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断片・体操

 ああ、垂郷(たれごう)行きのバスね。


 あのあともしばらく運行してましたよ。住民がいなくなっても、一応ね。その後、廃線にして少し下の****行きに変わりました。


 ええ、私ともうひとりが担当でしたけんね。交替で行っちょりましたよ。****まではそこそこ客も乗りますし、ついでという感じでしたかね。


 火事で焼けたのが犯人やろとはテレビで毎日言われてましたね。まあ結局、あの火事のあとは殺人はなくなったけん、そうやったのでしょうけど。それでも、確か決まったちゅうわけやないんですよね。なんででしょうね。


 まあ、そんなこんなで、警官やら取材のひとやらはまだちょこちょこ出入りしちょりましたね。バスは使わんでしたけどね。

 

 バスもね、なにかあったらいけんと会社が思ったようで。付き添いみたいなひとを雇ったようなんです。いや、ボディーガードとか、そういうんとは違うんですわ。鍛えちょる感じのひとやなくて。というより、年寄りが多かったですわ。意味はよくわからんでしたね。


 毎日、起点のバスセンターからずっと一緒に乗ってくるんです。座席、ガラガラでしたけん。かまわんかったですけど、別に。

 

 ああ、そげです。いつも同じひとやないんです。四、五人が代わりばんこに来ちょったと思います。もしかしたらもっとおったのかもしれません。

 私らも、ほら、交替で運転しちょりましたけん。会ったことのないひともおったかもしれんですわ。


 けど、何人かが順番で来ちょったのは確かです。ひげの長いひととか、何回か見た顔がおりましたけん、それは確かです。

 なじみになってきたときに、『何しに来ちょるんですか』と聞いたりしましたけど、答えはまちまちだったですね。


『念のため』

 とか、

『気にせんでいいけん』

 とか、

『来られるうちに景色を見ておきたいだけや』

 とか。


 はぐらかされちょるのかもしれんかったですけど、そのひとたちも別に何をするわけでもないですしな。終点に着くとバスを降りてトイレに行ったり、私と世間話をしたりです。

 写真を撮るでもないし、周りを見るでもないし。


 ああ、でも……。何や、体操みたいなことはしちょったかなあ。

 バスを降りたときに、住宅のあるほうを向いて、手足動かしたり、『かぁーっ!』って大声を出したりすることもありましたかいね。


 センターから乗ってくると、二時間くらいかかりますけん。体、動かしたくなるんやろと思っちょりましたですが。私もラジオ体操したりしましたけんね。

 考えてみれば、見たことのない体操でしたけど。ただ年寄りが気ままに体を動かしちょっただけかもしれませんし。


 そういえば、そのときのひとたちね。ひとりだけ、後で見かけたことがあるんです。ひげの長いひと。上の娘が結婚するときに、一宮さん、**の大社さんに一緒にお参りに連れていったんですが。


 そこのひとやったみたいなんですわ。着物やら烏帽子やらつけて、歩いているところを見ました。あのひげですけん、見間違えませんわ。確かに、何度も乗ってきたひとでした。


 声? かけませんでしたよ。

 何や、思っちょったより偉いひとやったみたいでしたし。


 後ろからひとが何人もついて歩いて、ぺこぺこしちょりましたよ。着物も立派なもんで、後ろの神官さんたちとは格が違う感じでしたね。

 だけん、ひとは見かけによらんもんやなって思ったですよ。バスに乗りに来てたときはね、普通の、暇なじいさんにしか見えなかったですから。

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― 新着の感想 ―
たりごーのモリから紹介された人をお祓いしていた神主さんたちかな?ここは何を祀って沈めていたのか、モリの直系が絶えたあとも、少しずつ真相に近づくのが毎回気になります!
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