道路作りと暴走馬車
道路を作り始めて、日が完全に落ちた頃
ライトをたくさん浮かべて作業を続けていると
ヒゲもじゃさんがやっと再起動した
完成している道路を辿って、観察しながら近づいてくる
「とんでもないな・・・・疲れないのか?」
「まあ、これぐらいなら全然」
「・・・・・Sランクとは凄まじいな」
ガロルド「ルラが特別なんだ」
「なるほどな・・・納得だ」
うんうんと頷いている、ヒゲもじゃさん
「こんな感じでちょっとずつ進めていくんですけど、ちょっと協力して欲しい事がありまして」
「なんだ?我々に協力出来る事なんてあるのか?」
「はい、この道路の使い方を広めて欲しくて」
「使い方?ちょっと意味がわからないな・・・・説明してくれないか」
「はい、この道路はですね、見てもらった通り線で区切ってあります」
「ああ、この線だな」
「はい、ここが車線になってて、真ん中が中央線です」
「なるほど?区切ってあるのか」
「そうです、この道の上を走る時は左側通行になります」
「左側通行?」
「はい」
実際に歩いてみて、説明する
「こんな感じで自分から見て左側を走ることで、進行方向を決めておきます」
「ほぉ、なるほどな」
事故や渋滞防止、追い越し車線などの説明もした
「これを、王都の門から出入りする人達に教えて上げて欲しいんです。もちろん徒歩の人にも危険を伝えて欲しいです。馬車は急には止まれないですから」
「わかった。馬車にも徒歩にも伝えるようにしよう」
「ありがとうございます。お願いします。日中も作業するつもりなんで、王都からこの道を走る人はスピードに注意するように言ってくださいね。完成するまでは、途中で道はなくなるし、整地もしながらなので、そのまま走ると滑落するかもしれません」
「それは危険だな・・・十分注意するように言おう」
「お願いします。道路からの滑落での損失は誰も補償出来ないので」
「確かにな、横転しても君に責任はない」
「そうなんですけどね、注意しても聞いてくれない人ってのはいますからねえ」
「君の言う通りだ、しっかりと注意喚起はするように言っておこう」
「ご協力ありがとうございます。なるべく早く完成させるように頑張ります」
「あ、ああ。ほどほどにな」
引きつった顔のヒゲもじゃさんは、王都へと戻って行った
「さ、続きを作ろうっと」
地面に手をついて、同じことを繰り返す
そこで気が付いた「しゃがむの面倒くさい」
「そっか、しゃがまなくてもいいんじゃない?」
右足を少し前に出して、ぽんっと地面を踏む
ボコボコボコボコッ
ちゃんと発動できている
「うん、いいじゃん」
多少集中力がいるけど、立ってしゃがんでを繰り返すより良い
何度も繰り返すうちにだんだんと慣れて来て、加工も立ったままできるようになった
「これは楽だ」
繰り返すうちに余裕も出来て来たので、模様を増やす事にした
左側の車線に矢印を大きく入れた、これなら進行方向を間違えたりしないだろう
間隔を大きく開けて、たまに矢印をいれておく
「うん、良い感じ」
これで間違えたとか言われても、ちょっとな・・・・ってなるもんね
知らなかったって言われても、「地面見てないの?」ってなるしな
ある程度進んだ所で休憩を挟む事にした
「看板を立てといたほうがいいかな?」
木の板を取り出して、『工事中、スピード注意』と『馬車に注意、左側通行』の2つを作る
「これを門の所と、等間隔に立てとこうかな。読んでない人はもう知らない」
看板の数をある程度作って、今日はもう終わる事にした
翌朝、門が開く前に行き看板を立てる
「これ、作っておきましたんで。立てさせて下さいね」
「おお、これならわかりやすいな」
「道路にも矢印を入れときましたんで、口で説明してもわからない人はこれを見てもらって下さいね」
「ああ、ありがとう。しっかり説明しとくよ」
「お願いしまーす。あ、これ差し入れです。ご迷惑をおかけしますけど、よろしくお願いします」
クッキーがたくさん入ったカゴを渡した
「おお!凄い美味しそうだ。ありがとな!まかしとけ!」
賄賂もしっかりと渡したので、これで仲良くしてくれるだろう
道路の続きを作る為に戻ると、さっそく馬車が向こうからやってきた
「うおおお!なんじゃこりゃ!」
「こんにちはー。今工事中でーす。ここから王都まで走れますけど、使い方を説明するので聞いて下さいね」
「使い方?ただの道じゃないなのか?」
「はい、決まりがいくつかあるので」
かくかくしかじか、左側通行と追い越し車線の説明をした
「ほあー、なるほどな・・・良く考えられてる」
「でしょ?まだ試作段階なので、スピードを出しすぎないように注意してくださいね。事故が起こって、横転したり、人を轢いても補償はないですからね」
「わかったよ。十分注意する。じゃあさっそく走ってみてもいいか?」
「はい、どうぞー、お気を付けて―」
ガラガラと道路の上に移動していく馬車を見送る
端を少し坂にしているので、道路に乗るのも問題無さそうだ
そのまま軽やかに走っていく馬車
ガタガタしていないし、走りやすそうだ
このままの加工で良さそうだな・・・・良い見本になった!
