いつの間にか年を取り、我慢を覚える
ありがとござした!
お誕生日がいつの間にか過ぎていたので、イチゴたっぷりのケーキを作って
みんなで一緒に食べた
「アンディーはやっと1才になるのかな?」
ガロルド「そうだな、おめでとう」
「こう見たら結構大きくなったよね」
ガロルド「ああ、倍くらいには大きくなったな」
抱っこ紐に入れるのが難しいほどには大きくなった
まだまだ抱っこ大好きなんだけどね
グライダーに乗る為に作ったリュックは、もう絶対に入れない
アスターとアルジャンは3才って事かな?
もう3年も経つのかー
なんだか感慨深い
ガロルド「アンディーはこれ以上大きくなった時に、町で普通に歩けるのかが心配だな」
「うーん、小さい時から連れ歩いていれば大丈夫じゃないかな?」
ガロルド「狼系の従魔を連れているのを見た事はあるが、親の大きさを考えると住民は怖いだろうな」
「そっかー、何かいい方法はないかなー」
アルジャンは小さくなれるし、アンディーも成長したら小さくなれたりしないかな?
「ねえ、アルジャンが小さくなれるのはアンディーに教えてあげたりできないかな?」
「きゅぃー?」
「そっかー、わかんないかー」
ガロルド「アンディーはかなり感覚的に魔法を使っているようだしな」
「だね、教えても出来るようになるかは疑問だね」
アルジャン特有のものかもしれないしね
まあ、まだ大きくなるには時間がかかるだろうし
大きくなってから考えよう
道路を完成させて、早くパチュリーに戻りたいので
真剣に道路作りを進めていく
こっちの道は麦を輸出するために、重要な道になるのでしっかりと作っていかないとね
8日ほどで、目的地にしていた町に到着
北東へ伸びる道路はここまでだ
一度パチュリーに戻り、また王都から道路作りを開始する予定で
今度は東南方向へ伸びる道路だ
そこさえ完成させれば、3国間の道路は全て完成
半年を目標にしていたので、予定よりも早く完成できる
終わりが見えてきた戦いに、ルンルン気分でパチュリー拠点まで戻って来たのだが・・・
「ただいま!」
ハンクス「おかえりなさい・・・・ルラさん」
げっそりとしたハンクスさんが迎えてくれた
ガロルド「どうしたんだ?何かあったのか?」
ハンクス「それがですね・・・」
「やっと帰って来たのですね!さあ!話を聞いて責任の所在をハッキリとさせましょう!」
リーヴァ「待ってください。ルラさん達は長旅でお疲れです」
「疲れていても裁決を下す事はできるでしょう」
何やらごちゃごちゃと言い争うような声と共に足音が聞こえてくる
「誰かお客さんですか?」
ハンクス「はい・・・実は・・・・」
「あなたがルラさんですね!」
ハンクスさんから事情を聞こうとしていた所へ、割って入ってくる男性
見た事がないし、失礼な人だな・・・・
「どちら様ですか?」
面倒そうなので、先に話を聞く事にする
「初めまして、テムスン様直々のご指名により派遣されて参りました。ハーデニッシュ家が三男、トルストイ・ハーデニッシュと申します。ルラさんの元で事業の指揮を、と大事な使命を受けて参った次第にございます」
ハンクス「2日前に到着してずっとこんな感じなんです。運営方針に凄く口を出して来て困っていまして・・・」
リーヴァ「ルラさんが帰って来るまでは、ゆっくりして下さいと何度も言っているんですが・・・・」
トルストイ「ゆっくりとしている暇はありません。ここは改善点だらけです!今まで一体何をしていたのやら!獣人などに任せるからこんな事になるんですよ!」
「は?今何ていった?」
トルストイ「え?」
この拠点でそんな発言を聞くとは思っていなかったので、ついカッとなった
ふぅ、と息を吐いて整える
「獣人に任せるな・・・・そんな風に聞こえたんですけど」
トルストイ「そ、そうです。私に任せてくれればもっと発展させる事ができます!なのにこの獣人ときたら、私に従わないのです!」
ガロルド「大丈夫か?こいつ」
「うんうん、ガロ、言いたい事はわかるよ・・・・・。ふぅ、ちょっと落ち着こう。リビングに移動しようか」
ハンクス「・・・はい」
リーヴァ「あなたもこちらに」
トルストイ「ようやく話を聞いてもらえます・・・まったく酷い目にあった・・・」
「ちょっと黙ってもらえます?」
トルストイ「・・・・すみません」
この人が口を開くたびにイライラする
なんだ?どうしてこんな検討違いの男を送ってきたのだ
外交官ってズレてるのか?
