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第9話 初日の終わり

 お風呂から出てタオルで体を拭いていると、ウィステリアさんが脱衣所横の小部屋から手招きしていた。


「どうしました?」

「ここ、乾燥室なんですよ」

「ええ!?乾燥室まであるんですか!?」


 そう言ってちょっと得意げにふんすっと胸を張るウィステリアさん。

 ホントにそういったところへのお金のかけ方がすごいや。

 温風を出してくれる大型の魔導具が設置されている乾燥室。まさか個人のお屋敷で設置しているだなんて……お金持ちの貴族でも中々いないんじゃないかな……。

 もちろん、僕の家にもなかった。


「ええ、こちらへどうぞ。一緒に髪も乾かしましょう」

「はい!」


 中に入り、壁の筒状の送風機から出てくる温風で髪と翼を乾かす。

 僕の髪は首元にかかるくらいの短いショートボブだけど、ウィステリアさんは腰のくびれ辺りまである、ゆるいウェーブのロングヘアだから大変だろうな……。

 濡れて深みを増して見える赤い髪をタオルで包み込みながら、丁寧に水気をとっている姿はとても絵になっている。


「ラヴィエスさんも少しくせ毛ですね。わたしもそうなんですよ」

「でもウィステリアさんは綺麗な赤色で、とても素敵ですよ!僕なんてくすんだ色だから……」

「あら、アッシュブラウンでカッコいいと思いますよ?」

「そ、そうですか?」


 すこし、自分の髪を指で梳かす。

 カッコイイ、かぁ……でもやっぱり、お姉ちゃん達みたいな綺麗なブロンドヘアが羨ましいと思ってしまうや……。



 自室に戻った僕は、ベッドに寝転びながら今日あった事を思い出していた。


 ウィステリアさんと出会い、アルギラさんにお屋敷を案内してもらい、ツバキさんに抱き上げられ、ガゼルさんに挨拶して握手をして……そういえば、ガゼルさんとツバキさんは最初に握手をしてきたけど、同郷の方だったのかな?

 そんな話は聞いてないけど、そういえば髪も同じ黒だった。

 まぁそれはいいとして……夕食でささやかな歓迎会をしてもらい、ちょっと失言しちゃって、お風呂でウィステリアさんと洗いっこして……。


「濃い……一日だったな……」


 ここに着いてからだと、実際は半日程度だけど。

 僕が、これからお仕えする英雄の方々……とても良い人達で、すごく頼もしくて、本当に僕なんかで良かったのかな?なんて考えてしまう。

 ……それと同時に、この派遣が本当に必要なのか?なんて事が頭をよぎる。

 ツバキさんとガゼルさんの二人は、王国からの爵位を断っていると、お父さんから出発前の説明で聞いている。王様からのお礼も殆ど受け取っていないと。

 王国の騎士が派遣されるのはせめてもの王様のお心遣いだという話だけど……それでも、無期限なんて少しおかしい気がする。

 

「うーん……んんんんんんん……」


 ──なんて考えてみたところで、答えは出ない。

 思いつくとしたら、帝国との戦争だろうか……。

 

「帝国のウィステリアさんが居て、王国からは誰も居ないとなると帝国の味方をされてしまうかもしれない。だから王国からも騎士が派遣されて……アレ?でも騎士じゃなくてもアルギラさんは居るし……ダメだ。わかんないや……」


 やっぱり、こういうのを考えるのは向いてないみたい……。


 理由はわからない。

 僕は、僕と家族の為にお役目をがんばろう。今は、それでいいよね……。

 疲れもあって、僕は眠りに落ちていった──。



「今日は、どうだった?リア」

「何がですか?ガゼルさん?」

「わかってるのに聞き返すなよ。……どうした?今日は甘えたいのか?」

「ふふ、そうですね……ごめんなさい。──今日は三人でした。わたしが気づいたのは、ですけど」

「リアがそう言うなら、六人程度かな……。また増えたか」

「でしょうね。三人は囮でしょうか?」

「或いは利用しているだけか……ま、それはどうでもいい。こちらを探って、何を企んでるのか……」

「煩わしいですね……いっそ誘い出して叩きのめしましょうか……」

「やめてくれ。敵を増やすだけだ」

「……わかっています。言ってみただけですから」

「……ホントに頼むからな?」

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