形は悪くないってのがわかったので、続きの道路を作って
たまに休憩しつつ、工事を進めていく
お昼ご飯はガロルドが王都でご飯を買って来てくれた
王都名物は豆料理らしく、スープや煮物、団子のようなものなど
大体の料理に豆が入っていた
私が気に入ったのは、色んな豆が入ったトマト味のスープだ
とても懐かしい味がする、給食で食べた事がある味がした
ガロルドにまた買って来て欲しいってお願いした
これはまた食べたい
お昼休憩をしたら、また作業に戻る
かなりの距離を進んできて、王都もだんだんと小さくなってきた
「まる一日でこれぐらいかー、もうちょっとペースを上げたいな」
まだ最初だから、これからペースは上がってくるだろうけど
国を横断するってなると、かなり時間がかかるからなー
出来るだけ早く作れるようになりたい
時々休憩を挟みつつも、作業を続けて
夜ごはんを食べて、また作業に戻る
ガロルド「そろそろ休憩したらどうだ?」
「あ、本当だ、もうこんなに暗い」
集中してたら、いつの間にか真っ暗になっていた
振り返ると、王都の明かりはもう小さくしか見えない
ガロルド「大分進んだし、いいんじゃないか?」
「うん、今日はここまでにする」
ガロルド「ああ、続きは明日な」
たくさん魔法を使ったので、お風呂に入ってゆっくりとしてから寝る
翌朝、朝ごはんを食べてから作業の続きをしていると
背後から馬車の音が聞こえてきた
ガラガラガラガラガラガラガラ
明らかにスピードを出しすぎな音がする
「スピードを落として!ここで終わりだよ!!」
声を張り上げてみるけど、聞こえてないみたいだ
スピードが落ちたようには見えない
「危ない!!落ちるよ!!」
何度も声を張り上げるけど、段々と近づいて来る馬車はスピードが落ちない
作りかけの道路の先は急に下がっていて、整地が必要な高低差があるのだ
こんな時に限って馬鹿が走って来てしまった
かなり近づいてから、道路の先が無い事に気づいたのか、手綱を引っ張っている御者
馬も止まろうとしているけど、後ろの馬車は簡単には止まらない
「もう!!」
道路を作っていない、さらに先に走り込み
道路と同じ高さになるように、土を盛り上げていく
ボコボコボコボコッ
何とか形だけでも道路になった所に馬車は突っ込み、土に車輪を取られてなんとか馬車は止まった
「バカ!!ゆっくり走れって言われたでしょ!!」
御者に近づいて叱責する
「す、すまん。まさか道がここで終わっているなんて知らなくて・・・」
「工事中だって言ってたでしょう!あなた死んでたかもしれないんだよ!」
私が居なかったら、確実に馬車は転倒してただろう
休憩中じゃなくて良かった
「だから!道の終わりがここだって知らなかったって言っているだろう!!」
逆切れだ、こういう人がいると思ってたんだ・・・
通行止めにしたところで、通るんだよ、こういう人は
「見てからじゃ止まれないから、ゆっくり走れって言ってたんだよ。頭悪いのも大概にして。次に見かけても二度と助けないから」
「はあ!?偉そうに小娘が!!」
「その小娘がこの道を作っています。あなたを助けたのも私。そして、このタグが身分証明。ここで謝罪がないのなら二度とこの道は使わせないけど・・・いいの?」
「は?え・・・・」
金色のタグを見せてやっと正気に戻ったのか
「す、すまなかった・・・」
めっちゃ小さい声で謝ってきた
「声が小さいです。もう2度としませんか?」
「申し訳ありませんでした。以後気を付けます」
「はい、気を付けてくださいね。道が完成したら多少スピードをだしても良くなりますから。それまでは自制してください」
「はい・・・・わかりました」
汗をかいて謝っているけど、信じていいのかイマイチ良くわからない人だ
即席で作った土魔法の道に馬車の車輪が埋まってしまっているので
後ろから押して、脱出を助けてあげて
「2度としないでね」と言って送り出した
こういう人がいるだろうなって予想してたけど
困ったものだ
作業を切り上げて、王都の門まで行く
「さっき猛スピードで走ってきた馬車がいて・・・」
「なに!注意はしっかりしているぞ」
「わかっててもやるおバカさんなんでしょうね。注意したら逆切れされました」
「なにぃ!それは許せんな!逮捕するか!」
凄く怒ってくれる門番さん
「いえ、もう行っちゃいましたし、同じ事をしたら道を使わせないってタグを見せて言っておきましたんで」
「おお、さすがだ。どんなヤツだった?」
「小太りのおじさんでしたね、汗をかいてました」
「あー、あいつかな?」
どうやら心当たりがあるらしい
「次に会ったら厳重注意をしておく」と言ってくれたので、お任せしておく
こちらも対策をしないと同じような人が出ると思ったので
「もう、事故が起こった。馬車が大破して積み荷はほぼ全滅した」こう言ってもらう事にした
これで予防できるのなら、その方がいいだろう
安全に使って欲しいだけなので、完成するまでは我慢して欲しい
その後、作業の続きに戻ったけど
道を通って来る馬車はゆっくりと走り、道路の終わりが来るまでに下りていく
どうやら作戦は成功したらしい
このまま安全に使って欲しいものだ
ありがとござした!




