ちゃんとしないと・3
處田ねえ。
中学までは一緒だったけど、そんなに仲は良くなかったし。小学校のころは、たまに遊んだりもしたけどね。特に仲のいいやつもいなかったんじゃないかな。話しかけられたら答えるけど、自分からはあんまり話さないイメージだった。
成績は悪くなかったよ。でも高校受験で失敗して、公立に行くことになって落ち込んでたらしいとは聞いた。噂なんだけど、その公立高校でいじめにあって、不登校になって中退したんだって。
同じところに進学したやつが言ってたんだけど、ことあるごとに『この学校はレベルが低い』とか、『俺は本当はこんなところにいる人間じゃない』とか言ってて、それで反感を買ったんじゃないかって。そういうところはあったよ。プライド高いっていうか。
アニメ? アニメ好きって印象はないなあ。むしろバカにしてたんじゃないかな。『中学になってアニメ見るやつはバカ』とか言ってたよ。
うん、普段はおとなしいっていうか、目立たないんだけど。たまに、そういうきついことを言うときがあった。それがなんていうか、今思うとバランスが悪いっていうか、変な感じだったから覚えているのかも。
本をよく読んでた。ミステリーとか、ホラーとかなのかな。表紙に骸骨とか目玉とか描いてあるやつ。
ああ、そうだ。小学校の、まだ低学年だったと思うんだけど、あいつの家に遊びに行ったとき。
『面白いマンガがある』
って言うから、読ませてもらったんだ。
そしたら、ゾンビものでさあ。人間をバラバラに解体したり、生きたまま内臓を食ったりすんの。ゾンビの絵がまた、気味悪いしさ。
俺、明るい少年マンガしか読んだことがなかったからビックリしちゃって。半泣きで家に帰ったのを覚えてる。しばらく夜中にトイレに行けなくて、あいつのこと恨んだよな。
まあ……逆恨みかもだけど。だからちょっと、あいつのことは気持ち悪いやつって思ってた。
處田のお母さんはね、あんまり覚えてない。普通の、地味なひとだったと思う。
お父さんのほうは覚えてる。年、離れてたらしいんだよね。お母さんと。日曜参観に来たときに、おじいちゃんかと思ったんだよな。髪の毛が真っ白で。
なんか、銀行だかなんだかの偉いひとだったらしいけど。他の子のお父さんが敬語で挨拶してて、それも不思議な光景に見えた。
ああ、お母さんのこと、ひとつ思い出した。
遊びに行ったとき、そのゾンビマンガのときなんだけど。
お菓子を出してくれたんだけどさ、申し訳ないけどそれがすごくまずいの。
せんべいだったかクッキーだったか忘れたけど、湿気ってるのにパサパサしてて、カビみたいな変なにおいがして。こんなまずいもん食ったことねーって思ったよ。
いや、親が偉いひとなら金はあったんだろうし、変なものじゃなかったんだろうけど。
『田舎のお菓子なの』
って言ってた気がするから、珍しいものでガキの口に合わなかっただけかもだけど。
マンガが気持ち悪くて、おやつを食べる気分でもなかったしな。
殺されたのは気の毒だと思うよ。あのお母さんがあいつのことを殺したのかな。結局、よくわかってないんだよな?
うん? 女子?
いや、モテなかったと思うよ。どっちかというと、女子から『キモい』って嫌がられるタイプだった。
あ、そういえば。
何のときだったかな。修学旅行だったか、林間学校だったか忘れたけど。
みんなで怖い話をしたことがあるんだよ。ガキだし、みんな大した話は知らなくて、テレビで見たことあるような話しかできないんだけど。
その時にさ、あいつ、真顔で言い出したんだ。
『内緒なんだけど、うちの母親には特別な血が流れている』
って。
『その血が流れているものは、ちゃんとしないやつがいたら正さなきゃならない。それは神様から与えられたお役目だ』
真面目に言うんだよ。
話の内容より、そのときのあいつの様子がめちゃくちゃ変な感じでさ。
女子からはどん引かれてた。考えてみるとそれからかも、『處田はキモい』って言われるようになったのは。
それくらい。大したことを知らなくて悪かったね。




