通報
1 平成**年**月*日の午後十時十一分、**県警**署にかけられた一一〇番通報の記録
警察官『はい、一一〇番……』
通報者(遮って)『たりごーの津峨森です、外に誰かおって入ってこようとしちょる。すぐ来てくれ』
警察官『事件ですか、事故で……』
通報者『とにかく早く来てくれ』
(背後から怒号らしき声。何かを激しく叩く音)
警察官『落ち着いてください。お名前と、ご住所を……』
通報者『だから、たりごーの、つがもりや! 連続殺人事件の遺族や! わかるやろ!』
(怒号。『開けて』『開けろ』と言っているようにも聞こえる)
警察官『わかりました、急行します』
通報者『はよ来て。玄関が壊されそうやけん、私は二階の書斎にこもります。あそこは鍵がかけられますけん』
(電話が切れる)
2 同日、午後十時三十二分の記録
警察官『はい、一……』
通報者『はよ来て。はよ、はよ』
警察官『落ち着いて。事件ですか、事故ですか』
通報者『あれが来た。窓に、窓に。たすけて』
警察官『落ち着いて。さきほどの津峨森さんですか? もうすぐパトカーが到着すると思いますので落ち着いて』
通報者『トコちゃんがきた』
(ガラスが割れる音。電話が切れる)
3 四度坂顕二氏の手記・続き。これまでと違い、非常に乱れた筆跡で切れ切れに綴られている。血痕で読めない部分は省略してある。
幸子。
アメリカまでならあれは来んのか。
俺も一緒にアメリカに行けばよかった。
もうモリの務めやら知らん。俺には無理やったんや。無理やったん
つかもりはほんとうに
ちゃんとしておったんか?