問題がある奴を送って来たら、交渉は決裂だって言ったよね
どんな人選をしたら、この人がここに来る事になるんだ
この拠点には一番合わないだろう!
言いたい事は山ほどあるけど、この人にこの話をしたって揉めるだけだ
みんなでリビングに集まり、お茶を運んで来てもらう
ひと口お茶を飲んでから話に入る
「トルストイさん?あなたはテムスンさんから指名されてここへ来た。で、間違いないですか?」
トルストイ「ええ、直々に指名して頂きました」
ドヤ顔で自信満々にそう言う
よっぽど誇らしい事らしい
「何て言われて来たんですか?」
トルストイ「ルラさんという方の力になるように仰せつかって来ました。従業員を多く抱え、大切な事業をなさっていると、その成果によってはテムスン様へ送られる成果物が変わってくるとも言っておられましたね」
「なるほど?私がルラですが、どうしてここに私が居ない時に事業に手出し口出ししようとなさったんですか?ハンクスさんやリーヴァさんには止められたはずです」
トルストイ「ここは改善点だらけです。無駄が多すぎる、テムスン様の元で色々な事業を見て来た私だからわかる事がたくさんあるのです。ルラさんの力になるにはそれが最善だと判断したまでです」
コンサル的な事をしようとしたって事かな?
ハンクスさんの方へ視線を向ける
ハンクス「彼が来て最初にしようとした事は、事業収支を確認する事でした。ルラさんが帰ってくるまでは、見せられないと拒否しましたが、就寝時に勝手に見られ、その日からアレやコレやと口を出して来て・・・・お店にまで行こうとしましたので、さすがに営業の邪魔になるので、衛兵を呼ぶと言って止めました」
トルストイ「良くしてやると言っているのに、止める意味がわからない。獣人とはここまで頭が固いものか?」
ぶつぶつと文句を言っている
「ハンクスさんご苦労様でした。最善の判断だったと思います」
素直に思った事をハンクスさんに伝える
あとで、お休みをあげたいくらいだ
トルストイ「な、どうして!私が手掛ければ良くなるんですよ!」
「あなたは今どういう立場ですか?」
トルストイ「た、立場とは?ここの事業を手伝いに来た・・・」
「そうですね、手伝いに来た人に全権を任せる馬鹿がどこにいますか?あなたはいきなり来た『ここを良くしてやる』という人に全権を任せますか?」
トルストイ「そ、それは・・・しかし、私はテムスン様直々に指名されてきた、貴族家の者でして・・・」
「それがなにか?あなたはそう言われて全権を渡すのですか?そんな人には何ひとつ任せる事はできませんね」
トルストイ「そ、そそそ、それは・・・・」
リーヴァ「補足をよろしいですか?」
控えめに手を上げて、発言を求めるリーヴァさん
「はい、お願いします」
リーヴァ「彼があまりにもハンクスさんの邪魔をするものですから、彼の相手を長々と私がしておりました」
トルストイ「じゃ、邪魔など!」
「ちょっと黙っていてください」
口を挟もうとするので、止める
リーヴァ「えーっと、まずは従業員の給料が高すぎるから下げろ、食費も経費が掛かり過ぎだ、風呂は贅沢すぎる、次の拠点を建てる時は大部屋のみにして、大勢が暮らせるようにすべきだ、店で出している限定のお酒の値段とVIP席の値段はもっと吊り上げるべきだ・・・・などなど、彼には独自の構想がおありのようでした」
「はぁ・・・・」
ガロルド「酷いな・・・」
机に肘をついて、頭を抱える
どうしてこんな化け物を送ってきたんだ
うちとは真逆の、利益重視の守銭奴じゃないか
しかも獣人差別丸出しの
トルストイ「ど、どうしてそんな顔をするんです。これを実践すれば利益は倍には膨れ上がりますよ!」
「ちょっと黙って」
どうしようか考える
テムスンさんには、的外れな人を送って来た場合は全ての取引を無かった事にすると言ってある
それなのに、わざわざこんな人選をして送って来るとは思えない
という事は、彼はテムスンさんの元で働いている時はそこそこ仕事のできる人だったのだろう
・・・・・そう思いたい
「ちょっといくつか聞きたいんですけど、ここにいる従業員の9割は獣人なんですけど、それについてはどう思っているんですか?」
トルストイ「獣人ならばもっと安く雇えるでしょう、給料の見直しをして、もっと体力を使う仕事をさせるべきです」
「うん、・・・・・うん。どうして獣人の給料が低いの?」
