・・。これくらいのことで動揺するな。」
女子高生じゃあるまいし。
言葉そのままに受け止めるな。
言葉の裏にある思惑を見抜け。
私だから、高野えりだから可愛いって言うなんて、1%もありえないんだから。
頑ななえりと、ぐいぐい来る夫たち。
早く素直になればいいのに・・・。
でも今までの環境とまだ出会って三日目の夫たちだと、まだまだ信じられない。
育ってきた環境は大きく、それがえりの障害になっている。
そんなお話になっていきますが、早くほのぼの要素を増やしていきたい・・・。と思う今日この頃。