トルストイ「彼らは体力特化ですから、拠点の管理など事業の采配には向いていないです。短絡的な考えの者も多く、こちらが管理しておくべきなんです」
「ふぅ・・・・・、ハンクスさんは立派にやってくれているんだけど、それについてはどう思うの?」
トルストイ「私ならもっと上手くやれます。彼には体力労働の方が合うでしょう」
ぐっと手を握る
ぶん殴ってやりたい
ガロルド「殴るか?」
リーヴァ「いけませんよ。せいぜい箱詰めにして送り返しましょう」
笑顔でさらっと怖い事を言う
「ふぅ、もっと若い時の私なら問答無用で殴っていたでしょう。しかし、私も1才年を取りましたから・・・・今回は我慢します」
ガロルド「いいのか?一発くらいなら殴ってもいいんじゃないか?」
「こら、煽らないで。必死に我慢しているんだから」
どうして殴らせようとしてくるのだ
トルストイ「ど、どうして殴るなどと話を・・・」
あわあわと焦っている
「わかりませんか?あなたが私達が嫌う事ばかりを言うからですよ」
トルストイ「わ、わかりません・・・」
「では説明しましょう。ここでは獣人亜人、人族の差別はありません。それぞれ適材適所の仕事をしてもらっています。よって給料に優劣はつけませんし、体力仕事だって立派な仕事です。あなたは獣人と同じ体力仕事が出来るんですか?」
トルストイ「な、何を言って・・・・そんな、私は身体強化など出来ません」
「あ、出来ないんですねえ。じゃあ、重い物を運んだり、遠くまで移動したりは出来ないと」
トルストイ「私はそんな事はしません」
「あれ?おかしいですね、では、あなたの生活を支えている体力仕事は必要ないと?ここまで来るのに護衛は必要だし、これから進む貿易にも体力のある人達の仕事は不可欠なのに、少ない給料で雇うと・・・・」
トルストイ「そ、それは頭を使う方が立派な仕事で・・・・」
「ふぅん、じゃあハンクスさんは身体強化もできますし。ここの拠点、さらにはお店の収支管理までしてくれています。あなた以上の働きが出来るんですよ?なんの問題が?」
トルストイ「し、しかし彼は売り上げを増やす事は出来ない!」
ハンクス「お言葉ですが、拠点やお店の経費や人件費を指示しているのはルラさんです。私はその指示に従っているに過ぎません。奴隷従業員の給料に関しては何度も進言していますが、ルラさんの方針ですし、私も今となってはこちらの方が良かったと思っています。早く奴隷からの解放ができて、自由に働ける・・・・これ以上の喜びはありません。ルラさんが居たから、奴隷から解放された今でもみんなはここで働き続けるのです。あなたのような方には誰もついて行かないでしょう。私もそうです」
トルストイ「なっ・・・・」
「そういう事です。ハンクスさんは出来ないんじゃなくて、私の方針をくみ取って、上手く回してくれているんです。だから彼にここを任せている。あなたには任せられない、ここはお金を稼ぐ為だけに作ったんじゃないんです」
トルストイ「金を稼ぐ為だけじゃない・・・・?意味がわからない・・・」
「とにかくお帰り下さい。ここにはあなたに任せられる仕事は何もありません。テムスンさんには手紙を書きますから、それを持って行って下さい」
トルストイ「そ、そんな・・・・どんな顔をして帰ればいいのか・・・」
絶望的な顔をしてるが、私には関係ない
こんな人を雇えない
雑用でだって嫌だ
リーヴァ「まあまあ、帰る前に少しお勉強して帰ってはいかがでしょうか?」
「勉強ですか?」
リーヴァ「ええ、彼もまだ若いでしょう。あちらさんも成長を期待して送ってきたのかもしれません。ルラさんの信念の素晴らしさを知ってから帰ってもらうべきだと思います。そうすれば同じような人が送られて来る事もないでしょう?」
「す、素晴らしさ?同じような考えの人が来ないのは嬉しいですけど、そもそももう送ってもらうの自体を止めてもらおうかと・・・」
トルストイ「そ、そんな!私のせいで・・・」
もっと絶望的な顔になっていく
まあ、自業自得なので知らんけど・・・
リーヴァ「まあルラさん私にお任せ下さい。ここの素晴らしさを叩き込んで差し上げましょう」
「あ、はい・・・・よくわかりませんが。最終的に送り返してくれるのなら任せます・・・」
リーヴァ「ふっふっふっふー、お任せあれ」
何だか楽しそうなので、まあいっか
その後、とりあえずハンクスさんへ謝罪させて
後はリーヴァさんに丸投げだ
テムスンさんへの手紙だけ早めに書いて渡しておかないとな
もー、勘弁して欲しいよー




